中国、保守勝利に慎重な反応―アルゼンチン大統領選

(2023年11月23日)

2023年10月18日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで行われた選挙集会で、大統領候補ハビエル・ミレイ(中央)、妹のカリーナ(右)、伴走者のビクトリア・ビジャルエルが抱き合う。11月19日の決選投票では、ミレイとビジャルエルのチケットがアルゼンチン大統領選に圧勝した。(AP Photo/Natacha Pisarenko)

By Kerry Picket and Guy Taylor – The Washington Times – Monday, November 20, 2023

 ドナルド・トランプ前大統領と議会共和党が、19日のアルゼンチン大統領選の決選投票で、扇動的なことで知られる自由主義保守派のハビエル・ミレイ氏が既成政党の候補者に圧倒的な勝利を収めたというニュースを祝う一方で、中国は20日、慎重な反応を示した。

 アルゼンチン選挙当局によると、ミレイ氏は投票率99.7%時点で55.7%を獲得し、セルヒオ・マッサ経済相の44.3%を上回った。1983年の民主化以降、大統領選で最も大差の勝利となった。

 選挙結果への反応は割れており、政界のアウトサイダーであるミレイ氏が今後、アルゼンチンに不安と混乱をもたらす可能性がある。既存の政治勢力が敗れる中、アルゼンチンはインフレ高進、景気の停滞、社会的問題の増加に直面している。

 トランプ氏は19日夜、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「ハビエル・ミレイ氏、おめでとう。素晴らしい大統領選だった。世界中が見ていた!

…あなたは国を立て直し、アルゼンチンは再び偉大になる」と投稿した。

 この日の夜、ブエノスアイレスのダウンタウンで行われた祝賀会には、アルゼンチン国旗と、ミレイ陣営の支持者らが使っている「踏みつけにするな」という言葉ととぐろを巻いた蛇が描かれた黄色いガズデン旗を振る支持者らがいた。

 マイク・リー米上院議員(共和、ユタ州)は、ミレイ氏の勝利とその政策は、あらゆる進歩主義者にとって「存亡の危機」と指摘、「もしアルゼンチンが政府を抑制し、縮小できる政府を選ぶことができるのなら、われわれにもできるはずだ」と訴えた。

 ミレイ氏は演説で自らをトランプ氏になぞらえ、集会にチェーンソーを持参し、政府の規模を縮小し、ペソを捨てて米ドルに切り替え、銃の規制を緩和することを約束した。また、学校での性教育、フェミニズム思想、中絶を批判した。

 元議員でテレビタレントでもあり、選挙期間中は激しい反共産主義的な主張を繰り出して、当選したら中国との関係を凍結すると訴えたこともあった。中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」でアルゼンチンに何十億㌦もの融資を行い、武器を販売する大口取引を交わし、中国軍が運用する深宇宙探査基地を秘密裏に開設した。

 中国は20日、ミレイ氏の勝利に慎重な反応を示し、勝利者を祝福し、緊密な2国間関係を維持すると述べた。

 中国外務省の報道官、毛寧氏は北京で記者団に対し、「アルゼンチンと協力し、友好関係を育み続け、ウィンウィンの協力を通じて互いの発展と繁栄に貢献する用意がある」と述べた。

 中国共産党機関紙系の環球時報は、冷静な見方を示し、ミレイ氏の勝利は「双方がより多くの共通の利益を見いだすまで、2国間関係はテスト期間に入る可能性があるため、中国との関係にいくつかの課題をもたらすだろう」とする専門家の意見を紹介した。

 バイデン政権もまた、アルゼンチンでの重大な変化を冷静に見ている。アントニー・ブリンケン国務長官は20日の声明で、選挙戦での「強固な民主的プロセス」を称賛。

 「人権と民主主義を守り、気候変動に対処し、中産階級を重視するなど、両国の国民に利益をもたらす共通の優先事項について、ミレイ次期大統領とその政府と協力することを楽しみにしている」と述べた。

 近年、アルゼンチンなど一部の中南米諸国で、中国が重要インフラへの投資を拡大していることに対し、米国の国家安全保障界で懸念が高まっている。

 米国防総省の南方軍を率いるローラ・リチャードソン陸軍大将は5月、下院軍事委員会で、中国は「権威主義を推進し、われわれの半球に存在する民主主義国家や新興民主主義国家を弱体化させ、権力と影響力を獲得する」能力を構築していると述べた。

 リチャードソン氏は最近では、中国がアルゼンチンの「宇宙インフラ」に投資していることを強調。アルゼンチンは現在、中国が管理する三つの「深宇宙基地」の一つを受け入れている。

 ミレイ氏の最高顧問であるダイアナ・モンディーノ氏も先月、この問題について質問され、この施設について懸念を表明した。

 モンディーノ氏は米ウィルソン・センター主催のイベントで、「もし本当に宇宙基地なら、なぜ秘密にしておくのだろう」と語った。一方で同氏は、ミレイ政権が中国との既存の協定を尊重することを示唆した。

 20日、米国の保守派の多くは、ミレイ氏の勝利によって、米保守派の理念と政策の正しさが証明されたと主張した。

 下院外交委員会西半球小委員会のマリア・エルビラ・サラザール委員長(共和、フロリダ州)は、アルゼンチンでの長年の権威主義的政治運動ペロン主義に対する自由の完全な勝利だと述べた。

 「バイデン政権はミレイ氏に敬意をもって接すると確信している。ミレイ氏はそれに値する人物だ。自由万歳」と声明で述べた。

 マイク・コリンズ下院議員(共和、ジョージア州)も、ミレイ氏の圧勝を歓迎した。

 コリンズ氏は「中南米の社会主義に対する自由と民主主義の勝利の最初の一歩となることを期待する」と述べた。

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