鉄のカーテン2.0
By Editorial Board – The Washington Times – Thursday, March 24, 2022
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに仕掛けた戦争は、一大悲劇であり、ミサイルと爆弾によって引き起こした死と破壊は、かつてないほど大きな恐怖心を呼び起こした。この戦争ではさらに、孤立の中で崩壊していたブロックの復活という厄介な問題を招来している。世界的な交流が進む今の時代には考えられない出来事だ。明らかに「鉄のカーテン2.0」が下りようとしている。
プーチン氏は、1億4400万人のロシア国民に、ウクライナ侵攻に関する正確な情報を伝えず、民主主義的な判断力を奪って、国家保安委員会(KGB)流の統制を復活させた。モスクワその他のロシアの主要都市で、数千人の抗議デモ参加者が逮捕されたことに加えて、戦争に関する「偽の」ニュースの流布に懲役15年の刑罰を科すとする新しい法律が施行され、国営メディアが独立メディアに取って代わった。ツイッターや「TikTok(ティックトック)」など広範囲に行き渡っているプラットフォームは、ロシア内でコンテンツに制限が課されている。フェイスブックは、完全にブロックされた。
当然のことながら、世界は、入念に構築されている国際的秩序から、ロシアを切り離すことによって対応している。1990年代初頭に最初の鉄のカーテンが崩壊した後、ロシアと、その衛星国へのサービス提供を急いできたグローバル企業は今、数百社単位で撤退している。コカ・コーラ、アップル、エクソンモービル、マクドナルドなどが例として挙げられる――さらに、北大西洋条約機構(NATO)による経済制裁が科され、マスターカードやビザのような重要な金融サービスも停止された。
欧州連合(EU)は、ロシアの民間航空会社に対して空域を閉鎖することで、米国やカナダに仲間入りし、突然、相互につながっている世界から旅行者を締め出した。だが、明確な例外がある。中国だ。中国は2月、ロシアを永遠の友とすることを誓い、ロシアの冷酷無比なウクライナ攻撃を非難することを控えた。つまり、象徴的であろうと、なかろうと、ロシア人を追い返すための万里の長城の補強工事の予定はないということだ。
ウィンストン・チャーチルが名付けた「鉄のカーテン」は、第2次世界大戦後に、ソ連とその属国を外部との接触から遠ざけるために建てられた。欧米の人々にとって壁の再建は、1991年のソビエト帝国の崩壊、冷戦の終結、「グラスノスチ(開放)」に比べれば、愉快なものではない。ロシアが壁の向こう側で孤立し、再び閉じ込められるのを目撃することは、実に気が滅入るものだ。
ウクライナの人々が敵に囲まれ、雨のように降り注ぐ罰を受けるいわれはなく、思いやりのある世界から、救援物資や支援のメッセージが届いている。プーチン氏は、故郷や実生活から人々を力ずくで引き離すことの正当性を示せなかった。
プーチン氏が、ウクライナの一部か全部を新しい鉄のカーテンの向こうに置くことに成功するかどうかは、まだはっきりしていない。しかし、ロシア自身はすでに、日陰に沈みつつある。もしも、ロシア人が日々、窮状が深刻化していることの責任を問い合っているとしたら、それは、本物の民主主義的感性を持った指導者を生み出すことができなかった彼らの歴史的力不足のせいである。
そうこうしているうちに、ウクライナ人もロシア人も同様に、何千人もの息子らを墓に送ることになる。悲しいかな、70年以上かけて勝ち取った自由も、それらの命と一緒に失われるかもしれない。