トランプ氏発言にデンマーク、パナマ、カナダが警戒

(2025年1月13日)

2024年1月7日火曜日、フロリダ州パームビーチのマー・ア・ラゴで記者会見するドナルド・トランプ次期大統領(AP Photo/Evan Vucci)。

By Jeff Mordock, Mallory Wilson and Seth McLaughlin – The Washington Times – Tuesday, January 7, 2025

 ドナルド・トランプ次期大統領は7日、グリーンランド、パナマ運河、カナダを支配下に置くという野心的な米国拡張計画の概要を説明した。

 グリーンランドとパナマ運河を獲得するための軍事行動の可能性は否定しなかったが、カナダについては経済力だけで米国の一部にしたいと述べた。

 デンマークのグリーンランド領有権の合法性に疑問を呈し、パナマ運河の運営における中国の役割と、1979年に運河をパナマに譲渡した故ジミー・カーター元大統領を批判し、カナダは米国との取引で、与えるよりもはるかに多くのものを得ていると述べた。

 フロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」での記者会見で「私の望みは自由世界を守ることだ」と語った。

 トランプ氏は、1月20日の就任式までまだ2週間もあるが、この発言で強硬な外交政策を取ることをにおわせた。

 「双眼鏡は必要ない。外を見てみろ。中国船がそこら中にいる。ロシアの船もあちこちにいる。そんなことはさせない」とトランプ氏は語った。

 トランプ氏の演説と同時に、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏が私的訪問のためグリーンランドに到着した。当局者との会談は予定されていない。

 トランプ氏は1期目以来、グリーンランドに狙いを定め、北極圏を戦略的拠点にしようとするとともに、ロシアと中国への優位性を獲得することを目指している。

 グリーンランドには大規模な米軍基地がある。

 トランプ氏はパナマでの中国のプレゼンス、海軍艦船を含む米艦船の運河使用料が高いことに不満を抱いている。

 パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、運河を運営しているのは中国ではないと主張しているが、運河の大西洋側と太平洋側の端にある港には、中国を拠点とする企業が大規模な出資をしている。

 トランプ氏は最初の任期中にグリーンランドの買収を提案したが、強くは求めなかった。グリーンランドは北大西洋条約機構(NATO)の同盟国デンマークが支配している。

 トランプ氏は、軍事力の行使は否定するかとの質問に対し、「約束するつもりはない。何かしなければならないかもしれない。パナマ運河はわが国にとって不可欠だ。国家安全保障のためにグリーンランドは必要だ」と答えた。

 もしデンマークが介入すれば、米国はデンマークに「非常に高いレベルの関税をかける」と述べた。

 トランプ氏は繰り返しグリーンランド獲得の考えを示したが、具体的な計画はないと述べた。先月、駐デンマーク大使の人選を発表した際には、「国家安全保障と世界の自由のためには…グリーンランドの所有と管理は絶対に必要だ」と述べた。

 元国連大使のジョン・ボルトン氏は、ロシアの影響力を抑制し、北極圏への影響力獲得を目指す中国の動きを鈍らせるなど、米国がグリーンランドを支配する主な利点を挙げた。

 ところが同氏はワシントン・タイムズ紙に、トランプ氏の戦術は自滅的だと語った。

 「トランプ氏は一方で、(長男の)ドニー・ジュニアをグリーンランドに送り込んだ。これらは、民主的に選ばれた現地の政府や、民主的に選ばれたデンマーク政府を窮地に追い込むものだ。トランプ氏がやっていることは、自身の目的の達成には逆効果だ。…トランプ氏はそれで楽しいかもしれない。しかし、グリーンランドやデンマークの人々には不快だ。もし真剣に米国の安全保障を考えているのであれば、口を閉じるべきだ」

 デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は7日、「グリーンランドは売り物ではないし、将来も売り物にはならない」と主張、グリーンランド国民の間で多くの支持を得ていると述べた。

 別の外交政策でトランプ氏は、就任するまでにパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスが人質を解放しなければ、「中東で大混乱が起こるだろう」と警告した。このテロ集団は2023年10月7日にイスラエルを襲撃して以来、ガザ地区で人質を拘束している。

 「もし人質が戻らなければ、…それはハマスにとって良いことではないし、率直に言って、誰にとっても良いことではない」

 トランプ氏の次期中東特使であるスティーブ・ウィトコフ氏は記者会見に短時間参加し、人質解放に向けて「かなり前進している」と指摘、「就任式までに、発表できる良いことがあると本当に期待している」と述べた。

 トランプ氏は、1時間以上に及んだ自由奔放な記者会見で、他にもいくつかの発言をした。その中の一部を挙げる。

-ドバイを拠点とするダマック・プロパティーズが200億ドルを投じて全米にデータセンターを建設すると発表した。

-メキシコ湾の名称をアメリカ湾に変更したいと述べた。

-民主党の「司法の武器化」に憤慨し、司法省のジャック・スミス特別検察官を「錯乱した人物」と呼んだ。

-連邦水域での海洋掘削を禁止したバイデン大統領の行政処分の一部を撤回すると約束した。

-ロシアがウクライナでの紛争をエスカレートさせると予測し、この紛争を「複雑」と呼んだ。

 パナマ運河についてトランプ氏は、パナマはこの戦略的な水路を通過する米国船を値踏みしていると述べた。運河は、1900年代初頭、大西洋と太平洋を結ぶために米国が建設した。

 パナマに運河を与えたことは「恥ずべきこと」であり、パナマは契約の義務を守らなかったと述べた。カーター大統領(当時)の下、米国は1979年にパナマ運河をパナマに返還し、1999年には運河地帯の管理に関する協力関係を終了させた。

 12月29日に100歳で死去したカーター氏は7日、連邦議会議事堂に安置されていた。

 トランプ氏は「彼らは私たちをバカだと思って笑っている。しかし、今は違う。すぐに運河を巡る交渉が行われる」と述べた。

 カナダについては、この北の隣国を管理下に置けば、経済大国が誕生し、国境警備も強化されると述べた。

 トランプ氏は、カナダと米国の統合は「本当に素晴らしいことだ」と語った。

 「人為的に引かれた線を取り除き、その線がどのようなものかを見てみることで、国家安全保障にとってもより良いものになる」

 トランプ氏は、米国はカナダを保護し面倒を見るために毎年「数千億ドル」を費やしているが、「カナダが持っているものは何も必要ない」と述べた。

 「自動車は必要ない。カナダ産の木材は必要ない」と語ったが、米国がカナダから毎月輸入している1億4000万バレルの原油については触れず、これは米国にとって第2の原油輸入国であるメキシコ(毎月約2000万バレル)をしのぐものだ。

 同氏は、6日に退陣を表明したジャスティン・トルドー首相の後任として、ホッケー界の伝説的選手ウェイン・グレツキー氏を推薦した。

 カナダ政府当局者は、カナダが米国の一部になることはないと述べている。

 保守派コメンテーター、ジェド・バビン氏は最近、膨張主義的な発言は「同盟国のバランスを崩し、敵を必要以上に安心させる」というトランプ氏のやり方に沿ったものだと指摘した。

 バビン氏は最近、ワシントン・タイムズに掲載された論考で「パナマをいじめることで、(運河の)使用料を減らそうと考えているのだろう。それはうまくいくかもしれない」と指摘した。

 同氏は、グリーンランドに米軍基地を置くことは戦略的に理にかなっているが、アイスランドに基地を置く方が効果的だとの見方を示した。

 「おそらくトランプ氏は、デンマークの国防支出に拍車をかけようとしたのだろう。彼は成功した。デンマークのトロエルス・ポウルセン国防相は、トランプ氏の発言後すぐに、グリーンランドの防衛費として約15億ドルの増額を発表した。デンマーク側は、トランプ氏の発言は防衛費の決定とは関係ないと主張している」

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