女子更衣室に「男性」 水泳選手の抗議に法律の壁
By Valerie Richardson – The Washington Times – Thursday, July 13, 2023
トランスフォビア(トランスジェンダー嫌い)というレッテルを貼られることを恐れて、生物学的男性の女子ロッカールーム使用に反対することにちゅうちょする女子がいる一方で、アビゲイル・ウィーラーさん(16)は毅然と声を上げた。
水泳選手のアビゲイルさんは今、女性選手のプライバシーと安全が損なわれていると訴えている。イリノイ州スプリングフィールドにあるYMCAで、成人男性が女子更衣室で着替えをしていたことに強く抗議したことから、所属していた水泳チームから追い出され、出入り禁止になったためだ。
アビゲイルさんは13日、YMCAの建物近くで記者会見を行い、「生物学的な男性が、私や未成年のチームメイトと同じ空間で服を脱ぐことが許されていることに不快感を覚えた。だが、私の気持ちが否定されただけでなく、水泳チームからも外された」と主張。
さらに、「私の体験談が、親、将来の親、コーチ、教会、YMCAのメンバーに届くことを願っている」と訴えた。
この話題は各地に広がっている。他の女性水泳選手、「独立女性フォーラム(IWF)」、イリノイ州自由議員連盟の共和党州議会議員らが、アビゲイルさんとウィーラー一家のもとに集まり、YMCA関係者を非難した。
クリス・ミラー州下院議員(共和)は、「YMCAの責任者である大人たちは、彼女の味方であるべきだったし、真実と論理と常識の側に立つべきだった。ロッカールームにいる少女や若い女性を守るべきだった。ところが、彼らは若い女性の安全や安心よりも、急進左派の政治的アジェンダに同調する方を選んだ」と述べた。
妻のメアリー・ミラー下院議員(共和、イリノイ州)は13日、YMCAに対し、決定を撤回し、アビゲイルさんとその家族に謝罪するよう求めた。
メアリー氏は下院本会議での演説で「YMCAの指導者らは、成人男性が少女たちの前で露出することを許すような左翼的で過激な政治的イデオロギーではなく、少女たちの安全とプライバシーを優先すべきだ」と訴えた。
一方、YMCAは、アビゲイルさんがチームから追い出されたとか、施設の使用を禁止されたとかという事実はないと主張している。
YMCA側はイリノイ州ディケーターのテレビ局WAND-TVに投稿した6月2日の声明で、「それに加え、トランスジェンダーのメンバーはイリノイ州法の下で保護され、自身が認識している性別のトイレ/ロッカーを使用することが認められている。この法律はまた、使用する更衣室を指定することは差別にあたるとしている」と強調した。
YMCAスプリングフィールドの広報責任者ルー・バート氏は13日、「この水泳選手が追い出され、水泳チームに参加できなくなったという非難は事実ではない。この選手の家族が、YMCAを退会し、水泳チームにも参加しないことを、電子メールを通じてYMCAに通告してきた」と述べた
バート氏は、YMCAは「すべての会員のために更衣スペースとトイレについて、複数の選択肢」を提供していると述べた。
アビゲイルさんは、一部で報じられているように、服を着ていない人や性器を露出している人を見たわけではないとしている。YMCAは「子供の前で成人男性が性器を露出した」という発言は虚偽だと述べた。
YMCAは声明で、「このような通報があれば、文書化され、当局に報告され、調査されるはずだ。YMCAは子供の保護に真剣に取り組んでいる」としている。
だが、女性を自認する成人男性と女子更衣室を共有することになったのは、アビゲイルさんが初めてではない。
姉のケイトリン・ウィーラーさんは、2022年の全米大学体育協会(NCAA)ディビジョンI水泳選手権にケンタッキー大学の選手として出場した。この選手権で、ペンシルベニア大学のリア・トーマスさんがNCAAディビジョンI女子で初の生物学的男性選手として優勝した。
ケイトリンさんは、妹の状況を「腹立たしく、失望した」と語った。ケイトリンさんのチームには、元水泳選手でIWFの広報担当ライリー・ゲインズ選手も所属していた。
ケイトリンさんは、「私の家族が今までに、まったく別の、互いに関係ない事例に2度遭遇したということだ。私たちが最初でもなければ、最後でもないことは分かっている。何かがなされなければならない」と悔しさをにじませた。
アビゲイルさんは、4月27日にロッカールームにいたとき、更衣室のベンチに男性がいるのに気づき、「怖くて動揺した」と話している。YMCAの職員とコーチに知らせたが、コーチは「できることは何もない」と言ったという。
アビゲイルさんは「生物学的な男性が女子更衣室で着替えていることをいつから知っていたのかとコーチに尋ねると、笑われ、トランスジェンダーは以前からその辺にいると言われた。それに対し私は、そんなことを聞いているわけではないと言って、質問を繰り返した」と述べている。
彼女とチームメイトは、ロッカールームに「女性の権利」「生物学的女性のみ」「安全なスポーツ」というメッセージを書いた貼り紙を掲げて、他の女子選手や女性に警告することにした。
アビゲイルさんによると、翌日の練習で、コーチとYMCA職員が「女子チームを呼び出し、女子ロッカールームに憎悪に満ちたメッセージが掲げられていると言った。これらはヘイトスピーチであり、差別的であり、失礼だと言われた」。
アビゲイルさんとチームメイトは、このメッセージを掲げたことを認め、女性であることを自認する男性を女性ロッカールームに入れるという方針は、YMCAのキリスト教的価値観と矛盾していると主張している。
アビゲイルさんは「彼(コーチ)は、私たちがチームと一緒に練習する資格はなく、YMCAが私たちの家族に連絡すると言って、家に帰された」と話した。
会見では、ペンシルベニア大学の水泳選手だったポーラ・スカンランさんも発言し、YMCAに方針を見直すよう求め、「女性のロッカールームに男性の場所はない。特に未成年の場合は男性が入ることを許すべきでない」と訴えた。
スカンランさんはまた、ライリー・ゲインズさんの声明を読み上げ、なぜ女性たちは「男性の前で服を脱ぎたくないということに罪悪感を感じさせられ、男性の裸を見せられなければならないのか」と問いかけた。
その上で「なぜ私たちは、単にスポーツでの公正さと機会均等を望むだけで、トランスフォビア呼ばわりされるのか。なぜもっと多くの女性、特にこのような問題に直接影響を受ける女性アスリートが声を上げないのかといつも言われるが、これがその理由だ。ヘイトのレッテルを貼られたくないからだ」と訴えた。