習氏の中国「再共産化」に暗雲、金融・不動産危機など問題山積

(2022年2月11日)

2022年2月8日(火)、北京郊外にある万里の長城の八達嶺区間を訪れた観光客が、中国の国旗を持ってポーズをとっている。(AP写真/Ng Han Guan)

By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, February 8, 2022

 中国の習近平国家主席は就任後、経済改革を推進してきたが、中国共産党内からの反発もあり、思うように進んでいない。富裕層への締め付け強化、エネルギー危機、不動産危機など課題は山積、習氏の「再共産主義化」の夢を脅かしている。

 中国は、1980年代から市場経済化と技術革新を推進し、米国と競合する経済大国へとのし上がってきた。しかし、習氏は2013年の国家主席就任後、政権内の汚職撲滅などによる権力固めを進める一方で、それ以前の改革・開放路線からの転換を図ってきた。

 中国専門家らによると、中国経済は現在、習氏の「再共産主義化」計画によって混乱と後退に直面し、習体制、最終的には共産党そのものを脅かす可能性がある。

 ニューヨークのリスクコンサルタント会社、シノインサイダーの上級研究員ラリー・オン氏は「中国経済は急速に悪化しており、リセッション(景気後退)に陥ろうとしているようだ。不動産部門の債務危機から、金融危機が拡大している」と指摘した。

 中国問題に詳しい米政府高官も、中国経済は15年をピークにゆっくりと崩壊に向かっており、1980年代以降で初めて、強固な支配体制が揺らいでいるとの見方を示した。

 危険な兆候は、中国の大企業、多国籍企業をリードしてきた富裕層に対する締め付けにも見て取れる。電子商取引最大手アリババ集団、傘下の金融会社アント・グループの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏がその一例だ。中国一の資産を持ち、国家的威信の源とみられていたが、金融当局を批判したことで、築き上げた「金融帝国」は事実上の解体を命じられた。馬氏の成功を称(たた)えていた国営メディアも、手のひらを返したように「悪の資本主義者」「吸血ゴースト」と批判し始めた。

 昨年秋にも中国経済の困窮ぶりが露呈した。昨年9月、全国的な停電に襲われ、少なくとも20省、最大33省で突然、電力の供給が停止した。石炭価格の高騰と、二酸化炭素排出削減のための石炭使用量の削減による電力不足が原因とされているが、電力需要は増えており、発電への石炭使用量はかえって増えている。

 米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)が1月21日に報じたところによると、今年初めに、20万人以上が住宅ローンの支払いを停止した。経済危機は公務員にも及び、全土で給与が削減されたり、未払いになったりしている。習氏の指示で、共産党員の給与も33%削減された。

 ところが経済・金融面で問題が発生しても、好調な経済と輸出がこれを吸収している。米国務省の元高官で中国問題専門家のジョン・ケーシック氏は、「中国は依然として、農産品から鉱物資源、化石燃料まで世界の商品市場を支配しており、不動産危機も乗り越えられる。一番損をするのは、外国の債権者らだ」と指摘している。

 外国企業は習体制以前、中国はいずれ国際秩序に従う「普通」の市場経済になるとの希望的観測を基に中国への投資を推進してきた。しかし、米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の委員、マイケル・ウェッセル氏は、「中国共産党が方針を変えることはない。経済問題が改革につながるという希望は捨て、この現実に向き合うべきだ」と警鐘を鳴らす。

 トランプ前政権の国務省高官マイルズ・ユー氏は、「中国共産党が繁栄しているのは、世界の資本主義市場に自由に参加することが許されたからだ」と指摘、米国も中国のように、外資系企業の投資を制限、禁止する「ネガティブリスト」を採用し、中国からの投資を制限すべきだと主張している。

 ユー氏は「(中国を)負かす必要はない。こちらが大切なものを守ってさえいれば、いずれ自壊する。旧ソ連はそうして崩壊した」と中国を国際社会から締め出す必要性を訴えている。

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