韓国で10年ぶり軍事パレードも北に及ばず
By Andrew Salmon – The Washington Times – Tuesday, September 26, 2023
【ソウル】韓国ソウル中心部で、10年ぶりに「国軍の日」を記念した軍事パレードが行われ、行進する軍靴の音と戦車のエンジン音が響きわたった。
北朝鮮の首都平壌では軍隊の大編隊はよく見られる。韓国は北朝鮮より豊かだが、軍や兵器をアピールするということに関しては後れを取っているようだ。
対北朝鮮強硬派で保守派の尹錫悦大統領が軍事パレードを復活させた。閲兵式では、4月にバイデン米大統領が発したものと同様の警告を発した。
「北朝鮮が核兵器を使用すれば、その体制は圧倒的な反撃によって終焉を迎えるだろう」
しかし、北朝鮮の金正恩総書記は少し安心したことだろう。貧しく孤立した北には、輸出品も世界的ブランドもソフトパワーもない。しかし、見事に演出されたパレードや巨大なミサイルの展示では、どの国と比べても引けをとらない。
ウオッチャーらは、韓国軍兵士の行進は、北朝鮮軍兵士よりはるかに劣っていたと指摘した。それは、韓国の徴兵の服務期間がわずか18カ月であるのに対し、韓国にとって潜在的敵国である北の兵士らは10年間も服務しているからなのかもしれない。
ミサイルの火力にも同様に差があり、登場する北のミサイルの数々は、韓国が26日に展示したものをはるかに凌駕していた。それでも、尹政権にとってプラスになることが一つあった。
ロシアによるウクライナ侵攻で、ソウルの軍産複合体は潤っている。この日のイベントでは複数のハイテク殺戮兵器が展示された。
雨で中止も
26日、戦争の神様はソウルのパレードに雨を降らせた。国旗を掲げる人々が沿道に並んだが、裕福な首都のそびえ立つ高層ビルから撮影された写真に写っている人の数はそれほど多くはない。
パレードには3700人の兵士らが参加したが、そのうちの多くは足並みがそろっていなかったという不満の声も聞かれた。
ソウルのパレードと、市外の空軍基地で行われた予行演習の両方を見たコンサルタント会社、コリア・リスク・グループのチャド・オキャロル最高経営責任者(CEO)は、「行進は、北朝鮮の兵士の正確さに比べると、練習のように思えた」と語った。
予定されていたヘリコプターと最新鋭ジェット戦闘機の飛行は雨のため中止となり、準備と軍事的な即応態勢についてさらなる疑問が生じた。
オキャロル氏は、「なぜ(中止になったの)かは分からない。こんな状態で実践に対応できるのか」と述べた。
オキャロル氏によると、ドローンの一部が以前の訓練で故障したため、今年の韓米特殊部隊による合同演習に参加しなかった。
かつて韓国の特殊部隊を率いた退役将官、全仁●(金偏に凡)氏は、北朝鮮軍が韓国軍よりも行軍がうまいのは、一つには、北朝鮮軍は兵役が長く、より多くの訓練を受けていることがあると指摘した。
韓国で退役した元米陸軍中佐のスティーブ・サープ氏は、「韓国の兵士は、兵役期間が短く、仕事を十分に習得できない。入隊して1年半もたたない軍曹がいる。私は36カ月で軍曹になった。1年半は早いと思う」と述べた。
尹氏はさらに、正恩氏が直面することのない民主主義の圧力に直面している。
サープ氏は「私は、徴兵期間を36カ月から18カ月に引き下げた政治家と母親たちを非難する」と述べた。
韓国の国力が衰えていると古参の人々は言う。
全氏は「私の時のように、全体主義体制下の方がうまくいっていた」と主張した。これは1987年に民主主義が再確立されるまで韓国を支配していた軍事政権のことだ。
サープ氏は、1960年代、1970年代、1980年代の徴兵は、現在の韓国の豊かな中産階級の若者よりもスパルタな生活をしていたと付け加えた。
全氏は「権威主義国家はパレードが得意だが、権威主義的でない国家では無理」であり、パレードでも計画にそれほどの時間はかけられないと指摘、「このようなことをするためには、軍隊に無理をさせる必要がある」との見方を示した。
歴史家でアドルフ・ヒトラーの軍隊の専門家でもあるダグラス・ナッシュ氏は、「権威主義国家は、近隣諸国だけでなく自国民にも力を誇示したがる。多くの注目を集めたがる」と述べた。
天候も北に有利に働いた。ソウルのパレードが午後、灰色の空の下で行われたのに対して、平壌のパレードは日が落ちてから始められ、松明で照らされたナチスの行進を思い起こさせる。非常に見ごたえがある。
「北は2020年10月から、(平壌の)金日成広場に大規模なスタジアム照明装置を新たに設置し、展示飛行、LEDライト、花火を行うようになった。美しさという点では昼間のパレードよりはるかに優れている」
しかし、いいパレードを行うことが、いい戦闘力を生むのかというとそうでもない。
米軍退役大佐のナッシュ氏は、ヒトラーの私的な親衛隊だったライプシュタンダルテ(第1SS装甲軍団)が、儀礼的な部隊からドイツで最も強力で残忍なパンツァー師団に移行した例を挙げながらも、近年は様相が全く異なると指摘した。
「パレードは見ごたえがあるが、戦闘能力にはつながらない。それはウクライナで見た通りだ。第1親衛戦車師団はロシアの重要なパレード部隊の一つだが、(戦場では)それほど実績を挙げていない」
武器市場
ソウルでのパレードには170もの兵器が参加したと言われているが、ミサイルに関していえば、北より見劣りしていた。韓国の通常弾頭搭載の中距離弾道ミサイル「玄武」は、平壌の巨大で核兵器を搭載可能な大陸間弾道ミサイル「火星」に比べると見た目ははるかに貧弱だ。
北朝鮮は同胞であるロシアと武器を交換する準備をしているかもしれないが、国連の制裁により、世界市場で武器を売ることはできない。しかし韓国はそうではない。ハイテク経済は成長しており、世界に新たな輸出先を見つけた。
韓国は無人機、戦車、自走砲などのシステムを展示し、2022年初頭にロシアがウクライナに侵攻して以来、武器売却が急増している。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2021年の韓国は世界の武器売却の2.8%を占めていたが、2年後には3.7%に上昇した。
ポーランドに大量の装甲車、火砲、戦闘機を売却し、総額は180億ドル以上と見積もられている。韓国はまた、枯渇した米国の在庫を補充するため、米国防総省に50万発の155ミリ砲弾を送った。