ラストベルトの有権者は、トランプ氏を熱烈に支持

(2022年9月22日)

2022年9月17日(土)、オハイオ州ヤングスタウンでの選挙集会で演説する、オハイオ州の米上院議員候補であるJ・D・バンス氏は、ドナルド・トランプ元大統領に付き添われている。(AP Photo/Tom E. Puskar)

By Seth McLaughlin – The Washington Times – Sunday, September 18, 2022

 【オハイオ州ヤングスタウン】ドナルド・マリー、リンダ・マリー夫妻は、39回目の結婚記念日を思い出に残るものにしようと考えた。

 2人は、ドナルド・トランプ前大統領を初めて直接見るために、1時間以上車を走らせ、延々と続く列で待ち、厳しいセキュリティーチェックをすべて乗り越えた。

 17日、オハイオ州ヤングスタウンでのトランプ氏の集会に先立ち、結婚記念日にここに来たいきさつを一緒に並んでいた人々と共有し、トランプ氏はこの国が抱える困難を解決できると話した。

 障害がある子供の面倒を見る仕事をしているリンダさんは、「私たちは米国民でなければならないし、団結しなければならない。トランプ氏は正直の象徴であり、誠実の象徴であると思う。もし私たちが力を合わせなければ、この国を私たちの子供や孫に残してあげられなくなる」と述べた。

 「この素晴らしい国で育つことはすごいことであり、子供や孫のためにそれを失いたくない」

 トランプ氏が共和党全国大会に対して、そして彼がどのような大統領になるかを不安な思いで見つめていた世界に対して、自分だけが物事を解決できると語ってから6年、支持者らは依然、その約束を信じている。

 それは、特にオハイオ州東部で顕著だ。オハイオ州東部は、おそらくトランプ氏が描くこの国の縮図であり、「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」として、急速に変化する世界の中でアイデンティティーを確立しようと苦悶している。

 20年前、この地域は保守的な労働者階級が多かったが、民主党支持が強かった。しかし、州の他の地域とともに、大部分が共和党に傾いた。オハイオ州は2回の選挙でオバマ大統領を支持したが、2016年と2020年には8ポイントもの差でトランプ氏に軍配が上がった。

 トランプ氏は1972年以来初めて、ヤングスタウンのあるマホニング郡を制した共和党候補で、どちらかといえば、国家機関への不信が深まり、文化が変化し、犯罪が増加し、インフレが猛威を振るう中、前回の選挙から2年の間に、いっそうトランプ氏への支持は強固なものになった。

 ここの人々は、フロリダ州のロン・デサンティス知事の移民をマーサズビニャードに運ぶ決定を歓迎し、今月初めにバイデン氏が行った、トランプ支持者とトランプ氏を、民主主義の存在にかかわる重大な脅威と断じる演説を非難している。

 ペンシルベニア州セネカから妻のスーさんと車で1時間以上かけてやってきたドン・エレラさんは「民主主義を救おうとしているのは私たちだけだと思う」と述べた。

 インディアナポリス郊外から5時間以上かけてやってきたキム・セントクレアさんは、バイデン氏の発言について聞かれ、目を丸くした。

 最近、新型コロナウイルス・ワクチンの接種を迫られ、製薬会社を退職した62歳の彼女は「私たちは腐敗した政府にとって脅威だ」と述べた。

 トランプ氏はフィラデルフィアの独立記念館でのバイデン氏の演説後初の集会で、バイデン氏に対して、連邦政府の「凶悪犯と暴君」は「眠れる巨人を目覚めさせたことを全く理解していない」と警告した。

 州の失業対策局の責任者だったエレラさんは、その眠れる巨人についてこう話した。

 「トランプ氏に投票する人たちは、共和党支持だろうが民主党支持だろうが関係なく、ジョー・バイデン氏が国を破壊しているから出馬したという人ならだれでも支持する」と述べた。

 トランプ氏とその支持者は、救世主との比較をよく行う。

 実際、彼の集会は「アメリカを救え」ツアーと呼ばれ、17日の集会では多くの聴衆が天に向かって手を上げて終了した。これは、キリスト教の復活を意味する。

 船舶用エンジントランスミッションの販売会社で地域マネジャーを務めるマリーさんは「もしトランプ氏が幸運にも(ホワイトハウスに)戻ることができれば、もしかしたら、それは国の目覚めになるかもしれない」と言う。

 トランプ氏の忠実な支持者らは、彼が2024年の大統領選に出馬すれば、間違いなく彼を支持すると言う。また、もし出馬しなくても、トランプ氏のような強力な候補者が現れるだろうとも考えている。

 連邦捜査局(FBI)がトランプ氏の自宅マールアラーゴを捜索して見つけたものを検察がどう扱うかについては様子を見たいという人もいたが、集会からは、民主党が2024年のトランプ氏の復帰を阻止する方法を必死で探していると考えられているという印象が強く伝わってきた。

 トランプ氏の支持者は、2016年民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏とバイデン氏の長男のハンター氏が法律違反の罪を問われていないことにも憤慨しており、それぞれ機密文書の取り扱いや外国政府との取引で起訴されなかったことは、連邦政府官僚がトランプ氏を追い落とそうとしていることの証拠だと主張している。

 トランプ氏の法的問題は、今回の家宅捜索だけではない。

 下院の特別委員会は、トランプ氏と、盗まれた選挙という主張が米議会議事堂への攻撃を扇動する上で役割を果たしたとの見方を示している。

 司法省も、同様の観点からトランプ氏を調査している。

 政治的には、トランプ氏が共和党の予備選で支持した政治経験のあまりない候補者らが、11月の上院制覇のチャンスを台無しにする恐れがあるとして、一部の共和党指導者から非難を浴びている。

 そのうちの一人はJ.D.バンス氏。ロブ・ポートマン上院議員が引退し、ティム・ライアン民主党下院議員が議席を奪い返すために強力な選挙戦を展開しているオハイオ州で共和党候補者として出馬している。もう一人は、ペンシルベニア州のメフメト・オズ氏で、共和党が保持する上院の議席を維持するために苦戦している。

 有権者は候補者自身には冷淡だが、トランプ氏には熱烈な支持を寄せている。

 毛皮の縁取りが付いた「トランプ24」の赤いカウボーイハットをかぶったケリー・ゴールディンガーさんは「トランプ氏が支持した一部の候補者らは、ミット・ロムニー氏らのようにつまらない候補だった。しかし、彼が支持した人々は、概して本当にいい候補者だった」と述べた。

 精神衛生上の問題を抱える成人のためのサービスコーディネーターであるゴールディンガーさんは、オズ氏が「名ばかりの共和党員(RINO)」にならないとは言い切れないが、トランプ氏は2016年に党から強い支持を得ており、少なからず余裕を持った戦いができていると語った。

 「『トランプ氏は私たちが喜ぶことを言っているだけなのか』という雰囲気もあり、トランプについては本当に確信が持てなかった。実績はなかったけれども、彼はただホームランを打った。やることなすことが、とにかくすごい」

 共和党の中で、今、最も権力を持つミッチ・マコネル上院院内総務は、17日の集会では歓迎されなかった。

 トランプ氏がマコネル氏の名を口にすると、観客は盛んにブーイングし、彼を「恥」と呼んだ。

 一方で支持者らは、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員を支持し、トランプ氏が主張する選挙妨害の熱心な支持者であるマイピロー社のマイケル・リンデルCEOと自撮りしようと群がった。

 リンデル氏の携帯電話は最近、コロラド州の投票機侵入の疑いに関する連邦捜査の一環として押収された。

 トランプ氏は、保守系トーク番組の司会者ヒュー・ヒューイット氏とのインタビューで、自分が起訴されれば、「大きな問題、大きな問題」が起きると述べている。

 リンダさんも同じ考えだ。

 「内戦が起きないことを神に願っている。願っているけれど、多くの人が怒るだろう」

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