ベトナム、映画「バービー」の上映禁止 親中映像に反発

(2023年7月7日)

2023年7月3日月曜日、韓国ソウルで行われた映画『バービー』の記者会見に先立ち、メディアの前でポーズをとるマーゴット・ロビー。この映画は7月19日に韓国で公開される。(AP Photo/Lee Jin-man)

By Bill Gertz – The Washington Times – Monday, July 3, 2023

 ベトナムの共産政権は、公開予定だった映画「バービー」のワンシーンで、中国が主張する南シナ海の領有を示す地図が登場するとして、国内での上映を禁止した。ベトナムの国営紙トイチェが発表した。

 ワーナー・ブラザーズが配給するこの映画には、中国の「九段線」(中国が領有を主張する南シナ海の海域を囲む境界線)を示すシーンが登場する。

 バービーは人気のバービー人形を題材とし、ベトナムでも大々的に宣伝され、7月21日にベトナムで公開される予定だった。

 この作品は同日、米国でも公開される。ワーナー・ブラザースの広報担当者に電子メールでコメントを求めたが、返答は得られていない。

 トイチェによると、外国映画のライセンスと検閲を担当する政府機関、映画局のビ・キエン・タイン局長は、「米映画『バービー』にベトナムで公開するライセンスを与えない。九段線の画像が使用され、問題があるからだ」とその理由を述べている。

 ベトナムは以前にも、中国の領有の主張をめぐる海上での対立を描いた同様の映画やテレビシリーズを上映禁止にしたことがあり、2019年にはドリームワークスのアニメ映画「アボミナブル」、昨年はソニーの「アンチャーテッド」が上映禁止になった。

 ベトナムなど東アジア各国は南シナ海を領有問題を巡って神経質になっており、この映画になぜ中国の主張を支持する映像を盛り込んだのかは明らかになっていない。考えられる有力な理由は、14億人の潜在的なチケット購入者を持つ中国映画市場へのアクセスだ。

 海軍大学院が発表したモーガン・マーティン、クリントン・ウィリアムソン両陸軍少佐の報告によると、中国の市場支配力はハリウッドの映画界に影響を与えており、中国政府は世界的覇権を目指す戦略の一環として、共産主義プロパガンダを拡散させるために米映画を利用している。

 報告は、ハリウッドが数年前、世界最大規模の中国の映画産業と経済的な結びつきを築き、その結びつきが中国共産党の影響力行使に利用されている指摘している。

 両少佐は「その結果、中国の映画スタジオは、米国映画の内容を変更するのに必要な影響力を手に入れ、一方で米国の映画スタジオは、中国の機嫌を取るために自己検閲を余儀なくされている」と結論づけている。

 また、ディズニー社が中国の物語を基にした2020年の映画「ムーラン」のリメイクで中国当局と緊密に協力したことも指摘している。

 ソニー・ピクチャーズも中国政府の圧力に屈し、2014年の映画「ロボコップ」と2012年の映画「レッド・ドーン」の内容を変更した。

 しかしソニーは昨年、「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」のワンシーンから自由の女神像を削除するよう求める中国の検閲当局の要求を拒否した。スタジオ幹部は、中国での収益に期待をしてはいたもののの、クライマックスシーンの変更を拒否した。

 ベトナムは少なくとも10年前から、パラセル諸島をめぐって中国と対立している。2016年、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、2013年にフィリピンが提訴した裁判で、南シナ海の90%を所有しているという中国の主張を退けた。

 同裁判所は、「中国が『九段線』に含まれる海域内の資源に対する歴史的権利を主張する法的根拠はない」との判決を下した。

 中国政府はこの判決を拒否し、南シナ海の大半は自国の主権が及ぶ領土、領海だと主張し続けている。

 ベトナムは、パラセル諸島が国連海洋法条約で定められた排他的経済水域内(EEZ)にあると主張している。同条約は、各国が自国の海岸から12カイリ(約22㌔)を領海と主張できると定めており、島は含まれるが、岩や水没地は除外される。

 EEZは海岸から約200マイル(約320㌔)までで、漁業、採鉱、深海資源などの採取に使用できる。

 米海軍はほぼ毎月、南シナ海を艦艇を通過させることで、領有を主張する中国を牽制している。

 米国防総省によれば、中国は2012年から南シナ海の島の埋め立てを開始し、現在では推定3200エーカー(約13平方キロ)の係争中の島々の領有を主張している。島の一部は、空軍基地とミサイルで軍事化されている。

 2022年7月11日、アントニー・ブリンケン米国務長官は声明を発表し、中国に対し、国際法上の義務を順守し、挑発的な行動をやめるよう促した。

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