「十分な説明受けないまま性転換」訴訟が急増
By Valerie Richardson – The Washington Times – Tuesday, December 5, 2023
「性別適合(性転換)治療」にとっての最大の脅威は、未成年者への治療を禁止している共和党が強い州ではなく、ソレン・アルダコ、クロエ・コール、プリシャ・モズレーさんらのような傷ついた若い女性なのかもしれない。
この3人は、増えつつある(性転換を中断または元の性別に戻す)ディトランジションの経験者だ。10代の頃に(性同一性障害や性別違和などを扱う)ジェンダークリニックで治療を受け、出生時の性とは異なる性自認を確立するための薬を処方され、乳房を切除した。
今は、思春期抑制剤、ホルモン療法、手術にサインをした医療専門家を訴えている。長期的な身体的・心理的リスクについて十分な検査を行ったり、警告をしたりすることなく、精神的な問題を解決するために治療を急がせたと医師たちを非難している。
サンディエゴ郡の法律事務所で、非営利団体「センター・フォー・アメリカン・リバティー」と共同で3人の元トランスジェンダーの代理人を務めるチャールズ・リマンドリ氏は「これらの訴訟は、『性別適合治療産業』にとって、当然のことながら大きな脅威となっている。数え切れないほど多くの無防備な10代の若者を傷つけてきた危険な計略の暗部を暴露しているからだ」と言う。
リマンドリ氏は、同様の訴訟は全米で十数件ほど起きており、「今後、ますます増えていく」と指摘した。
同氏はワシントン・タイムズに対し「訴える人が増えてくれば、さらに多くの人々が勇気づけられ、訴えるようになるだろう。連鎖的な効果をもたらし始めるはずだ」と述べた。
10億㌦規模の米国の性転換ビジネスは活況を呈している。25歳以下で自身をトランスジェンダーと認識する人々が増え、13~17歳では1.4%と、2017年の約2倍となっている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法科大学院の性的指向と性自認を専門とする公共政策シンクタンク、ウィリアムズ研究所の2022年の報告によると、成人の約0.5%がトランスジェンダーを自認している。
共和党が強い州では議会が、この業界への反発を強めている。トランスジェンダーの権利を主張する活動家らの反対を押し切って、22の州で未成年者が性別適合薬を入手したり、手術を受けたりすることを禁止した。
このような法律が民主党が強い州に広がることはないようだ。これらの裁判が性転換市場を冷え込ませる効果を持つ可能性はある。大手医療機関に7桁もの賠償金や和解金が科せられることもありうるからだ。
リマンドリ氏は「カリフォルニア州議会が、すぐにこれを違法にすることはない。カリフォルニア、ワシントン、オレゴン、ニューヨーク、マサチューセッツのような州で正気を取り戻させるために一番期待できるのは訴訟だ。これらの州で子供は基本的に、医療機関のなすがままになっている。この問題に関して医療機関は暴走し、計画を推進してきた」と述べた。
同氏のクライアントには、2月に最初のディトランジション訴訟を起こしたコールさんも含まれている。訴状によると、カイザー・パーマネンテ・オブ・カリフォルニアは「クロエさんをこの有害な実験的治療計画に押し込むことによって、標準的な治療を著しく逸脱した」と主張している。クロエさんはこの治療で、13歳からテストステロンが投与され、15歳で乳房を切除した。
ところがクロエさんの精神状態は改善するどころか、さらに悪化した。現在19歳のコールさんは、「私にこのようなことをした人々は責任を負う必要がある」と言う。
コールさんは保守系の非営利団体「独立女性フォーラム(IWF)」のビデオインタビューで「治療に当たって、教えてもらっていないことがたくさんあった。当時の年齢では、インフォームドコンセントの能力はなかった。精神的にも肉体的にも深刻な影響を受けた。今でも完全には回復していない。妊娠できるかどうか、無事に出産できるかどうか分からない。母乳で育てることができないのは確実だ」と語っている。
カイザー・パーマネンテは声明で、同社の「トランスジェンダーケア」サービスは、「主要な医療学会によって承認されたガイドラインに沿っている」と主張している。
「思春期の患者が、親の同意を得て、性別適合治療を求める場合、チームは慎重に治療の選択肢を評価し、その後、医師や他の経験豊富な専門家からなる学際的なチームが、患者とその家族に情報、カウンセリング、その他のサポートを提供するようになっている」
大手医療機関の一つ、カイザーは、このような決定は「常に患者とその両親または保護者に委ねられており、私たちはどのような場合でも、患者とその家族が個人の健康について十分な情報を得た上で決定する権利を尊重している」としている。
カイザーを訴えているのはコールさんだけではない。レイラ・ジェーンという名で知られるケイラ・ロブダールさんは、12歳で思春期阻害剤を投与され、13歳で両乳房切除術を受けた。
ストックトンのカリフォルニア州高等裁判所に提出された書類は「被告は、ケイラさんがトランスジェンダーであると誤って信じさせるに至った心理的な出来事について、質問したり、引き出したり、理解しようとしたりせず、また、併発する多面的な症状を評価したり、治療したりしなかった」と主張している。
トランスジェンダー訴訟のための法律事務所
今後、この種の訴訟が提起される可能性が非常に高く、「医療ミス、詐欺、その他の医療関連の過ちによって被害を被った元トランスジェンダーやその他の人々のために、全米で正義を求める」ことを専門とする法律事務所キャンベル・ミラー・ペインが、今年初めにダラスに設立された。
キャンベルは7月以降、4人の元トランスジェンダーの代理人として訴訟を起こしている。キャンベルの弁護士は、他に40人の顧客候補と話し合いを続けている。設立パートナーのジョーダン・キャンベル氏は、「まだ始まったばかり」と言う。
キャンベル氏はワシントン・タイムズに「私たちの顧客は、若く非常に弱い立場にあった時に、このような問題に巻き込まれ、はっきり言えば利用された。そして5、6、7年後、『ああ、私はなんてことをしてしまったのだろう』と気づき、目が覚める」と語った。
顧客には、17歳でテストステロン注射を始め、18歳で両乳房を切除したモズレーさんや、両親に知られずに17歳で異性間ホルモン剤を処方され、19歳で両乳房切除術を受けたアルダコさんがいる。
イザベル・アヤラさんは、14歳の時に男性ホルモンを投与され、自殺未遂を起こした後も投与され続けた。医師と、若者のジェンダー治療に関する基準として広く使われている「アファーマティブ・ケア」ガイダンスをめぐって米小児科学会を訴えた。
元トランスジェンダーは通常、テストステロンによるダメージの一部を回復させるためにエストロゲンの服用を開始するが、治療による一部の変化は元に戻らない。顎のラインが強くなることがあり、肩幅は広くなる。声は女の子というより、10代の男の子のようになる。
女性から男性への性転換から元に戻す場合は、膣の収縮と乾燥、骨密度の合併症による痛み、心血管疾患のリスクの上昇、テストステロンを止めてエストロゲンを開始した後でも剃り続けなければならない顔や体のムダ毛などがある。
キャンベル氏は「通常、毎週顔を剃らなければならなくなる。レーザー脱毛を受ける人もいるが、完全に効果があるとは限らない」と指摘する。
思春期抑制剤や異性間ホルモン剤をカバーする保険会社は、通常、エストロゲン投与などの性転換治療には保険金を支払わないという。
LGBTの権利擁護者らは、転換した性を元に戻すディトランジションはトランスジェンダーのごく一部であり、出生時の性に戻るという判断は、家族や社会的圧力といった外的要因に基づくことが多いと主張する。
ヒューマン・ライツ・キャンペーンは「ディトランジションはまれであり、多くの場合、後悔よりも環境的要因の結果である」と述べている。
このような調査結果に異論を唱える専門家もおり、性転換患者の追跡調査には通常、治療から脱落した患者は含まれていないと主張している。
人権団体「全米市民自由連合(ACLU)」は6月、インディアナ州の法律が施行される数週間前に差し止め命令を勝ち取るなど、共和党支持が強い州の法律のいくつかに異議を唱えている。
インディアナ州ACLUの法務部長ケン・フォークは「私たちの顧客にとって、性転換は命を救う治療であり、この法律の発効が許可されたらどうなるかと怯えている。子供が必要な治療を受けられなかったり、自分らしく生きるという基本的な権利を否定されたりしてはならない。この法律が執行されればそのどちらも実行することになる」と述べた。
なぜ突然、ディトランジションの波が押し寄せたのか。リマンドリ氏は、トランスジェンダー急増は、オリンピック金メダリストのブルース・ジェンナーさんが原因だとみている。ジェンナーさんは8年前に「私は女性」と宣言し、ケイトリン・ジェンナーに改名した。
この著名アスリートは、大ヒットしたリアリティーシリーズ「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」のクリス・ジェンナーの夫として、10代の視聴者に知られていた。このシリーズには、スーパーモデルのケンダル・ジェンナーや化粧品業界の大物カイリー・ジェンナーも出演している。
リマンドリ氏は「(医療ミスでは)ひどい間違いを犯したと気づくまで、通常7年から10年かかる。ブルース・ジェンナーさんが2015年にカミングアウトしたときから、10代の女の子にこれが起こり始めた。
それ以前は、性転換をする人の大半は中年男性であり、幼児期に女性であることを認識し始めた少年も一部にいた。現在では、性別移行を希望する人の3分の2以上が女性として生まれた人と推定されている。
ボストン小児病院は、2007年に最初の小児ジェンダークリニックを開設した。現在、このようなセンターは100カ所あると推定されている。
ディトランジション訴訟が法廷を揺るがすことができるかどうかは、まだ分からない。まだ裁判は始まっておらず、強制仲裁に入っているものもある。また、各州の時効などの障害もあり、患者が性転換を断念したころには時効になる可能性もある。
キャンベル氏は、「問題は、ほとんどの州で医療ミスを規定する医療法が、このような事態に対応できるように作られていないことにある。それが、ほとんどの事例で最初の大きなハードルになっている」と述べた。
少なくとも一つの医療機関は自主的に治療を中止した。コロラド小児病院は7月、ハラスメントに対する安全上の懸念を理由に、18歳以上の患者の性転換手術を中止すると発表した。同病院によれば、未成年者に対して手術を行ったことはないという。
リマンドリ氏は、まだ始まったばかりだが、医療界はいつか、ロボトミー手術やオピオイドの過剰処方のような大惨事と同じように、後になって性転換治療を行ったことを悔やむようになるだろうとみている。
「残念ながら、医療業界にはこの種の集団ヒステリーといってもいいような前例があり、今それを目の当たりにしている。しかし、いつまでも続けることはできない。あまりに非合理的だ。真実は必ず明らかにできるし、必ず明らかになる。そして、もしそれが、陪審員から多額の賠償が下される訴訟の中で明らかにされるのであれば、それでいい」