コロナ拡大による国境封鎖政策を廃止へ 混乱に備える国境

(2022年4月9日)

米国とメキシコの国境を歩くニカラグアの移民たち(2021年12月2日、メキシコ・バハカリフォルニア州アルゴドネスにて)。一行は歩いて米国に入り、国境警備隊に亡命を求めて出頭した。バイデン政権は、COVID-19の拡散を防ぐために実施された米国とメキシコの国境での徹底的な亡命制限を5月23日までに終了させる計画案を持っていると、この計画に詳しい関係者は述べている。(AP写真/フェリックス・マルケス)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Sunday, April 3, 2022

 ビル・ハガティ上院議員(共和、テネシー州)は、バイデン政権が新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態の解除と不法移民への国境開放を決定したというニュースが流れた1日、国境警備隊員と一緒に夜の点呼の場にいた。

 ハガティ氏は、国境警備隊が最も恐れていたことが現実となり、「憂鬱な雲」が隊員らの上に立ち込めたと語った。国土安全保障省の緊急時対応計画によると、すでに1日約8000人という記録的な水準に達している国境での検挙者が、1万8000人に急増する可能性があるという。

 国境警備隊は、不法入国者の約半数を直ちに追放できるとした国境政策「タイトル42」でこのような事態に対抗できると考えていたが、政府は1日、タイトル42は5月23日に失効すると発表した。

 ハガティ氏は3日間の国境訪問を振り返ってワシントン・タイムズ紙に「落胆と憂鬱のレベルは信じられないほどだった」と語った。

 ハガティ氏がテキサス州の国境を訪れていたとき、バイデン政権は、タイトル42を廃止する決定を下したことを明らかにした。疾病対策センター(CDC)はタイトル42に基づき、国境を越えた不法移民は新型コロナ蔓延の重大なリスクとなると指摘していた。

 バイデン政権は現在、新型コロナの感染率はピーク時より低く、移民は米国の納税者の好意で国境でワクチンを受けることができるため、拡大のリスクは十分に低く、5月下旬に緊急事態を終了させることができると語っている。

 タイトル42により直ちに追放された移民は、今後、入国を主張する機会を得ることになるが、専門家は、入国を試みる人々の新たな波を助長することになると指摘している。

 移民税関捜査局(ICE)の2月末時点の全ベッド収容可能人数は約2万人で、国土安保省が予想する最悪のシナリオでは、1日で埋まってしまう。これには、すでに収容されている他の人々や内陸部で逮捕されている人々は含まれていない。

 国土安保省のアレハンドロ・マヨルカス長官は、政府が来るべき事態に備え、移民の手続きを処理し、解放するための人員を増やし、彼らが裁判所に出頭することを期待していると主張した。

 「それでも、密輸業者が弱い立場の移民を利用しようと誤った情報を流すことは分かっている。はっきりさせておきたいのは、米国に留まる法的根拠を確立できない者は排除されることだ」

 国境問題の専門家らは、それは誤った情報ではないと言う。つまり、米国に着いて、移民を求める者は、たとえ怪しげであっても、拘束され、解放される可能性が高まり、地域社会に潜り込むチャンスを得るということだ。

 移民研究センターの国家安全保障研究員、トッド・ベンスマン氏は「タイトル42を廃止すると、文字通りそこには防衛手段がなくなり、米国内でも強制送還ができなくなる。誰でもが保護を受けられるようになる。文字通り、これまでで最も開かれた国境を実現することになる」と述べた。

 過去2年間で、170万人以上の越境者が、タイトル42の下で米国への入国を阻止された。

 タイトル42については、開始時からトランプ政権によって悪用され、長い間求めていた国境閉鎖の口実として利用されたという批判がある。

 移民権利擁護団体によれば、170万人の追放者の中には、合法的な亡命者もおり、国境を越えてメキシコに送り返されたり、母国に戻されたりしているという。

 人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ファースト」は、メキシコに戻された移民が誘拐され、レイプされ、その他の暴力的な攻撃を受けた数千の事例を記録しているという。

 今後、彼らは亡命を主張する機会を得ることになる。

 移民活動家らはバイデン政権の決断を支持したが、この政策を長く続けてきた政権を非難している。

 カトリック合法移民ネットワークの権利擁護担当ディレクター、リサ・パリシオ氏は「この違法で人種差別的な政策によって失われた命、傷つけられた人々を私たちは忘れない」と述べた。

 バイデン政権にとっての問題は、タイトル42廃止以前でもすでに、国境が混乱していることだ。

 国境警備隊の捜査官は、タイトル42の発表の2日前である3月30日、8063人を逮捕した。

 ベンスマン氏は、増加したのは、メキシコがグアテマラとの南国境に近いタパチュラに人々を集めていたためだと指摘した。これらの移民は今、1日に1000人ほどの割合で解放され、北へ向かっている。

 ベンスマン氏は、タイトル42が完全に廃止されれば、事態はさらに悪化すると予想している。

 「どのようなものになるにせよ、米国のこれまでの経験を超えるものになる」

 トランプ政権下では、感染拡大の間、国境警備隊に逮捕された人の85%近くがタイトル42に基づいて追放された。隊員はその期間、月平均4万8000人弱を逮捕した。

 バイデン大統領の下では、タイトル42の追放は国境パトロールの逮捕者の56%に減少し、より多くの人が拘束され、釈放されたことで、越境しようとする人は増加した。隊員は、バイデン氏の下で月平均約16万8000人を逮捕したが、これはトランプ大統領時の3倍に当たる。

 全米国境警備会議のブランドン・ジャッド会長は、1日の逮捕者数は1万3000~1万4000人で、1万8000人となる可能性もあると述べた。

 国土安保省は、1万8000人は最悪の事態だとしている。1日1万2000人のシナリオも想定している。

 ハガティ氏は、隊員にとっては厳しい数字だという。

 現在、タイトル42で追放されようとしている移民の書類を作成するのに、隊員は約15分かかっている。タイトル8と呼ばれる通常の移民法での手続きは約75分、つまり感染拡大に伴う追放措置の5倍の時間がかかる。

 捜査官は、タイトル42の終了は、隊員が「事務処理以外何もしない」ことを意味すると、ハガティ氏に語っている。

 つまり、密入国組織に割高な料金を支払って、国境警備隊に発見されずに米国に麻薬を密輸したり、凶悪犯罪者を密入国させたりするケースを阻止するための隊員がさらに少なくなるということだ。

 連邦議会では多くの民主党議員がこのタイトル42に関する発表を歓迎したが、中には落胆を表明する議員もいた。

 ジョー・マンチン上院議員(民主、ウェストバージニア州)は、多くの人々が国境に押し寄せる可能性があり、「恐ろしい決定だ」と述べた。

 「そのような流入に対処する準備はどこにもできていない」

 アリゾナ選出で民主党のカーステン・シネマ、マーク・ケリー両上院議員は、バイデン政権がタイトル42廃止後の国境に対処するための具体的な計画を欠いていると不満を表明した。

 ケリー氏は今年末選挙で再選を目指しているが、ミット・ロムニー上院議員(共和、ユタ州)は1日にツイッターで、この決定によりケリー氏は議席を失うだろうと述べた。キャサリン・コルテス・マスト上院議員(民主、ネバダ州)も議席を失うとロムニー氏は予想している。

 バイデン政権は、タイトル42の廃止を決定する一方で、感染拡大と戦うために何百億ドルもの新しい予算を議会に要求し、予算が得られなければ新型コロナによる悲惨な結果を将来すると警告している。

 共和党のリチャード・バー上院議員(ノースカロライナ州)は、新型コロナに関するバイデン氏のメッセージを「矛盾した混乱」と呼んだ。

 法律専門家らは、共和党主導の州が、タイトル42廃止を止めるために裁判を起こすと予想しており、そのため、実施が遅れる可能性があると述べている。

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