原子力技術者暗殺を巡るイスラエルとイランの暗闘
By Guy Taylor – The Washington Times – Wednesday, June 22, 2022
イスラエルとイランの長い闇の戦いは今週、新たな展開を見せた。イランは同国の原子力科学者たちの暗殺を企だてていたイスラエル諜報員(複数)を逮捕した、と発表した。
この展開についてイスラエルは沈黙し、イラン側も拘束された人々の名前や国籍を明らかにしていない。イランの国営メディアは同国の司法当局者を引用し、逮捕されたのはイスラエルの秘密工作機関モサドの「工作員」だと主張した。
「これらモサド工作員の逮捕は、8ヶ月間続いた監視と綿密な諜報活動で可能になった」、イラン南東部のシスタン・バルチェスタン両州のメフディ・シャムサバディ検事総長は火曜日に語った。
イランとイスラエルは長い間、諜報による影の戦争を繰り広げている、として互いを非難してきた。イスラエルはイランを最大の脅威と見なし、イランの核兵器確保を妨げるために、核施設やトップクラスの科学者に軍事行動を辞さないと脅し続けてきた。
こうした双方の暗闘で、数人のイラン原子力科学者が死亡するなど、謎に包まれた事件が起きてきた。顕著な例では2012年、オートバイを運転した加害者が、テヘラン市内をイランのトップクラスの原子力科学者を乗せて走行していた車に、磁気爆弾を付着させ、その爆発で科学者が殺され、ニュースは世界を駆け巡った。
この暗闘は2020年にも国際メディアに注目された。イラン・イスラム共和国が解散した軍用核計画の指導者として欧米当局からマークされていたイラン人科学者・モフセン・ファフリザデ氏が、テヘラン郊外で待ち伏せ襲撃されて死亡したのだ。
この殺害事件当時、イランの外相はイスラエルの仕業を示す「重大な兆候」がある、と主張していた。
この間、イスラエルは殺害の嫌疑について公式コメントを控えてきた。しかしファフリザデ氏の殺害の前、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ元首相は、イランの科学者たちに触れる際、「その名前を忘れないように!」と国民に語ったことがある。
イスラエルのナフタリ・ベネット首相は火曜日、ニューヨークタイムズ紙とのインタビューで、ユダヤ人国家への攻撃に対し、イランに「代償を払わせる!」と断言した。「あの連中は、見た目より脆いことが分った!」、ベネット首相は続けて、「イランの政権は腐敗、堕落していて、無能だ」とも語っている。
イスラエル工作員の逮捕、という報道に関して、最近の動向に関して、答えよりも多くの疑いが出ている。
イランのメヘル通信社は、イランの核計画に関する情報・文書の漏洩に関連して、モサド工作員が2ヶ月前にイラン当局に逮捕された、と報じた。同通信社によれば、逮捕されたうちの1人は、イラン政府の公職に就いていた女性だという。
イランには証拠を提示せずに、外国スパイだ、と主張して、米国をはじめとする国々の個人を逮捕した過去のケースがある。
逆にイラン側の軍関係者がスパイ容疑で逮捕された兆候もいくつかある。英国放送協会(BBC)が2月に報道したところでは、モサド工作員がイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の高位に浸透していることを、イラン諜報当局が懸念しているという。
外国スパイ容疑で告発された人々が拘束されるテヘランのエヴィン刑務所の治安関係棟の消息筋によれば、そこに多数のIRGCの高級幹部が収容されている 、とBBCに語った。
一方でイスラエル当局も、イラン諜報機関がイスラエルの軍事・諜報機関に侵入するのを防ぐため、独自の取り組みをしていると言明した。
今年1月イスラエルが公表したところでは、イランの諜報網がソーシャルメディアを介してイスラエルの女性たちを募り、治安上微妙な場所を撮影させたり、情報収集したり、彼女らの息子たちがイスラエルの軍事情報機関に務めるよう唆していたネットワークを解体した。