中国指導者、親族利用し資産隠し 習主席は1000億円超
By Bill Gertz – The Washington Times – Sunday, June 9, 2024
米議会調査局(CRC)の報告によると、習近平国家主席ら中国政界の最高幹部は汚職で増やした何億㌦もの資産を、親族を使って偽装することで隠し持っている。「中国共産党(CPC)は政府高官に資産公開を義務付けていない」と指摘。「共産党と政府のメディア統制により、上層部とその親族の資産や汚職に関する、国が承認していない報道、議論は、(中国の)メディアには表れないか、すぐに削除される」と実態解明の難しさを強調した。
CRSの報告によると、習氏は2012年までに、少なくとも3億7600万㌦を企業に投資、企業価値3億1100万ドル以上のレアアース(希土類)企業の株式を間接的に18%、ハイテク企業の株式を2020万㌦保有している。
「中国共産党の現職幹部の資産や汚職について、入手できる情報は限られている」と報告は指摘している。
CRSの報告書は議員向けに作成されたもので、今後、2022年に議会への提出が義務付けられた国家情報長官(DNI)の報告書も作成される。
DNIの報告書は昨年12月に議会に提出される予定だった。ヘインズ長官の広報官は4月、報告義務は承知しており、アナリストが分析に取り組んでいると述べた。
DNIの報告書には、習氏ら中国高官による汚職の詳細を盛り込むよう指示されていた。
この報告書は、数百万人の中国共産党員に対する調査を含む、習氏の12年にわたる反腐敗キャンペーンには逆風となるはずだ。
CRSの報告は、中国での汚職には、アクセスマネー、スピードマネー、大窃盗、小窃盗の4種類があるとしている。
そのうちアクセスマネーが最も多く、ある専門家は、資本家が党の有力幹部に賄賂を贈り、有利な融資、土地の供与、独占権、調達契約、減税などで便宜を受けることだという。
ジョンズ・ホプキンス大学の政治経済学者ユエン・ユエン・アン氏は報告の中で、「ビジネスマンから見れば、アクセスマネーは税金というより投資だ」と指摘している。
同報告書によれば、中国の実業家は「党国家の幹部」に頻繁に賄賂を贈っている。
中国政府には検閲官がおり、外務当局は汚職や中国共産党の隠し財産に関する外国からの報道の隠蔽に取り組んでいる。
指導部の資産や汚職を調査する外国の報道機関は、記者の追放、支局の閉鎖、ビザの更新拒否など、政府の報復に直面してきた。
検閲官は、高官とその親族の資産と汚職に関連するネット上のすべてのコンテンツを素早くブロックし、削除する。指導者の汚職を発見するためのデータベースがあるが、アクセスは制限されている。
外国報道機関の中国人スタッフは、外国からのニュースの収集を主に行うことがあるが、汚職が報道されると、それらのスタッフは辞職させられるという。
昨年制定されたスパイ活動に関する規制法では、「国家機密」が再定義され、広く定義された文書やデータへのアクセスもスパイ活動に含まれるようになった。
報告書は、習氏の隠し資産について二つの主要な報道を取り上げている。一つはブルームバーグ・ニュース、もう一つはニューヨーク・タイムズによるもので、いずれも2012年のものだ。
これらの報道機関は、企業文書や規制当局の文書から資金の流れを追跡調査した。
習氏の推定7億720万㌦の隠し財産は、妻の彭麗媛氏と娘の習明沢氏ら親族に分散しているとみられている。
資産の大半は習氏の長姉、斉喬橋氏とその夫、鄧家貴氏、娘の張燕南氏が所有している。
ニューヨーク・タイムズ紙は、中国共産党序列3位の温家宝首相(当時)の親族が推定27億㌦を保有していることを確認した。
温氏の妻、息子、弟がこれらの資産を管理していた。
さらに2015年には、不動産とエンターテインメントの帝国「大連万達集団」を率い、政界にも太いパイプを持つ大物、王健林氏に関する調査が行われた。
米公共ラジオ(NPR)が2020年に報じたところによると、ブルームバーグのマシュー・ウィンクラー編集長は、この調査を基に書かれた汚職を巡る記事の掲載を断念した、掲載することで「これまで築こうとしてきたものすべてを失ってしまう」ことを恐れたからだ。この記事を書いたマイケル・フォーサイス記者は退職し、ニューヨーク・タイムズに入社した。
フォーサイス記者は2015年、ニューヨーク・タイムズで、斉氏と鄧氏は大連万達への初期の投資家で、2009年に2890万㌦を投じ、2015年までに2億4000万㌦に膨れ上がったと報じた。
2019年、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、オーストラリア国籍を持ち、習氏のいとこにあたるミン・チャイ氏の汚職事件を報じた。
報告書によると、チャイ氏は習氏の母親であるチー・シン氏の弟、チー・ルイシン氏だという。
オーストラリア警察は、組織犯罪、マネーロンダリング(資金洗浄)、中国の影響工作に関する捜査でチャイ氏の取り調べを行った。
この記事が掲載された後、中国は共著者2人のうちの1人、チュン・ハン・ウォン氏を追放した。
2022年、シドニー・モーニング・ヘラルド紙は、チャイ氏がオーストラリアで中国のマネーロンダリング組織に約69万5000㌦を送金したと報じた。
国際調査報道ジャーナリスト連合は、リークされた文書からデータベースを作成し、鄧氏が英領バージン諸島の会社2社の取締役兼単独株主であることを明らかにした。
このデータベースは、中国全国人民代表大会の河南省代表団のメンバーである馮琪雅氏が、2016年に英領バージン諸島の会社を設立し、米国株に投資していたことを示している。
2019年、ドイツ銀行の幹部が、中国共産党幹部への高価な贈答品、中国共産党幹部の親族の雇用、幹部の事業への投資によって、中国での事業利益を促進していたことが報道で明らかになった。
汚職に関係していたのは、1989~2002年まで中国の指導者だった江沢民氏、2012~2017年まで7人からなる政治局常務委員会の委員を務めた王岐山氏、そして温家宝氏だ。
ドイツ銀行はまた、政治局常務委員の栗戦書氏と汪洋氏の子供も雇っていた。
常務委員会は中国共産党の最高政治機関であり、集団独裁体制のもとで政府を監督する機関とみなされている。