DACA違法判決受け、不法移民保護を急ぐ民主党
By Stephen Dinan – The Washington Times – Sunday, July 18, 2021
幼少時に親に連れられるなどして不法入国した若者を強制退去対象から外す救済措置「DACA」に対する連邦判事の判決を受けて、措置の対象となる「ドリーマー」に恒久的な法的解決策を与えようとする議会の動きが慌しくなっているが、この判決によっても依然、過去10年間のあらゆる試みを阻んできた深い溝を克服することはできていない。
アンドリュー・ハネン判事は16日午後に発表した意見で、2012年にオバマ政権が定めたこの措置は、あまりにもずさんで、法的には維持できないと指摘、大きな波紋を呼んだ。
ハネン判事は、DACA申請の承認を停止するが、すでにこの措置の適用を受けている61万5000人超の人々の資格は維持すると述べた。
これにより、DACAは、トランプ政権時代のほとんどの時期と同じ状況に戻り、連邦議会議員らは対応に追われている。
移民権利活動家らは、DACAの代替案を、現在政界を支配している民主党が通過させなければならない優先事項だと宣言している。
「ラテンアメリカ市民連盟(LULAC)」のリディア・グスマン氏は、「ドリーマーはこの国を支える存在であり、彼らにはもっといいものが与えられるべきだ。上院はドリーマーを保護するドリーム法を通過させるべきだ。ドリーマーの家はここだ」と述べた。
バイデン大統領は、行動への呼びかけを支持した。「議会だけが、ドリーマーに市民権への道を与え、恒久的な解決策を確保することができる。そうすることで、これらの若い人々が必要とし、受けるに値する安心と安定が得られる」
バイデン氏は、米国内の約1100万人の不法移民を対象とした大規模な合法化、少なくとも一時的に滞在資格で国内にいる約300万人のドリーマー、農業従事者、移民を対象とした法案によって、市民権を付与する道を開きたいと考えている。
小規模な法案はすでに下院を通過しており、バイデン氏は週末に、民主党が作成中の予算案に盛り込みたいと述べた。そうすれば、フィリバスター(議事進行妨害)を回避し、共和党の支持を得ずに可決することができる。
現在の国境での移民急増は、バイデン氏の緩い移民取り締まり政策に起因すると言われており、行動への呼びかけを複雑にしている。
共和党のリンゼー・グラム上院議員(サウスカロライナ州)は、過去に移民問題で民主党と協力し、ドリーマーの合法化法案の主唱者でもあったが、18日には、共和党の協力を得たいのであれば、民主党は本格的な国境警備を強化しなければならないと述べた。
グラム氏はFOXビジネスの「サンデー・モーニング・フューチャーズ」で、「私の望みはこうだ。壁を完成させ、(拘束した不法移民を審理まで釈放する)キャッチ・アンド・リリースを廃止し、不法移民の増加を食い止めることができれば、DACAの合法化に投票する」と述べた。
しかし、グラム氏は、民主党に受け皿がないと指摘。民主党は「国境を開く党」になってしまったと述べ、特にニューヨーク州のアレクサンドリア・オカシオコルテス議員やマサチューセッツ州のエリザベス・ウォーレン上院議員らの左派議員が、党を国境警備から遠ざけていると非難した。
このような政界での動きは、15年間、事実上変わっていない。
何百万人もの不法移民の合法化のための大規模な法案を通過させようとする試みは、2006年、2007年、2013年に行われたが、失敗。ドリーマー合法化の小規模な法案は、ほぼ毎年失敗している。
2018年にはトランプ大統領が、国境の壁への予算確保、移民が母国から親族を呼び寄せる「連鎖移民」の制限、永住権(グリーンカード)発給対象者の一部をくじで選ぶ制度の廃止と引き換えに、DACA対象者の市民権取得への完全な道筋を支持すると発言したことで、この取り組みは実現へと大きく近づいた。
しかし民主党は、これらの条件を受け入れなかった。
これにより膠着状態に陥り、DACAは宙に浮いたままとなっている。
この措置は正式には「子供のころに入国した移民に対する強制退去の延期措置」といい、2007年半ば以前に入国した不法移民で、2012年にDACAが有効になった時点で入国後5年以上経過しており、かつ31歳未満の者に適用される。申請は、犯罪歴が少ないこと、教育を受けていることが条件となっている。
DACAの下では、国外退去が2年間停止され、納税者としての特典も受けられるようになり、社会に溶け込むチャンスが与えられた。永続的な滞在資格を与えるものではないが、更新は可能。中には9年近くDACAを利用しているドリーマーもいる。
この措置は、オバマ政権が国土安全保障省に提出した覚書に基づいて作られた。オバマ大統領は、ドリーマーに対する強制送還という移民法上の対応を追求しないという「検察的裁量」を行使したと述べている。
ハネン判事は、この措置は重大な政策変更であり、本格的な法的手順を経るべきだとの判断を下した上で、このような手順を経ておらず、行政手続法に違反していると指摘した。
「したがって、裁判所は、国土安保省がDACAを採用するためには、告知とコメントによる規則制定を行う必要があったと判断する。国土安保省は法律で定められた手続きを行わなかったため、DACAは義務や責務を課すことができる法的拘束力のある政策としての地位を得ることができなかった」と判事は指摘している。
また、ハネン判事は、ドリーマーはDACAによって保護されているため、議会が行動を起こす余地があることから、DACAを直ちに廃止することはないと主張した。
3月31日現在、DACAのもとで61万6030人が保護されている。
トランプ政権下でも、現在のDACA対象者は更新が認められていたが、新たに申請資格を得たドリーマーは、ほとんどの場合、申請を阻止されていた。バイデン政権は、新規申請の受け付けを開始したが、承認のペースが遅いため、移民権利活動家は反発を強めている。
ハネン判事は2015年、DACAと同じ理由で、オバマ政権時代のより広範な国外退去措置である「米国民の親に対する強制退去の延期措置(DAPA)」も違法であるとの判決を下した。
この判決は、第5巡回区控訴裁判所でも承認され、その後、最高裁判所でも4対4で承認された。
バイデン政権は、ハネン判事の今回の判決を控訴するとしている。
国土安保省のアレハンドロ・マヨルカス長官は、オバマ政権が取らなかった手順をすべてチェックすることで、合法的にDACAを再構築することを宣言した。
マヨルカス氏は17日「昨日の判決と全米の家族への影響には失望しているが、ドリーマーを保護するわれわれの努力を妨げるものではない」と述べた。