原発重視に転じる米国の環境保護主義勢力

(2022年9月13日)

カリフォルニア州アビラビーチにあるPacific Gas & Electric社のディアブロキャニオン発電所の原子炉の1つを見る(2008年11月3日)。(AP写真/Michael A. Mariant、ファイル)

By Ramsey Touchberry – The Washington Times – Monday, September 5, 2022

 かつて多くの民主党議員や環境保護主義者から敬遠されていた原子力が、化石燃料に代わるクリーンなエネルギー源として党内や活動家の間で受け入れられつつある。エネルギーコストが高騰し、再生可能エネルギーへの移行が進まないためだ。

 推進派は二酸化炭素を排出しないエネルギー源である原発について、クリーンで安価、24時間発電が可能な上、すでに普及していると主張。これに対し、風力や太陽光発電は断続的で、蓄電能力にも限りがある。

 無党派の「気候・エネルギー解決センター」のエネルギー分析部長であるダグ・バイン氏は、「遅い進展ではあったが、十分なモデル化が行われ、環境コミュニティーの多くの人々が既存の発電設備を維持する重要性を確信するようになった」と指摘。「二酸化炭素排出量削減で逆行したくないとの認識がある」

 環境タカ派の見解が変わりつつあることを示す証拠は、あちこちに見られる。

 民主党は最近承認された税制・気候対策法案に数十億㌦の原子力税制優遇措置を盛り込んだ。この中には、既存の施設に対する生産控除や、安価で工期が短く、運転が安全で60年以上持つ小型原子炉の製造に対する優遇措置が含まれている。

 昨年の超党派のインフラ法案の一部として、60億㌦が国内の老朽化した原子力施設に割り当てられた。エネルギー省の原子力担当トップ、キャサリン・ハフ氏は最近、ワシントン・エグザミナー紙に、バイデン政権は原子力エネルギー生産に不可欠な国内ウラン濃縮を強化し、ロシアの供給への依存度を引き下げることにも重点を置いていると語った。

 カリフォルニア州と同州の民主党指導部は方針を転換し、唯一の原子力発電所を延命させる法案を承認した。予定されていたディアブロ・キャニオン原発の閉鎖が数年にわたり電力不足を引き起こすと懸念されたのだ。

 ダイアン・ファインスタイン上院議員(カリフォルニア州選出)は、サクラメント・ビー紙に最近寄稿した「カリフォルニア州のディアブロ・キャニオン原発について考えを改めた理由」というタイトルの論評で、州は自然災害の「来るべき猛威に対抗するためにあらゆる手段を検討しなければならない」と主張した。

 「カリフォルニア州が州法の定めるクリーンエネルギーへの移行をリードするためには、少なくとも当面はディアブロ原発を稼働させ続けなければならない」と、ファインスタインは書いている。

 原発に対する国民感情は若干変化しているが、国内では依然、大きく二分されている。

 2021年5月のピュー・リサーチ・センターの世論調査では、47%が原子力エネルギーの拡大に反対していた。今年1月のピュー調査では、26%が原発に反対し、中立の立場は37%と増えている。

 米国では5月時点で、28州で54の原子力発電所、92基の原子炉が稼働している。米エネルギー情報局によると、原発の平均稼働年数は40年。1990年以降、原子力発電は全米の年間発電量の約20%を占め、二酸化炭素を排出しない電力の約半分を占めている。

 バイン氏によると、米国は過去8年間で、13基の原子炉から10ギガワット以上の原子力発電を失っており、これは500万戸以上の家庭を二酸化炭素を排出せずに賄う能力に相当するという。

 「原子力エネルギー研究所」のダグ・トゥルー副所長兼首席原子力担当官は、「インフレ抑制法」と呼ばれる民主党の税制・気候対策計画におけるインセンティブは、「原子力を再生可能エネルギーと同じ土俵に乗せる」ことになると指摘した。

 「原子力は24時間365日、信頼できる電力を供給できるツールの一つだ。過去50年にわたり、再生可能エネルギーや蓄電でさえ困難な方法で実証してきた」。トゥルー氏は米エネルギー協会が主催した最近のイベントでこう語った。

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