制空権確保に失敗し、戦略的失態を重ねるロシア軍

(2022年10月2日)

2022年5月28日(土)にロシア国防省報道部が公開した配布写真で、ウクライナの非公開の場所での任務中にロシア空軍のMi-8ヘリコプターのボードに座って状況をコントロールするロシア人兵士たち。(ロシア国防省報道部 via AP)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, September 27, 2022

 地上では、ロシアとウクライナの軍隊は何年も続く可能性のある消耗戦の態勢にあるようだ。空では、ロシアはすでに敗北しているのかもしれない。

 ほぼすべての軍事専門家は、戦闘機や攻撃ヘリなどで圧倒的な数的優位に立つロシアが、2月24日の侵攻から数日でウクライナの領空を支配すると予想していた。しかし、米国や欧州から次々と投入される対空兵器や、ロシア軍司令官の大きな戦略的失態により、ウクライナの領空は依然、争奪戦が続いている。

 空軍戦略家や軍事関係者によれば、ロシアがウクライナの制空権確保に失敗したことは、この戦争で最大の衝撃の一つであり、ロシアが戦場でさまざまな失敗を犯す大きな要因となった。空域でのロシアの不手際が、戦闘初期におけるキーウへの地上攻撃の失敗につながったという。最近では、制空権の欠如がウクライナの反攻を許し、ロシア軍はハリコフなどの主要都市から追い出された。

 事態がすぐに好転する兆しはほとんどない。

 「ロシアが今後数カ月間で制空権を確立するチャンスはほとんどないと言える」。米国のある空軍戦略家は最近、ワシントン・タイムズ紙にこう語り、ロシア軍が制空権を用いて地上作戦の道を切り開く上で、いかにとてつもない失敗を犯したかについて率直な評価を下した。

 米欧州・アフリカ空軍司令官のジェームズ・ヘッカー大将は今月、戦争開始以来、ウクライナの防空体制が少なくとも55機のロシア軍機を撃墜したと述べた。情報サイト「グローバル航空戦力・ドット・コム」の数字によれば、これはロシア軍の全戦闘機の少なくとも7%に相当する。

 おそらくもっと重要なことは、ロシアが制空権確保に失敗したことで、ウクライナ軍の大砲や攻撃ドローンが前方に配置され、ロシア軍の地上部隊や車両に大打撃を与えたということだ。キーウとハリコフの戦いで、ロシア軍が制空権を確保していれば、大きな違いを生んだことは間違いないだろう。ロシア軍は自軍の部隊を防護し、空軍にウクライナの陣地に破壊の雨を降らせる自由を与えることができたからだ。

 専門家によれば、ロシアは装備不足に悩まされているわけではない。ロシアの侵攻部隊は、空域の支配に必要な戦闘機と防御システムを備えている。その中には、ウクライナの無人機が攻撃する前に妨害できる電子戦能力も含まれる。

 しかし、ロシア軍には、制空権の価値を予測できなかったことを含め、もっと深い問題があるようだ。

 「多くの人がロシア軍は米国や同盟国が行うような、攻撃精神と制空権の重要性に対する包括的な理解に基づく適切な航空ドクトリンを実行すると予想していた」。こう指摘するのは、デービッド・デプトゥラ退役空軍中将だ。「実際には、ロシアは西側諸国と同じ航空ドクトリンを持たず、同じレベルの訓練も受けていなかった。空が地上作戦をどう支援するかにのみ焦点を当てるという甚だしい無能さとひどいリーダーシップにロシア軍は悩まされている」

 デプトゥラ氏は、湾岸戦争の航空作戦と、2001年9月11日テロ攻撃に対するアフガニスタンでの初期航空攻撃を立案した。

 「ロシア軍はその全歴史において、戦略目標を追求するために航空戦力を使用したことがない。このため、航空戦力をどう活用するのが最善なのか分かっていない」と、現在はミッチェル航空宇宙研究所の所長を務めるデプトゥラ氏は指摘した。

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