クジラ保護か風力発電か 環境保護団体を二分

(2023年2月2日)

2023年1月13日(金)、ブリガンタイン・ニュージャージーの海岸に漂着したハンプクジラの死体。ニュージャージー州とニューヨーク州に漂着したクジラの死体は、この1カ月余りで7頭目となり、海底での洋上風力発電所の準備が死者と関係があるのではないかと考える議員や環境団体から、一時的に停止するよう求める声が上がっている。(AP写真/Wayne Parry)

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Saturday, January 28, 2023

 米東部で、海岸に打ち上げられるクジラの死骸が急増したことから、洋上風力発電の建設工事が原因だとして中止を求める声が上がっている。風力発電推進派は、工事が原因ではないと主張、クジラの保護と脱化石燃料を訴える環境保護グループを二分する騒ぎとなっている。

 この1カ月以内で7頭のクジラの死骸が、ニュージャージー、ニューヨーク州の海岸に打ち上げられた。通常なら年間でその程度であり、異常な多さだという。

 これを受けてクジラの保護を求める環境保護団体が、ニュージャージー州のマーフィー知事に、洋上風力発電計画の中止を求めた。海底での圧搾空気を使った装置による衝撃など、タービン設置のための準備作業のために、クジラの回遊、捕食行動が乱れ、けがをしたり、海岸に打ち上げられたりしているとみているからだ。

 ニュージャージー州は、大規模な再生エネルギー計画を推進しており、マーフィー知事は風力発電計画の中止要求を拒否している。

 国家資源保護協議会(NRDC)、シエラクラブなどの有力環境保護団体も計画の推進を支持した。これらの団体は野生生物の保護にも取り組んできたが、風力発電による脱化石燃料、気候変動対策を優先した格好だ。

 それには、風力発電を支持する環境団体が、脱化石燃料のための基金から資金を受けているという事情もある。NRDC、シエラクラブは、2040年までの炭素排出ゼロを目指すニューヨーク洋上風力連合に風力発電企業と共に参加している。

 シエラクラブ・ニュージャージー州支部のラモスブソット支部長は、「証拠もなくクジラの死を風力発電のせいにするのは無責任」と主張した。

 一方、「海岸を守れニュージャージー」の広報担当、スザンヌ・ホーニック氏は、「クジラなどの哺乳動物が早死にしているのは、(工事のための)航行する船の増加、海底での音や測量が大きな原因」と主張、「科学的な調査と、開発に関わる政府機関の透明性」を求めている。

カナダ国防相、北部の防衛強化へ 温暖化で「新たな脅威」

(2024年05月14日)

バイデン政権の矛盾したエネルギー政策

(2023年09月20日)

風力への依存があらゆるコストを押し上げる

(2023年09月16日)

ネット・ゼロの幻想を暴く

(2023年07月29日)

電気自動車に新たな負担もたらす猛暑

(2023年07月24日)

バイデン氏の石油備蓄放出は意図的か

(2023年06月01日)

米環境保護局のCO2排出規制で停電リスクが増大

(2023年05月22日)

下院共和党、エネルギー法案を可決へ

(2023年04月06日)

ロシアの原油離れ欧州で加速、米国へのシフト進む

(2023年04月02日)

ネバダ州のリチウム鉱山、10年に及ぶ法廷闘争を経て着工

(2023年03月13日)
→その他のニュース