ブリンケン国務長官の中東構想は夢物語

(2024年1月27日)

2024年1月22日月曜日、カーボベルデのプライアにあるネルソン・マンデラ・プライア国際空港で出発前に手を振るアントニー・ブリンケン米国務長官。(Andrew Caballero-Reynolds/Pool Photo via AP)。

By Editorial Board – The Washington Times – Tuesday, January 23, 2024

 先週スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会で、中東問題を担うブリンケン国務長官は、この問題を抱える地域についてバラ色の評価を示した。

 「中東、より大きな中東には、これまでなかったような地域化の大きな機会がある」。ブリンケン氏は壇上のインタビューで、こう述べた。「課題はそれを実現すること」であり、 「パレスチナ国家への道筋」が重要な条件だとした。

 「地域化」とは、歴史的に分断された中東が、パレスチナ国家の樹立によって一体化され、アラブ諸国がイスラエルとの関係を正常化する意思を持つようになるという構想である。このシナリオは表面的には魅力的に見えるかもしれないが、イランはユダヤ人国家に対する代理戦争を行っており、同じイスラム近隣諸国に対する侵略も始まっていることから、このような和平が実現する見込みは、現在のところ夢物語にすぎない。

 バイデン大統領の外交チームにとってこの上ない好機と見える中東情勢は、むしろ聖戦の様相を呈している。これは、中東から不信心者を一掃し、預言者ムハンマドの歴史的なカリフ制国家を再建しようとするイランの50年にわたる闘争の集大成だ。

 ブリンケン氏の空想的な発言は、危機を決して無駄にしないというオバマ政権時代の原則に従おうとする本能的な衝動としか説明できない。しかし、2024年の厳しい現実の中で、ガザの地下にある軍事施設(そこではハマスがユダヤ人絶滅を今も誓う)の煙る残骸の上に近代的なパレスチナ国家を建設できるとほのめかすのは、良識に対する侮辱である。

 昨年10月7日にイスラエルを攻撃したハマスに何年もかけて装備を与えたイランが、この混乱の背後にいるのだからなおさらだ。これに続いて、フーシ派が世界貿易の要衝である紅海の海運に対して何十機ものドローンやミサイル攻撃を仕掛けている。そしてここ数日、イランはイラク、シリア、パキスタンで、イランに友好的でないグループの隠れ家だと見なす標的を空爆している。

 さらにイラン政権は、核弾頭を装備するのに十分な濃縮ウランを即座に生産できるよう、核兵器開発を加速させていると伝えられている。

 「不幸な現実は、イランが核兵器の製造方法をすでに知っているということだ。ただ、実際の製造に関する未解決の課題もある」と、イランの核開発計画を査察した元国際原子力機関(IAEA)査察官のデビッド・オルブライト氏は書いている。起動装置とミサイルの技術を完成させることだけが、今後の課題として残っている、と同氏は付け加えた。

 米国人にとって最も腹立たしいのは、凍結された60億ドルの資金をイランに返還するというバイデン氏の愚かな決断と、パレスチナの組織に対する毎年2億5000万㌦の支援が、エスカレートする暴力を助長していることだ。

 偏狭なダボス会議関係者は、グローバル化という大きな夢に向けた「地域化」の一歩として、イスラエルとの2国家解決によるパレスチナ国家の樹立にメリットを見いだすかもしれない。

 しかし、バイデン、ブリンケン両氏の夢物語は、冷厳な現実との衝突に耐えられそうにない。イランが目指すのは一国家解決、つまり中東からイスラエルを排除した「パレスチナ」だ。それはまもなく核兵器で補強される地獄のような状況だ。

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