米国のロシア原油依存度が過去最高

(2022年3月5日)

2021年8月26日、ノースカロライナ州ワットフォードシティで、油田で天然ガスを燃やすフレア(AP Photo/Matthew Brown, File)。

By Valerie Richardson and Tom Howell Jr. – The Washington Times – Tuesday, March 1, 2022

 バイデン大統領は1日、ロシアのプーチン大統領がエネルギーを生かした影響力に対策を講じ、戦略石油備蓄を放出したが、一方でロシアからの石油輸入は過去最高を記録し、政権の国内化石燃料への規制に対する不満も高まっている。

 エネルギー情報局(EIA)が2月28日に発表した2021年の速報値によると、米国は昨年、ロシアの原油と石油製品を2億4500万バレル輸入し、前年比約24%急増した。

 米商業会議所のマーティン・ダービン上級副会長(政策担当)は声明で、「これは1日当たり約67万2000バレルに相当し、過去最高で、わずか4年前と比べて79%増となる」と述べた。

 ロシアのエネルギーへの依存度が高まっていることから、国内の原油・ガス生産に対する規制を緩め、まずは連邦政府管理地のリース制限を解除し、「キーストーンXL」パイプラインの中止を撤回するようバイデン氏に求める声が強まっている。

 下院共和党幹事のスティーブ・スカリス(共和、ルイジアナ州)は「バイデン大統領は、米国のエネルギー生産を減らし、ロシアの原油を買ってプーチン氏の戦争に資金を提供するのを止める必要がある。ウクライナの人々に壊滅的な影響を与えているが、プーチンのポケットに何十億ドルも入っている」と述べた。

 カンザス州のロジャー・マーシャル上院議員は1日、ロシアの石油製品の輸入を禁止する法案を提出した。この法案は、エネルギー委員会の共和党筆頭委員であるワイオミング州のジョン・バラッソ上院議員を含む、少なくとも他の8人の共和党議員の支持を受けている。

 マーシャル氏はFOXニュース・デジタルでこの法案について、「バイデン大統領は何よりもまず米国のエネルギー生産を再開すべきであり、ロシアから原油を購入し続けることによって、ウラジーミル・プーチン氏のウクライナ戦争に資金を提供することをやめなければならない」と語った。

 バイデン氏は1日、ロシアのウクライナ侵攻による原油供給への影響を緩和するための世界的な取り組みの一環として、エネルギー省に米国の戦略的石油備蓄から3000万バレルを放出することを許可した。

 ジェン・サキ大統領報道官は、「きょうの発表は、世界中のパートナーがロシアによるいわれのない不当なウクライナ侵攻を非難し、プーチン大統領が選択した戦争による影響に対処するために協力するもう一つの例だ。バイデン大統領は当初から、ガソリン価格の上昇を含め、米国のビジネスと消費者を守るために、すべての手段がテーブルの上にあることを明確にしていた」と述べた。

 国際エネルギー機関(IEA)加盟各国は、備蓄から6000万バレルの原油を一括して放出することで、より広範な取り組みを実施した。

 ジェニファー・グランホルム・エネルギー長官は、2050年までに米国の排出量をゼロにするために、「国内外のロシアの石油・ガスへの依存を減らす最善の方法」として、クリーンエネルギーへの投資を支持することを改めて表明した。

 「クリーンエネルギー技術はすでに、利用可能で費用対効果も高く、エネルギー供給が政治的強制や国家安全保障を脅かす手段として利用されず、家庭や企業が不安定な価格や市場からの影響を受けないようにするための確かな道筋を示すものだ」

 このメッセージは、米国の原油生産者への規制を緩和し、欧州でのロシアのエネルギー支配に対抗するよう政権に要求している業界団体や経済団体へのけん制だ。

 ダービン氏は「愚策」だと指摘、石油生産の22%、天然ガスの12%を占める連邦政府所有地のリースを解禁し、リースの許可を促進することを提案した。

 また、エネルギー省に対し、数カ月、場合によっては数年間も停滞している六つの液化天然ガス基地建設の許可を出すよう要請した。

 ダービン氏は「原油価格が1バレル100ドルを超え、ロシアは軍事やウクライナ侵攻を含む政府予算の財源をエネルギー輸出に依存しており、ロシアのエネルギー輸出が西側に対して及ぼす影響力は、今や世界中に知れ渡っている。この依存をさらに強めるエネルギー政策を早急に見直すべきだ」と述べた。

 ウェスタン・エネルギー・アライアンスのキャサリーン・スガンマ会長は、トランプ政権が2019年にベネズエラに対する制裁を発動した後、米国のロシア原油の輸入は急増したが、ベネズエラの原油は、国内で生産される軽質スイート原油よりも米国の精製所に適していると述べた。

 EIAの統計によると、米国の原油と石油精製品の輸入の約8%がロシアからだ。

 スガンマ氏は「トランプ政権下で純輸出国だった時も、実は輸出入していた。依然、原油を輸入し、精製品や軽質スイート原油を輸出して他の場所で精製していた。それは単に、米国の軽質スイート原油に対して米国内の精製能力が十分でないからだ」と述べた。

 米国の石油生産量は、新型コロナウイルスのパンデミック時に国内と世界の需要減に伴い減少したが、スガンマ氏は2021年の減少の一因は政権の政策にあると指摘した。

 「この政権はこの業界を敵視しており、トランプ政権の時ほど生産量は増えていない。日量約100万バレル減産している」

 バイデン政権は先週、ウクライナ侵攻を受けてロシアに経済制裁を加えたが、世界のエネルギー市場の混乱と米国内の燃料価格上昇を懸念し、ロシアの石油・ガスへの制裁を見送った。

 それでも共和党議員の中には、エネルギー制裁を行い、不足分を米国での生産で補うことをバイデン氏に求める声もあった。

 ジョニ・アーンスト上院議員(共和、アイオワ州)は1日、ロシアへのエネルギー制裁を「すぐに」行うよう政権に要請した。アーンスト氏は、プーチン氏が「まだ、これらの資源から入ってくる収入で生き延びている」と述べた。

 アーンスト氏はFOXニュースで「この政権から見えているのは、狂った気候政策への集中だ。他に説明のしようがない。米国のエネルギー生産を削減し、ロシアやロシアのような他の国への依存度を高めている」

 ジョー・マンチン上院議員(民主、ウェストバージニア州)は、ウクライナへの攻撃を非難しながら、ロシアの原油を輸入するのは「偽善的」だと述べた。

 「米国民がウクライナで起きていることを非難する一方で、米国はこの戦争の最中にロシアから日量50万バレル以上の原油やその他の石油製品の輸入を許可し続けている。これはまったく筋が通らないし、わが国のエネルギー安全保障に対する明白な危険性を示している」

 ライス大学ベーカー公共政策研究所のエネルギーと世界石油市場の専門家、マーク・フィンリー氏は、ロシアの政治的影響力は、「サウジアラビアに次ぐ天然ガス最大の輸出国、石油第2の輸出国」としての役割にあると述べた。

 「私が重要と思うのは、米国のロシアへの依存というよりも、ロシアが世界最大の石油・ガス輸出国の一つとしての地位を、自らの地政学的な影響力のために利用する能力だ。これは問題だが、米国が輸入しているから問題なのではない。世界がそれを使っているからだ」

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