新型ステルス爆撃機B21の運用巡り空軍内にあつれき

(2024年6月3日)

カリフォルニア州エドワーズ空軍基地で地上試験、タキシング、飛行訓練を行うB-21レイダー。 (提供写真とキャプション/米空軍)

By Bill Gertz – The Washington Times – Friday, May 31, 2024

 空軍は5月下旬、新型の第6世代戦略爆撃機B21レイダーの写真を初めて公開した。だが、米軍の中でも特に強力とされるB21の運用方法を巡って軍内部で意見が分かれている。

 空軍の爆撃機専門家2人は、非核軍事作戦でB21がどのような能力を発揮できるかがよく理解されておらず、空軍内の官僚組織内の緊張関係によって十分に活用されなくなる可能性があると警告している。

 空軍誌エア・アンド・スペース・オペレーションズ・レビューの5月7日付記事によると、「戦闘航空部隊の戦術家や作戦立案者は、B21レイダーの潜在能力をまだ理解していない。上層部のビジョンは明確だが、現場レベルの偏狭な利益、閉鎖的な文化、リソースの奪い合いが、戦闘航空部隊、空軍省、統合軍全体に不健全な緊張を生み出している」。

 この記事を執筆したのは、B21を最初に担当するカリフォルニア州エドワーズ空軍基地第31試験評価飛行隊のシェーン・プレイスウォーター作戦部長(空軍中佐)と、退役空軍准将ポーラ・ソーンヒル氏(現在はジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院とシンクタンク、ランド研究所に在籍)の2人。

 空軍は5月下旬、飛行中のB21の画像を初めて公開した。B21は通常兵器と核兵器の両方を搭載でき、配備されれば、敵防空網を突破し、核・非核攻撃が可能なステルス爆撃機になる。

 報告書は、B21をめぐる内部での対立によって爆撃機の効果的な使用が制限され、中国のような競合相手に対する空軍の有効性を損ねる可能性があると警告している。意見の相違は、「パルス航空戦力」と呼ばれる空軍の新しい戦闘コンセプトにも及ぶ。これは、特定の時間と場所に航空戦力を集中させ、別の航空戦力に攻撃のチャンスを与えるというもの。

 このコンセプトは、戦闘地域で制空権と航空優勢を作り出すという空軍の過去の作戦目標に取って代わるものだ。

 遠距離からの精密誘導ミサイルの発射など長距離の「スタンドオフ」作戦や、紛争地域で小部隊で活動する「スタンドイン」部隊に、B21を活用するかどうかをめぐる議論もなされている。報告書は、B21の最先端のステルス性能と兵器搭載能力により、どちらの環境でも運用可能であるため、現行のドクトリンを見直すべきだとしている。

 「このような見直しが行われれば、空軍はステルスか非ステルスか、戦闘機か爆撃機かといった議論にとらわれることなく、戦術的にこれまでになかったレベルの創意工夫ができるようになる」と報告書は指摘している。

 また、この議論が解決されない限り、空軍はB21を十分に活用できず、軍事計画に穴を開ける結果になるかもしれないという。

 報告書は「B21レイダー・ファミリーは、スタンドイン能力で統合軍にその実力を発揮させ、現在のインド太平洋地域での戦力不足を解消することで、これらの課題に対処する。中国の攻撃的な発言やウクライナでのエスカレーションが続いており、そのリスクを考えると、米空軍は、将来の作戦を計画すると同時に、今戦う準備をするという重要な課題に直面している」と指摘している。

 一方でパルス作戦を強調することで、誤解が生じ、将来の中国との戦争が短期間で終わるという「危険な見通し」が生まれる可能性がある。報告書は「はっきりさせておきたいのは、短期決戦への『願望を込めた』考え方は、国防総省や文献ではほとんど主流ではないが、舞台裏では、このような視点は(戦闘航空部隊の)内部で驚くほど一般的だということだ」としている。

 B21は高度の防空網をかわし、戦闘地域に近づくことが可能だ。

 中国との戦争では、燃料の制約からジェット戦闘機を支援することは困難であるため、燃費の良いB21を、戦域に近い移動目標や小型目標の攻撃に使うべきだ。また、地域の米軍基地が中国のミサイル攻撃を受けた場合、作戦本部が生き残る可能性は低く、そのため、近接攻撃にはB21が適している。ミサイル攻撃を避けるために航空機を分散させることもうまくいかない。

 「政治的リアリズムを計画の前提に取り入れているとはいっても、中国を標的にしないという決定が下されることもありうる。もし中国が大量のミサイルを使用して、米本土でなく、インド太平洋の米軍基地を攻撃した場合、空軍は台湾への侵攻に対抗するのに大変な苦労をするだろうと考えられる可能性があるからだ」と報告書は述べている。

 電子的には、B21はパルス作戦で敵をコントロールし、誘導することができる「比類のない斬新な」装備を持っているという。報告書は、「B21は外見から、B2.1と揶揄されることがあるが、そうではない」と指摘、レーダーをかいくぐるステルス技術が大幅に向上している点を挙げた。

 また、B2よりも適応性があり、状況に柔軟に対応することが可能だ。また、飛行中に目標や任務を切り替えることもできる。

 中国がB21の近接攻撃を阻止しようとすれば、防空網などの兵器を使い果たし、米国が有利になる。

 「もしB21計画が(まだ初期のテスト段階だが)予定通りに進めば、空軍はいずれ形勢を一変させる兵器を手にすることになる」と報告書は結論づけた。

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