バイデン氏、イラクの戦闘部隊、年内に引き揚げ

(2021年8月2日)

President Joe Biden speaks during his meeting with Iraqi Prime Minister Mustafa al-Kadhimi in the Oval Office of the White House in Washington, Monday, July 26, 2021. (AP Photo/Susan Walsh)

By Jeff Mordock and Ben Wolfgang – The Washington Times – Monday, July 26, 2021

 バイデン大統領が26日に発表したところによると、米国は年内にイラクでの戦闘任務を終了し、米軍の任務は助言と訓練に移行する。それに対し、イランがこの地域でさらに大きな影響力を持つようになる可能性があると批判が出ている。

 バイデン政権になってまだそれほど長くはないが、長期にわたる駐留米軍を大幅に削減することが確認されたのはこれが2度目となる。アフガニスタンでは、20年にわたって駐留してきた米軍と外国軍が同時に撤収を進めている。

 バイデン氏は、イラクのムスタファ・カディミ首相との大統領執務室での会談の直前に、過去20年間のほとんどの期間、米軍が活動してきたイラクへの新たな取り組みを説明した。イラクには約2500人の兵士が駐留しているが、今後何人の兵士が駐留するかは明らかになっていない。

 イラクとアフガンからの撤収は、2001年の米同時多発テロ以降の米国の外交政策に大きな変化をもたらす。これまでの20年間は、アフガンや中東に拠点を置くテロ組織との戦いが主要任務だった。米国防総省の新しい軍事計画で、米軍は伝統的な競合国、特にロシアと中国との戦いに備えることを目指している。

 外交政策の変更にもかかわらず、バイデン氏は、過激派組織「イスラム国」(IS)の残党との戦いを続けることを強調した。ISはもはや広大な支配地を持っていないが、訓練を受けた何千人もの戦闘員を擁している。ISは最近、首都バグダッドで35人が死亡した爆弾テロ事件で犯行声明を出した。

 バイデン氏は、執務室でのカディミ氏との会談に先立ち、「ともにISと戦うことが、この地域の安定のために不可欠であり、テロ対策での協力は、これから話し合う新たな段階に移行しても継続する」と述べた。

 「イラクでの米国の役割は、…戦えるようにしておくことであり、訓練を続け、支援し、援助し、ISが台頭すれば対処できるようにしておくことだ。しかし、年末までに戦闘任務に就くことはなくなる」

 ホワイトハウスは、米軍がイラクの同胞を見捨てたわけではないと強調した。イラクは、テロの脅威や、イランと密接な関係にある強力なシーア派民兵組織からの安全保障上の困難に直面している。

 政府高官は記者団への背景説明で「この計画が進み、米国が正式に戦闘任務を終了し、この国で戦闘の役割を担う米軍が存在しないことが明確になっても、イラクは継続的な訓練、補給、情報、助言などでの支援を必要としており、われわれも大いにこれに同意する」と語った。

 この高官は、イラク軍は「実戦経験豊富」で、自国を守ることができると述べたが、米軍が助言を継続することは、米政権が依然として「イスラム国」を脅威ととらえていることを示している。

 バイデン氏がイラクの将来を形作ることへの米国の影響力を削ぐことは、大きな賭けだという批判が出ている。イラクと隣国シリアに駐留する米軍は、カタイブ・ヒズボラやカタイブ・サイード・アル・シュハダといったイランが支援する民兵から攻撃を受けている。これらの組織は、イラクに拠点を置くシーア派民兵組織の統括組織である「人民動員軍(PMF)」の一員であり、イランから資金面や物資面で多大な支援を受けている。

 米軍が民兵を繰り返し空爆し、ホワイトハウスが撤収を発表したにもかかわらず、これら民兵組織は、今後も米国人を標的にすると警告している。

 イランのファルス通信は、民兵組織「アル・ヌジャバ・レジスタン[TH1]ス・ムーブメント」のスポークスマン、ナスル・アル・シャンマリ氏の「米軍の存在については、呼び名や地位は問題ではなく、いかなる地位、立場にあっても、抵抗の武器の標的となる」という発言を報じた。

 これらの発言は、厳密には戦闘任務が終了しても、米軍が危険にさらされうることを示唆しており、バイデン氏が米軍を守るためにどれだけのことをしようとしているのかという疑問を生じさせる。今年に入ってから、少なくとも8回のドローン攻撃と17回のロケット攻撃が、イラクとシリアの米軍を標的に行われた。

 イランがこの新たな動きを利用して攻撃を仕掛ける可能性があるという専門家もいる。

 国防総省の元高官で、現在はアメリカン・エンタープライズ研究所の常勤研究員のマイケル・ルービン氏は、「ホワイトハウスは米軍を戦闘にかかわらない専門家集団と称することで、うまくやっていけると思っているかもしれないが、このような言葉の上でのごまかしに、ワシントンやアムトラック・コリドーの外にいる人たちが引っかかることはない。米国のアフガンからの撤収がタリバンの優位につながり、反米勢力は自信を強め、ここでもその教訓を生かそうとしている。つまり、攻撃を続ければ、米国人はいずれ逃げ出すということだ」と述べた。

 「イラク民兵のロケット弾やイランの無人機が、数十人の米国人を殺害するのは時間の問題だ」

 また、米軍が撤収することで、イラン政府は他の地域により多くのエネルギーを注ぐことができるようになり、中東全体でより大きな存在となる可能性があるという見方もある。

 ワシントンに拠点を置く民主主義防衛財団の上級研究員であるベーナム・ベン・タレブル氏は、「イラン・イスラム共和国は、中東での米国の利益と同盟国の安全保障にとって、最も古く、最も大きな脅威だが、イランにとってこれほど幸せなことはない」と述べている。

 「イランは、イラクを米国に勝つための一つの戦場と考えている。これが完了すれば、ペルシャ湾やシリアなど、他の戦域でも緊張が高まる。イランの東側と西側で米軍のプレゼンスが薄れることで、世界最大のテロ支援国家であるイランは、より大きな行動の余地を得ることになる」と述べた。

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