傷ついたトランプ・ブランドを金看板にする共和党

(2021年8月5日)

Former President Donald Trump points to supporters after speaking at a Turning Point Action gathering, Saturday, July 24, 2021, in Phoenix. (AP Photo/Ross D. Franklin)

By Seth McLaughlin – The Washington Times – Friday, July 30, 2021

 ドナルド・トランプ前大統領の政治銘柄と言えば、スタジアムを満員にして共和党を派手にアピールするスーパー政治家のイメージだったが、最近それに陰りが出ている。

 第一幕はテキサス州で、議会選挙に出馬したトランプ氏お気に入りの候補が敗北した。政治アナリストたちはこの選挙戦の結果を受け、「前大統領推薦」の得失の程度を見定めようとやっきだ。

 第二幕の合衆国議会では、大規模インフラ整備計画の超党派合意を前に進めるために必要な数の共和党上院議員たちが、同計画関連一括法案を批判・攻撃してきたトランプ前大統領を無視した。共和党から一定数の支持を確保でき、バイデン大統領はトランプ政権下で実現できなかったインフラ整備計画を議会通過させる大きな手がかりを得た。

 第三幕も議会で、今年1月6日の合衆国議事堂の内外での暴挙を調査する下院特別委員会は、トランプ前大統領擁護派や、暴挙をトランプ氏の扇動に結び付けることに反発しそうな共和党議員たちが欠席する中で開かれた。

 トランプ挫折劇のこの三幕は、一週間に立て続けて起きた。共和党の戦略参謀の一人でトランプ批判派のダグ・ヘイ氏は語る、「この一週間はトランプにとって、ホワイトハウスを去ってから最悪の時間だったはずだ」。特にテキサス州の選挙戦に「とんでもない候補者」を推薦してしまい、選挙戦の勝ち馬選びに自信を示してきたトランプが、手ひどい誤りを犯したと指摘した。

 ヘイ氏によれば、議会の特別委員会の調査で前大統領は数週間、守勢に回らざるを得ない。議事が進むに従い、トランプ前大統領の高圧的で強引極まる政治スタイルの実態が暴かれ、反トランプ派には一層の攻撃材料を提供するだろう。

 それでもトランプ氏が無力になったわけではない。保守派仲間と連絡を取っている議員候補の一人は、党内の連絡網が機能不全だと漏らした。その理由は保守グループが、各選挙戦についてトランプ氏が誰を推薦するか確認してから資金投入しようと待機しているからだという。

 トランプ率いる「米国を政府から救う行動委員会(PAC Save America)」の広報担当、タイラー・ブドウィッチ氏は、待機の理由を次のように説明した。「トランプ大統領は依然としてアメリカの政治では最も重要なリーダーだ。そうではない、との主張は勝手な思い込みに過ぎないことが、やがて明らかになるだろう」。

 実際にトランプ氏は選挙運動スタイルのイベントでは、相変わらず群衆を引き付け、大統領選挙の結果が(民主党に)奪われた、という同氏の主張は、裏付けがないまま極右集会のスローガンのひとつになっている。共和党活動家の間で、「トランプ推薦」を取ることは依然最も切望されているし、2024年の大統領選挙にトランプ氏が色気を示している事実は、他の有望候補者たちを圧倒している。

 モンマス大学の選挙調査研究所のパトリック・マレー所長は、トランプ氏が頓挫したとは言え、同氏が行動部隊から見捨てられた証拠はほとんどない、と指摘した。同所長はさらに、議会調査の過程で保守層が、前大統領への高い評価や、あの大統領選挙の結果への反感、そして1月6日の出来事についての見方を変える可能性は低い、との見通しを語った。

 マレー氏は、テキサス州の議会選挙も積極的に評価できると言う。トランプ氏が推薦したスーザン・ライト候補は、本格的な選挙活動をしない段階から、決選投票になれば6ポイント差で勝てるところまで来ていた。「メディアの状況は…トランプ氏に厳しかったが、同氏支持の基盤となっている基礎条件が目に見える形で変化してはいなかった」、マレー氏はそう評価した。

 歴史は往々にして一期限りの大統領を、政治の結果論に追い込むものだが、トランプ氏はそうした歴史に逆らおうとしている。

 それにしても彼の退場は尋常でなかった。トランプ氏は大統領選挙後に議会上院が実施した弾劾裁判を耐えた。またソーシャルメディアから存在抹消されながらも、電子メールで送った声明をマスコミが逐一報道してくれたおかげで、彼は社会に発信する声を取り戻した。

 もっとも電子メールでの声明では、前述のインフラ計画の超党派取引を阻止できなかった。トランプ氏は傍観者としてあら捜しを繰り返し、バイデン大統領、上院民主党、一部の共和党議員たちによる取引を「ひどいものだ」と酷評し、それによって「共和党員を弱く愚かで、ものの言えない連中に見せるだけだ」と批判した。そして同取引に賛同した共和党議員たちに重大な挑戦をするとほのめかした。

 にもかかわらず、トランプ氏の同盟者であるリンゼイ・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出)を含む17人の共和党議員が、問題の提案を上院で討論することに賛成票を投じた。この取引をまとめるのに力を貸した四人の共和党議員は、トランプの傷の痛みに塩を刷り込んだようなものだ。すなわちスーザン・M・コリンズ議員(メイン州)、ビル・カシディー議員(ルイジアナ州)、リーサ・マーカウスキー議員(アラスカ州)、ミット・ロムニー議員(ユタ州)は、トランプ氏への二度目の弾劾裁判で、トランプ氏に有罪評決を投じた議員たちだったからだ。議会上院の共和党指導者ミッチ・マコーネル議員や、ケンタッキー州の共和党議員と、もう一人トランプが標的にする議員も、同提案推進に賛成票を投じた。

 トランプ氏は不満たらたらで、次のようにやり返した。 「ミッチ・マコーネル議員の弱い指導力のもと、上院共和党は負け続けている。アリゾナ州を落とし、ジョージア州を失い、不正選挙に目をつぶって闘わなかった」。そして続けた、 「今や民主党が望むもの全てを与え、見返りに何も得ていない。悪い取引をするくらいなら、取引をしないほうが得策だ。」さらに「RINO(名ばかりの共和党員を意味する蔑称)の連中は、共産主義の民主党員とともに、アメリカを滅ぼしている」と付け加えた。

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