米軍、フィリピンに新型長距離ミサイル配備 中国の主要都市射程に

(2024年4月21日)

1991年1月17日、ペルシャ湾にて、戦艦ウィスコンシンからイラクの標的に向けて発射されるトマホーク巡航ミサイル。日本の防衛費は来年、過去最高の6兆8000億円(550億ドル)に20%急増する。これは、より攻撃的な安全保障戦略の下、中国や北朝鮮の標的を攻撃できる米国製トマホークやその他の長距離巡航ミサイルの配備に備えるためだ。(AP Photo/John McCutcheon, File)。

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, April 17, 2024

 米陸軍は、フィリピンに長距離攻撃能力を持つ新型ミサイルシステムを配備した。米国がこの種のシステムを配備するのは、2019年に中距離核戦力(INF)全廃条約が失効して以来初めて。

 米太平洋陸軍のチャールズ・フリン司令官は、この新型システムの配備は「歴史的」であり、複雑で困難な環境に対処するために陸軍が変革を続けていることを明確に示していると述べた。

 フリン氏はワシントン・タイムズに、「最新の米陸軍長距離精密火器システムの計画、輸送、配備は、フィリピン軍をはじめとする同盟国とのパートナーシップのもと、安全で安定したインド太平洋の維持に貢献する」と語った。

 新システムは「中距離能力(MRC)ミサイルシステム」と呼ばれ、地域での中国との緊張が高まる中、合同軍事演習の一環として4月11日にC17輸送機でフィリピンのルソン島に運ばれた。

 太平洋陸軍の第1多領域任務部隊を率いるバーナード・ハリントン陸軍准将は、このシステムはフィリピンとの軍事同盟を強化する「重要な一歩」だと述べた。

 配備されたのは、「タイフォン」中距離戦略火器システム。指揮車とトラック牽引式発射台4基からなる。SM6対艦ミサイルまたはトマホーク対地巡航ミサイルを発射できる。

 どちらも、米軍の主力攻撃兵器だ。

 SM6は高速ミサイルで、3種類の攻撃能力を持つ。航空機、艦船、地上の標的を攻撃でき、弾道ミサイルの迎撃も可能、射程は最大で370㌔だ。

 トマホークの射程はさらに長く、最大2400㌔に達する。新型のトマホークは、目標上空で待機することができる。

 フィリピンのルソン島からトマホークを発射すれば、中国の首都北京以外の主要都市を含む中国南部全域を攻撃することができる。

 将来的にタイフォンは、極超音速誘導ミサイルの発射にも使用されると予想されている。

 1987年のINF全廃条約により、米国とロシアは射程500~5500㌔、地上発射の巡航ミサイルと弾道ミサイルの保有が禁止された。

 米国は2018年にこの条約から離脱した。ロシアが新型地上発射巡航ミサイルSSC8を配備し、条約に違反したためだ。

 インド太平洋軍の元民間防衛アドバイザー、エリック・セイヤーズ氏は、フィリピンへの新型ミサイルシステムの配備は重要だと述べた。

 セイヤーズ氏はX(旧ツイッター)で「わずか5年前、INF条約で違法になっていた(離脱したトランプ政権に感謝)。専門家らは、アジアの同盟国が配備を許さないだろうから開発すべきではないと主張していた」と語った。

 セイヤーズ氏は、離脱に批判的な専門家らは2018年、条約を離脱しても中国に対抗する上で何の影響もないと主張していたが、それは間違いだと述べた。

 「INF離脱を批判する人々が、離脱は間違いであり、米国の利益を危険にさらすものであり、どの同盟国もINFで禁止されている射程のシステムの配備を受け入れることはないから、いずれにせよ意味はないと自信満々に言っていたことを決して忘れてはならない」

 フィリピンへのトマホーク配備は演習のためであり、一時的だが、中国に戦略的メッセージを送ることになる。

 中国は、フィリピン海軍が艦船を座礁させ、軍事基地として使用しているセカンド・トーマス礁に向かうフィリピンの補給船の航行を妨害している。

 中国は、セカンド・トーマス礁があるスプラトリー諸島を自国領と主張し、フィリピンに座礁した船を撤去させようとしている。

 その一環として、中国海軍と海警局の船がフィリピンの補給船に放水、乗組員を負傷させた。中国船が補給船に体当たりした事件も2件あった。

 米陸軍は、「(新システムの配備は)新たな能力への重要なマイルストーンであり、フィリピン軍と連携して相互運用性、即応性、防衛能力を強化する」としている。

 ハリントン氏は「フィリピン軍のパートナーに感謝している。この新しい能力をルソン島に配備することで安全保障協力を拡大できることに興奮している」と述べた。

 「これは、2国間の訓練と即応態勢のためのいくつかの新しい協力の機会を創出するものであり、共に成長することを楽しみにしている」

 軍は、この地域で軍事的攻勢を強める中国に対応するため、通常兵器と核兵器を搭載した長距離ミサイルの配備を目指している。

 米シンクタンク、国際評価戦略センター(IASC)の上級研究員で中国問題専門家のリック・フィッシャー氏は、フィリピンへの初の長距離ミサイル配備について、INF条約離脱から5年近くもたっていると指摘。

 配備は陸軍の重要な成果だが、「10年遅れであり、脅威に対応するには少なすぎる」と強調した。

 「米国の情報機関は、中国が3800発の戦域(中距離)弾道ミサイルを保有しており、H6K爆撃機を3回出撃させれば、中国は2700発の陸上攻撃用巡航ミサイルを発射できる」

 「現在、陸軍が配備を計画しているタイフォンMRCミサイルシステムは8隊だが、世界中に197基の発射台を配備する必要がある」

 フィッシャー氏によると、フィリピンや台湾に対する中国の侵略、イスラエルへのイランの攻撃、韓国や日本に対する北朝鮮の威嚇、北大西洋条約機構(NATO)へのロシアの攻勢を抑止するためには、米国は年間数千発の戦域ミサイルを生産する必要があるが、生産は行われていない。

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