バイデン氏、パンデミックは「終わった」、政権は対応に苦慮
By Alex Swoyer and Stephen Dinan – The Washington Times – Thursday, October 13, 2022
バイデン大統領が新型コロナウイルスのパンデミックは「終わった」と宣言したことで、政権側の弁護士らが苦境に立たされている。政権は、パンデミックに伴うさまざまな規制を擁護しているからだ。
バイデン氏が先月、CBSの「60ミニッツ」のインタビューでこの驚くべき発言をしたわずか数日後、連邦控訴裁判所の判事は、この発言が連邦政府の請負業者にワクチン接種を義務付けるという政権の現在の取り組みにどのような影響を及ぼすかを把握するよう求めた。
また別のケースでは、共和党が主導する州が、バイデン氏の学生ローン免除計画に異議を申し立てた訴訟の中で、この発言に言及した。バイデン氏は、猛威を振るうパンデミックが、この計画の要因の一つとしているからだ。
バイデン氏は、新型コロナをめぐる自身の方針を擁護しており、同じようなことがもっと起こると考えるべきだ。
新市民自由連合の上級弁護士、ジョン・ベッキオーネ氏は、「バイデン氏がこの種のことを言うと、訴訟当事者はそれを準備書面に入れてくる。政府の弁護士としては、裁判所に行って、大統領の発言とは違って、緊急事態だと訴えるようなことはしたくない」と述べた。
新型コロナワクチン接種義務に異議を唱える軍人を弁護してきたリバティー・カウンセルのマット・ステイバー会長は、法廷で必ずバイデン氏の言葉を政権への反論に使うだろうと述べた。
「バイデン氏はパンデミックは終わったと言いながら、今日に至るまで軍人にワクチンの注射を強制しているのだから、われわれはこれを訴訟で訴えるつもりだ。裁判所はバイデン氏の発言を考慮すると思う」
司法省はコメントの要請に応じなかったが、その弁護士の一人はすでにバイデン氏の発言に対処しなければならなくなっている。
第8連邦巡回控訴裁判所で行われている訴訟で下請業者へのワクチン義務化を擁護している司法省の弁護士、アンナ・モハン氏は、バイデン氏の発言に関するラビンスキ・スミス判事の質問に答えるのに苦労していた。
モハン氏は、疾病管理予防センター(CDC)は今でもワクチンを推奨していると述べた。モハン氏は、もし、この訴訟を審理している3人の判事団がバイデン氏の、パンデミックはワクチン接種を義務付けた1年前ほど猛威を振るっていないという見解を支持すれば、バイデン氏の拡大政策の抑制を指示し、この訴訟を下級裁判所に差し戻す可能性があると認めた。
政府の弁護士らも、特に移民関連の事件で、準備書面がドナルド・トランプ氏にとって裏目に出て、トランプ氏の発言をめぐって苦労するようになったことがある。
トランプ氏の発言やツイッターの投稿を、同氏に不利な証拠として使用した裁判官もいた。カリフォルニア州の連邦判事は、聖域都市を取り締まろうとする試みを抑制するためにトランプ氏の言葉を利用した。メリーランド州の連邦判事は、トランプ氏の三つのツイートのスクリーンショットを、同氏に不利な判決文に盛り込んだ。
バラク・オバマ大統領の発言も、特に不法移民の「ドリーマー」に関わる事件で逆手に取られた。オバマ氏は当初、若い移民を保護する権限はないと言っていたが、後に逆転し、DACAプログラム(幼少期に親などに連れられ米国へ不法入国した移民を強制送還の対象から外す救済措置)を創設した。
弁護士らは、政府の行動をめぐる法的手続きで、大統領の発言にどのような重みがあるべきかを議論しているものの、明確なコンセンサスは得られていない。
判事はトランプ氏の発言やツイートを引用したケースをいくつか取り上げたものの、最高裁は一般的に判決でのそのような取り組みには否定的で、政府の公式文書や行動を正当な根拠として見ている。
バイデン氏は、判事が彼のパンデミック発言に同じように取り組むことを望んでいるに違いない。
9月18日のインタビューでバイデン氏は、新型コロナはまだ難題である可能性があるが、日々の生活を支配するものではないと述べた。
「パンデミックは終わった。だが、まだ問題はあり、まださまざまなことに取り組んでいる。しかし、パンデミックは終わった。気がつけば、誰もマスクをしていない。みんなかなり元気なようだ。だから、変化しているのだと思う。これはその好例だと思う」
これは、バイデン氏の最高顧問である国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長の考えとは一致しない。彼は、米国の新型コロナは終わったと宣言することは「軽率」であり、バイデン氏の言葉は「問題」だと述べている。
バイデン氏のインタビューの3日後、第8巡回控訴裁のスミス判事は、バイデン氏の発言が、裁判で差し止められている政府下請業者に対するワクチン義務付けを復活させようとする政権の試みにどう影響するかを、司法省の弁護士モハン氏に質問している。
モハン氏は、義務化の決定が1年前であることを認め、判事が状況が変わったと判断する可能性があると述べた。
それでも彼女は、「CDCは最近、ワクチン接種が連邦政府の請負業者労働者にとって依然として高い予防効果があることを確認した」と述べている。
データはファウチ氏の指摘が正しいことを示唆している。
新型コロナの感染率と入院は減少しているが、専門家によると、世界中のデータが、今後また患者が急増することを示唆している。米国では7月以降、新型コロナによる死亡者数が1日平均400人を超える状態が続いている。
国民の行動は、バイデン氏の発言の正しさを裏付けている。交通量は、国がパンデミック以前の動きに戻っていることを示し、グーグルのモビリティートラッカー(国民が自宅、職場、店舗、交通機関で過ごす時間をプロットしたもの)は、過去5カ月間に事態が正常状態に落ち着いていることを示している。
新型コロナ政策をめぐる裁判では、バイデン政権の敗訴が相次いでいる。医療従事者へのワクチン接種の義務付けは生き残ったものの、大企業やほとんどの連邦政府職員への義務付けは、連邦政府請負業者への政策とともに停止された。
公共交通機関でのマスク着用を義務付けるCDCの規則は、この春に停止された。
バイデン政権は、交通機関のマスク着用とワクチンの義務付けを復活させるよう裁判所に要請している。
元司法省の弁護士で、現在はカリフォルニア大学バークレー校の教授であるジョン・ユー氏は、これらの政策のいくつかを維持するには、政権は健康上の危機を証明する必要があると指摘している。
また、裁判所はバイデン氏のインタビューでの発言よりも、公式の政策発表に重きを置くと予想されるという。
ユー氏は「政権の政策に反対する人々は、パンデミックが終わったというバイデン大統領の発言を重視することは間違いないだろうが、緊急事態に関しては、政府機関寄りの司法の姿勢を覆すことはできないだろう。連邦裁判所は、緊急事態が過ぎ去ったことを示す事実があったとしても、緊急事態に関する大統領の判断を覆したことはない。しかし、バイデン政権の弁護士は、口頭弁論で、緊急事態がまだ有効だと判事らを説得するのは難しいだろう」と述べた。