「戦略的曖昧さ」の放棄は中国の台湾侵攻を誘発すると米国防総省
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, September 19, 2023
米国防総省高官は19日、米軍が中国の攻撃から台湾を守るかどうかの戦略的曖昧さについて、政策転換が中国による侵攻を引き起こす懸念から、維持する方針だと連邦議会で語った。
イーライ・ラトナー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は、台湾を巡る中国との戦争は、人命や経済的混乱の観点で「壊滅的」な影響をもたらすだろうと述べた。
この発言は、台湾への武器やその他防衛物資の提供の遅れに関する下院軍事委員会の公聴会で出たものだ。高まる中国の脅威に直面する台湾への米国による武器提供の遅れは、最大190億㌦分に上る。
「台湾への軍事援助のために主に依存してきた(対外兵器売却)プログラムは、明らかに破綻している」。同委員会のマイク・ロジャース委員長(アラバマ州選出)は、アジア政策を担当する政権幹部たちにこう語った。
ラトナー氏とミラ・レズニック国務次官補(地域安全保障担当)は公聴会で、台湾への米国製兵器の供給が遅れているのは、米軍事産業の責任だと証言した。台湾政府は、増加する中国機空域侵入への対応に用いられている旧式のF16戦闘機のスペアパーツや新型のF16戦闘機66機、ハープーン対艦ミサイルの納入を待っている状況だ。
レズニック氏は、ハープーンの供給は数年先であり、他の兵器も遅れていると証言した。軍事企業はすでに、ウクライナ戦争による需要で逼迫(ひっぱく)しており、兵器の迅速な生産に消極的だからだ。
ラトナー氏は委員たちから、中国の台湾攻撃に対して米国が長年維持してきた非公式姿勢「戦略的曖昧さ」や、中国の攻撃は米国と同盟国の軍事的対応をもたらすと米政府が明言すべきかどうかについて質問された。ラトナー氏は、現在の政策を変更することは、中国による侵攻リスクを高め、台湾を傷つけることになると述べた。
中国の習近平国家主席は、人民解放軍に2027年までに台湾侵攻を実行する能力を持つよう命じており、米国が台湾に兵器を売却する緊急性が高まっている。中国は民主主義の台湾を自国領の一部と主張している。
バイデン米大統領は戦略的曖昧さのアプローチに反し、中国が台湾に侵攻した場合、米国は軍事介入すると何度か発言している。だが、側近たちはほぼ即座に、大統領の発言を訂正してきた。
米国の対台湾政策は主に1979年に制定された台湾関係法に基づいており、同法は台湾を攻撃から守ることは確約していない。しかし防衛に関するいかなる決定も、大統領が議会と協議して行うとしている。
ラトナー氏は、戦略的曖昧さが何十年もの間、中国政府の軍事計画者たちに米軍が紛争でどう動くか分からないようにすることで、対中抑止に役立ってきたと語った。同氏は「この政策を維持することが決定的に重要だと考えている」とし、「政策転換すれば、準備ができていなくても中国の軍事行動を誘発する可能性がある」と述べた。
中国はいかなる侵攻に対しても米国の軍事的対応を予想し、介入に備えて自国の軍隊を訓練している。ラトナー氏は「彼らは米国が介入することを想定している」とし、「従って、さらなる抑止的価値を加え、戦略的曖昧さの立場を変える必要はないと考えている」と語った。
同氏はまた、政策転換は中国と台湾の現状維持という米国のコミットメントを揺るがすことにもなると主張した。