NATO・アジア太平洋が同盟強化 中露は反発

(2023年7月18日)

左からオーストラリアのアンソニー・アルバネーゼ首相、日本の岸田文雄首相、ニュージーランドのクリス・ヒプキンス首相、韓国の尹錫烈大統領。2023年7月12日水曜日、リトアニアのヴィリニュスで開催されたNATO首脳会議で、北大西洋理事会のパートナー国との会合に出席。(ポール・エリス/プール・フォト via AP)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Thursday, July 13, 2023

 リトアニアのビリニュスで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、アジア太平洋地域の首脳らが欧州の首脳らと交流するのを見て、米国の戦略家らは祝いの葉巻に火をつけたかもしれない。

 この首脳会議で、ウクライナで起きている戦争やスウェーデンのNATO加盟の行方など、身近な問題にメディアの注目が集まるのは避けられないが、西側の軍事同盟であるNATOの会合に東アジアの主要な民主主義国が参加したことは、ユーラシア大陸の両側の米国と同盟関係にある民主主義諸国が結束を強めていることの表れであり、大きな変化を予感させるものだった。

 オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国のアジア太平洋4カ国(AP4)の首脳は、2年連続でNATOの年次首脳会議に出席した。日本と韓国の軍事力は、米国の軍事力評価機関「グローバル・ファイヤーパワー」の最新の調査(2023年)でともに世界のトップ10にランクインしている。

 ホスト国もゲスト国も、両者の連帯の重要性を強調している。

 岸田文雄首相は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するため、NATOやその加盟国、パートナー諸国と引き続き協力していく」と述べた。また、韓国の尹錫悦大統領は、「今日の超接続時代において、欧州の安全保障をアジアの安全保障と切り離すことはできない」と強調した。

 NATO首脳は、会議の最終コミュニケの中で、「インド太平洋地域の発展は、欧州と大西洋の安全保障に直接影響を及ぼす可能性があることから、インド太平洋地域はNATOにとって重要である。われわれは、この地域のパートナーの貢献を歓迎する。われわれは、共有する安全保障上の課題に取り組むため、対話と協力をさらに強化していく」ことを明確にした。

 NATOとインド太平洋諸国を結ぶ相互防衛条約はない。しかし、広大な大陸をはさんで共通の基盤を見いだす一方で、米国の主要敵対国である中国とロシアは強く反発している。

意図せざる結果

 皮肉なことだが、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が関係を深めたことで、両国に対抗する東西の連合の構築が加速した。

 ソウルの韓国外国語大学で国際政治学を教えるジョエル・アトキンソン氏は、「中露が(ウクライナ侵攻の)少し前に『制限のないパートナーシップ』を発表したことで、ユーラシア大陸の両端で連合が強化され、バランスを取った」と指摘した。

 ビリニュスでの出来事は、米国との軍事同盟を結ぶ北米、欧州、インド太平洋の先進民主主義国のネットワークが一つになりつつあることを示している。米国が主導する世界秩序が、冷戦後、最も深刻な経済的・政治的な困難に直面し、東西の双方が発展途上国や非同盟諸国に働き掛ける中で、反動が起きようとしている。

 トロイ大学の国際関係学教授ダニエル・ピンクストン氏は、「リベラルな世界秩序への対抗はより深刻になっている。そのため今、民主主義諸国は、権威主義的体制に対するある種の反動として、団結したり、協力したりしているのだと思う」と述べた。

 だが、この「反動」への熱意の度合いはさまざまだ。ハンガリーは依然として独自のスタンスを取り、フランスは日本にNATO事務所を設置することに反対している。

 しかし、民主主義諸国の連帯は、ユーラシアの権威主義的大国間の連帯より強固に見える。中国は「無制限」のパートナーシップを表明したものの、今のところロシアへの兵器の提供を拒否しており、イランがロシアの枯渇した兵器庫を満たす唯一の「友人」となっている。

 米国は大西洋と太平洋双方に本格的な軍を配備している唯一の大国だが、フランス、ドイツ、オランダ、英国は近年、空母艦隊、ジェット戦闘機、地上部隊を派遣、アジアのパートナー国と演習を行った。

 欧州の遠征部隊は、中国や米国が展開する部隊に比べればはるかに小規模だが、外交、技術、サイバー、宇宙など、地理的な制約を受けない領域では、それ以上に有望な協力の道が開かれている。

 また、米国と個別に結んだ同盟関係により、東と西の民主主義国家は同じNATO規格の武器、弾薬、部品を使用することが多くなっており、武器の共同生産、武器売却、装備の相互運用性の向上が可能となっている。

西が東を歓迎

 首脳会議ではかつてないほどの東西の緊密な関係がアピールされたが、メディアの露出はそれほど多くはなかった。

 NATOのストルテンベルグ事務総長は首脳会談に参加した岸田外相との個別会談で「日本ほど緊密なパートナーはいない」と語った。

 日本は24万人の職業軍人を擁しており、憲法上の制約が緩和されるにつれて、東アジアの紛争地域への派遣が可能になってきている。そして、大規模で効果的な海軍力の構築を着実に進め、大規模な水上艦、潜水艦部隊を擁し、戦闘機F35を搭載した2隻の軽空母の運用を開始する。

 日本の部隊は、米国だけでなく、「クアッド」のメンバーであるインドやオーストラリア、さらには英国、戦略的要衝にあるフィリピンなど、地域内のパートナー国との演習を増やしている。日本の軍需企業はウクライナに兵器を供給していないが、イタリア、イギリスと共同で次世代ステルス戦闘機の開発に取り組んでいる。

 首脳会議で日本とNATOは、「国別適合パートナーシップ計画(ITPP)」に署名した。この計画のもとで、海洋安全保障、新興技術、サイバースペース、宇宙、偽情報など16分野での協力を強化する。

 55万5000人の兵力を擁する韓国は、AP4で最大の軍隊を保有している。しかし、その大部分は、分断され、重武装された半島で北朝鮮を抑止するために配置されており、その大部分が徴兵による兵力であるため、自国から遠く離れた地域への派遣は難しい。

 しかし、ソウルの兵器産業はウクライナ戦争で急成長した。控えめに見積もっても150億ドルという大規模な軍事装備品がポーランドに売却され、ポーランドはそれら装備品の一部を製造する。この取引によって、戦車、自走砲、ロケット砲、戦闘機が供給され、NATOの東側の防衛が強化される。同時にポーランドがウクライナに中古の装備を送ることも可能になる。

 さらに、韓国はウクライナに直接、兵器を供給することを拒否しているが、自国の備蓄から50万発の155ミリ砲弾を米国に「貸与」している。それによって米国は自国の備蓄を、ロシア占領軍に対する攻勢を進めるウクライナに供給することが可能になっている。

 首脳会議では、韓国とNATOはテロ対策、核不拡散、新興技術、サイバー防衛、軍需産業など11分野をカバーする独自のITPPに署名した。

 日本と韓国に比べ、オーストラリアとニュージーランドは最小限の軍隊しか持っていない。しかし、有能な軍隊を持ち、豊富な遠征経験を誇っており、南太平洋での中国の影響力に対抗する上で重要な役割を担っている。両国はまた、ウクライナに装備と訓練で支援している。

 オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は欧州滞在中、ドイツに軽装甲車を供給する協定に署名し、ウクライナへの追加供与を約束した。ニュージーランドのクリス・ヒプキンス首相は、気候変動、サイバー防衛、新技術に関する協力でNATOと合意した。

持続可能か

 NATOのコミュニケはロシア非難を避ける一方で、中国の「露骨な野心と強圧的な政策は、われわれの利益、安全保障、価値観に対抗するものだ」と述べている。また、中国は「宇宙、サイバー、海洋の領域などで、ルールに基づく国際秩序を破壊する」ことを目指していると主張している。

 この主張に中国は強く反発し、「国境の外の問題に干渉」しないようNATOに警告。中国政府の報道官は、「NATOのアジア太平洋地域への東方進出に断固反対する」と述べた。

 それでも、NATOと東アジアの民主主義パートナー国との間の協力と協調を強化する傾向は「強まる」とアトキンソン氏はみている。

 「この傾向は、ロシア・中国連合の力がピークに達するか、あるいは分裂が起こるまで続く。その場合、欧州とアジアのそれぞれの連合は、それぞれの主要な敵対勢力と対峙し続けるが、ユーラシア大陸を挟む結束は弱まる」

 どこまで協力が進むかは未知数だ。

 ピンクストン氏は、「世界の政治と国際安全保障で、(オーストラリアに英米の原子力潜水艦技術を提供する安全保障の枠組み)AUKUS(オーカス)のようなものが出てくる。このような単発的で、個々のケースに応じた事例を目にすることになる」と予測している。

 米国は今後も、自国の利益と同盟のバランスを取るという課題に取り組みながら、その一方で、必ずしもしっかりと把握しているわけではない欧州やアジアの問題に対処していくことになる。

 アトキンソン氏は、「米国は、それが恩恵ではあるが、単純ではないことにいずれ気づく。中国とロシアが主導権を握っている。これは米国がペースを自由に決められないことを意味する。例えば、バイデン政権は中国との競合を緩和させようとしている。これは欧州にとっては望ましいことだが、インドは、米国がどこまで融和姿勢を取るのか懸念している」と述べた。

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