米VOA 台湾番組を中止、バイデン政権が働き掛けか

(2022年8月20日)

2020年6月15日、ワシントンに立つボイス・オブ・アメリカの建物(ファイル写真)。米国のグローバルメディアの新しい責任者は、Voice of Americaやその他の国際放送局への変更を進めており、独立した報道機関としての将来に対する懸念を高めている。グローバルメディア局のマイケル・パック最高責任者は、VOAとその姉妹ネットワークは独立性を保つと議会に保証し、重要な進展があれば議員に相談すると約束したが、先週、人事異動を開始し、外国人従業員のビザの見直しに着手している。(AP Photo/Andrew Harnik, File)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, August 18, 2022

対中融和姿勢に懸念広がる

 米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、中国と台湾の間の対立を特に取り上げてきた中国語の2番組を中止する。専門家、元職員などから、中国に対する融和姿勢を示すものだと懸念の声が上がっている。

 中止は、従業員への内部文書で明らかになった。VOAの広報担当アンナ・モリス氏は、中止の方針を確認するとともに、中国報道を減らすわけではなく、従来の放送からインターネットに移行する取り組みの一環と説明。「中国からの偽情報への対抗」が目的であり、VOAは台湾と中国の報道を「大幅に強化」していると主張した。

 VOAによると、台湾問題に特化し、毎週放送されていた「ストレート・トーク」は終了、「アイズ・オン・アメリカ」は月内にウェブサイトとソーシャルメディアに移行する。

 VOAによると、オバマ政権時の2011年にも同様の変更が実施されている。中国向けの短波放送が中止となり、デジタルコンテンツを強化することを目指したものだったが、中国内の一部リスナーからは反対の声が上がったという。

 また、議会共和党からは、中国に対し融和的で、議論の的となっているテーマを避けていると批判された。

 VOAなど米政府系の6放送局を管轄する「米グローバルメディア局(USAGM)」に詳しい情報筋は、中止される二つの番組は台湾問題に特化し、台湾問題に精通したベテランの台湾系米国人が担当していたと指摘、「鋭く切り込んだ番組が中止になり、中国をあまり刺激しない放送になる」との見方を示した。

 さらにVOA筋によると、最近、中国国籍保有者が大量に雇用され、工作員が送り込まれ、中国に有利になるように影響力を行使するのではないかと懸念されている。

 また、USAGMをめぐっては別の懸念も持ち上がっている。

 バイデン大統領が、VOAのベネット元局長をUSAGMのCEOに指名したことだ。

 ベネット氏は18年に、米国に亡命している中国人富豪、郭文貴氏とのVOAのライブインタビューを中国からの圧力を受けて中断させたことで非難された。VOAによると、中止しなければ、北京支局の認可を取り消すと脅されたという。

 ベネット氏は20年に、トランプ政権がUSAGMのCEOに保守派のマイケル・パック氏を指名したことに反発し、VOAを辞職しており、上院共和党はベネット氏のCEO指名承認に反対するとみられている。

 パック氏は、USAGM傘下の局のトップ全員を交代させ、バイデン氏によって21年1月に解雇された。

 ブログ「USAGMウオッチ」は先月、「ベネット局長の在職中、米国内での中国の影響工作を暴いた編集者、記者らが停職、解雇され、VOAの士気は下がった」と指摘、中国、イランからの亡命者ら、職員の間でベネット氏の指名に懸念の声が上がっていることを明らかにした。

 また、VOAの元記者、ダニエル・ロビンソン氏は、バイデン政権初期に、トランプ前大統領が指名した全責任者が解雇された後のUSAGMの経営判断に疑念を呈するとともに、「ペロシ下院議長の訪台などで、米中関係が緊張している今、このような変更が実施されたのは偶然とは思えない。何かが起きている」と、バイデン政権から何らかの働き掛けがあったのではないかとの見方を示した。

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