偽GPS信号で民間機に航行障害 イランが電子戦能力獲得か

(2023年10月4日)

ウィスコンシン州オシュコシュで開催されたAirVenture 2022で、持続可能な航空燃料(SAF)で飛行するボーイング777-200 ecoDemonstrator。(Thierry Weber/Shutterstock.com)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, September 28, 2023

 全地球測位システム(GPS)衛星からのデータを模倣した偽の電子信号によって、イラン付近を飛行する12機の航空機に深刻な航行障害が発生していたことが、民間の航空機セキュリティー機関「オプスグループ」の発表で明らかになった。

 オプスは、「航空路で厄介な事態が発生している。航空機が偽のGPS信号の標的となり、航行能力を完全に喪失した」と警告を発した。

 オプスの発表によると、イラク南東部をバグダッドに向かって飛行していたボーイング777がGPSを使用できなくなり、現在地を把握できないという事態が発生、パイロットが管制官に「今何時で、ここはどこだ」と問いかけたという。

 航空機が偽のGPS信号を受信する「成りすまし」の事例が見つかったのはこれが初めて。民間航空機へのGPS信号の妨害は、韓国付近や中東を含む他の場所でも過去に検知されているが、イラクでの事例は、過去の妨害とは異なっているという。

 報告によると、慣性基準システム(IRS)と呼ばれる最新鋭の航行システムが偽のGPS信号を受信した。IRSは、飛行中の航空機の時間と位置を更新するために、一定間隔で衛星から信号を受信するが、これまで、偽のGPS信号の影響を受けないとされてきた。

 偽のGPS信号は、航空機の実際の位置から110㌔から150㌔ずれた位置を示していたようだと報告書は指摘している。

 GPSの成りすましはこの地域では特に危険だ。航空機がイラン領空に迷い込んだ場合、撃墜される危険性すらある。

 事件が発生した地域は紛争地域とみなされており、旅客機はテロ攻撃を受ける危険性がある。それでも、欧州や中東の航空会社の航空機、プライベートジェット機などがこの空域を利用している。

 連邦航空局(FAA)と国際民間航空機関(ICAO)の広報担当者から、今回の事故についてコメントを得ることはできなかった。米中央軍の報道官もコメントを避けた。

 イラクのアルビル付近に加え、イラン北部、トルコ東部、アゼルバイジャンのバクー付近でも偽の信号が検知されている。

 報告された事例には共通する部分がある。飛行中、偽のGPS信号が航空機に向けられたり、搭載された航空電子機器が受信したりした。この信号により、航空機の位置が誤って表示された。偽の信号は、相反するデータでコンピュータを混乱させ、「航行障害」を引き起こしている。

 乗務員がGPS信号の受信を完全に遮断することで障害を防いだ事例もある。

 報告書によると、航空機は正確な位置情報を得るために、IRSをGPS信号で定期的に更新している。GPSが妨害を受けても、IRSは航空機が最後に把握した位置から現在地を割り出すことができる。

 報告は「しかし、成りすまし信号の位置を受信した場合、すべてのソースが同じことを『言う』ため、システムは受信したGPS信号が正確であると信じ、この成りすまし信号の位置に更新される」と指摘している。

 その結果、主要航行システムのすべてに障害が生じる。

 報告は、「(成りすましは)非常に危険な事態を招く可能性があり、パイロットが可能な限り『緑色の針』/地上の航法支援システムで航行システムを補うべきなのはそのためだ」と指摘している。

 報告書によると、最近起こったこれらの成りすましは、民間航空機の航行システムにのみ影響を及ぼす可能性があるという。軍用機は、欺瞞的な信号の影響を受けないように設計された特別なGPS受信機を採用しているためだ。

 報告は、民間の航空電子機器は、成りすましや妨害に対して脆弱だとしている。

 報告は、偽信号の発信源を特定しておらず、イラン付近とだけしている。これは、イランが民間機や外国のドローン(無人機)のような情報収集機を妨害するために高度な電子戦(EW)能力を開発した可能性を示唆している。

 イランの軍事力に関する国防情報局(DIA)の報告によると、イランは2017年に電子戦に新たに重点を置くと発表した。イラン国防省高官のシャフロック・シャフラム氏は2021年、国営IRNA通信に対し、イランは電子戦能力に関してはこの地域でトップであり、その年に電子戦システムの構築は5倍に増加したと語った。

 イランは少なくとも2機の電子戦用航空機を運用していることが知られている。電子戦用ポッドを装備したドローン「カマン12」と、電子戦用に装備されたボーイング707だ。

 ロイター通信によると、イラン国営テレビは先月、敵のドローン、戦闘機、ヘリコプターを模擬した電子戦演習を行った。海軍、陸軍、空軍、防空軍の部隊を使い、レーダー、ドローン、戦闘機、超小型機を駆使した演習だ。

 DIAは、GPS成りすましの事例は10件報告されており、「手法の巧妙さとIRSの予期せぬ『感染』という二つの理由から、われわれ全員が憂慮している」と指摘している。

 オプスは、チャーター機運航会社や大手航空会社のパイロットを含む会員制グループ。パイロットから12件の成りすましが報告されており、イランと平行に走るイラク東部の航空路に沿って過去数週間にわたって発生した。

 影響を受けた航空機は、ボーイング777、747、737、エンブラエル190、同600、ガルフストリームG650、ボンバルディア・チャレンジャー650、グローバル・エクスプレス、ダッソー・ファルコン8Xなど。

 これらの航空機のほとんどは、イランの西側国境に沿って南北に走るイラク領空の航路UM688を飛行していた。

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