CIA長官、中国でスパイ一斉摘発認める 一部は処刑も
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, July 20, 2023
中央情報局(CIA)は、10年以上前に中国で壊滅的な打撃を受けたスパイネットワークの再建に取り組んでいる。バーンズ長官が20日、明らかにした。
コロラド州で開催された安全保障フォーラムで講演したバーンズ氏は、2010年に始まったと米当局が発表している、中国人などの情報員の喪失について質問され、CIA職員による裏切り行為と秘密通信システムの問題が重なったことが原因であることを明らかにした。
「進展があり、他の方法ではできないような、非常に強力なヒューミント(人的情報活動)能力を確保するために懸命に働いている」
人的情報活動を主導するCIAが、情報員の喪失を公に認めたのは初めてのこと。一方で、中国に対する米政府の注目は高まっている。
バーンズ氏は、アスペン安全保障フォーラムに出席した際、中国でCIAが採用した情報員のほとんどが逮捕または処刑された後、どのような措置がとられたのかについて語った。
台湾については、台湾をめぐる中国との戦争は差し迫ったものでも、不可避でもないというバイデン政権の従来の立場を繰り返した。
しかし、中国の習近平国家主席は、将来のある時点で台湾を掌握すると決意していると指摘、その一方で、中国の指導者は台湾を武力で掌握しようとするかどうかを決めていない可能性が高いと付け加えた。
ウクライナでのロシアの軍事的失敗も、台湾侵攻に関する中国指導者の思考に影響を与えているという。
「つまり、習近平国家主席と人民解放軍(PLA)指導部は今、許容範囲内のコストで台湾への本格的な侵攻を成功させられるかどうかについて疑問を持っているということだと思う」
マイクロソフト社が最近発表した米政府の電子メールアカウントのハッキングについてバーンズ氏は、米政府が最初に中国のハッキングを検知し、ソフトウエア会社に警告を発したと述べた。
10年前の情報員の喪失について、米国の情報・防諜当局者は、スパイネットワークの摘発は、中国の主要な情報・防諜機関である国家安全部によって行われたと述べた。
2010年から2012年にかけて、30人ものCIAの新情報員が中国国内などで国家安全部に拘束された。
この情報員の喪失によって米政府は、PLAが進めている過去最大規模の通常・核兵器の増強を監視することが困難になった。
正体が明らかにされた情報員の大半は投獄されたが、米情報機関は、中国の政府ビルの中庭に集まった警備員の前でCIA情報員が処刑されたケースを少なくとも1件、把握している。
情報機関筋が2019年に明らかにしたところによると、国家安全部は、情報ネットワークの知識を持つ人物を従来の方法で採用し、スパイ対策に使っていたが、情報員との通信に使われるセキュリティーレベルの高い通信システムも中国に侵入された可能性がある。
CIAのマーク・ケルトン元副長官(防諜担当)は、中国での情報員の喪失についてコメントを避けた。
しかし、調査に携わったケルトン氏は、中国の情報活動は「米国に対する秘密攻撃であり、1930年代から40年代にかけてソ連が行ったものに匹敵する規模だ」と述べた。
「中国は、情報活動の全領域にわたって、米国に対する攻撃を開始した。その作戦によって政府、貿易、企業の機密情報が盗み出され、米国は多大な損害を与えた」
米国に対する中国の情報活動は、核科学者を取り込み、核兵器庫に配備されたすべての核弾頭に関する機密情報を盗み出すなど、数十年にわたって成功を収めてきた。
中国軍は現在、核弾頭とミサイルの3倍化に取り組んでおり、戦略軍司令官はこれを「息をのむような」核増強と呼んだ。
他の情報筋によれば、情報員の喪失は2010年半ばに始まり、ネットワークからの情報の質が低下していることにCIAが気づいたという。
情報員の多くは、中国の体制に幻滅した当局者であり、CIAのためにスパイ活動を行い、共産主義体制の内幕の一部を明らかにすることに同意していた。
中国内の情報員を巡る懸念が生じ始めたのは遅くとも2010年末で、情報の流れが途絶え、情報員が信頼性の疑わしい情報を提供し始めていた。それは2013年まで続いた。
特別情報タスクフォースは、この問題を巡って二つの仮説を立てた。一つはCIA内部の中国の二重スパイ。もう一つは技術的問題だった。
最終的に連邦捜査局(FBI)とCIAは、この喪失の原因と思われる元CIA工作員を特定した。名前はジェリー・チュン・シン・リー、米国に帰化し、ゼン・チェン・リーとも呼ばれていた。
リーは香港のCIAの元作戦担当官で、複数の国家安全部当局者にスカウトされた。多数のCIA職員の身元とその人的情報源の身元を入手し、機密情報収集の作戦と方法の詳細も知っていた。
リーは2019年4月、スパイ行為の共謀罪を認め、懲役19年を言い渡された。
だが一部の防諜当局者は、情報員の喪失は通信が傍受されていたためだと考えており、情報員が逮捕されたスピードはリーの裏切りだけでは説明できないと述べた。
彼らは、新しい情報員に指示を出す際に使用されるインターネットベースの通信システムが、情報員と連絡を取るためのセキュリティーレベルの高いシステムに不適切に接続されていたと推論している。
このスパイネットワークは、潜入捜査に従事するCIA職員によって長年にわたって構築されたものだ。
CIAの情報員保護は散々なものだ。ソ連とロシアのスパイネットワークは1980年代と1990年代にスパイによって破壊された。
専門家らは、1975年にCIAの優れた防諜担当官ジェームズ・アングルトン氏が解雇された後、CIAの防諜活動が再編されたことが原因だと非難している。
アングルトン氏解雇後、CIAの防諜部門は独立した部門から外され、いくつかの部局に編入された。