トランプ大統領、北朝鮮の核保有容認も 韓国には大きな衝撃
By Andrew Salmon – The Washington Times – Monday, November 25, 2024
【ソウル(韓国)】ドナルド・トランプ次期米大統領が北朝鮮への外交的働きかけを再開し、核保有国と認めた場合、韓国はいくつかの重大な戦略的選択に直面する可能性がある-安全保障のトップアナリストが指摘した。
韓国の国家安全保障戦略研究所(INSS)の韓碩熙所長は25日、記者団へのブリーフィングで、米国が北朝鮮の大量破壊兵器開発計画を承認すれば、韓国にとって「トラウマ」になるだろうと述べた。民間のシンクタンクであるINSSは、政府の情報機関・国家情報院と提携している。
アナリストらは、第2次トランプ政権は、トランプ氏の国家安全保障・外交チームのアプローチ次第で、分断された半島に可能性とリスクをもたらすとの見方を示している。第1次トランプ政権は、経済援助と制裁緩和と引き換えに北朝鮮に核開発計画の放棄を要求したものの、トランプ氏と北朝鮮の金正恩総書記との交渉は決裂した。
韓氏は、「米国が北朝鮮をいかなる形であれ核保有国として承認すれば、韓国は大きな衝撃を受けるだろう。過去30~40年間、韓国は米国主導の非核化・核不拡散体制に協力してきた。…米国が北朝鮮を核保有国として承認すれば、韓国はその被害者となる」と述べた。
北朝鮮ウオッチャーらは長年、金正恩政権は決して核兵器を放棄しないと主張してきた。この立場は正恩氏によって何度も強化され、国家憲法にも記されている。
正恩氏は米大統領選についてまだ直接コメントしていないが、トランプ政権が安保協議を再開する場合に備えて、強硬路線をほのめかした。
正恩氏は先週、平壌で開催された防衛博覧会で、「われわれはすでに米国と可能な限りの交渉を行ってきた。そして最終的に確認したのは、超大国の共存の意思ではなく、武力に基づく徹底した立場と、北朝鮮に対する変わることのない侵略的で敵対的な政策だった」と述べた。
米国は一貫してこの立場を認めてこなかった。それは恐らく、米国民に受け入れられるものではないからだ。米国と北朝鮮とのすべてのハイレベルの接触は事実上、北が核兵器計画を放棄することを前提にしてきた。
そのようなアプローチでは成功しないとして、北朝鮮の核兵器開発計画を公式に認めることを支持する意見もある。完全な非核化から軍備管理へとシフトすることで、交渉の成功の確率は高まるとこれらの専門家は言う。
トランプ氏は、国際的な組織や多国間の協定への嫌悪感を明らかにしている。国連主導の核拡散防止条約(NPT)へのスタンスははっきりしていない。
INSSに新設された「トランプ・リスク・チーム」のメンバー、ハ・キョンソク氏は、「トランプ次期大統領がNPTやその他の多国間協定を尊重しているとは思えない。NPTに対する立場を明確に、あるいは公には表明しておらず、それが今後の動きへの制約になるだろう」と述べた。
トランプ氏は、正恩氏との強い個人的な関係を誇示してきたが、2019年にベトナムのハノイで行われた2回目の首脳会談で交渉は決裂、正恩氏に屈辱を与えた。
その結果、正恩氏はエリート層や幅広い民衆から信頼を失い、2019年以降、米朝関係はほとんど動くことなく、バイデン政権の下では最小限の接触にとどまっている。
より大きなニンジン
北朝鮮の世界での存在感は、正恩氏の新たな同盟国であるロシアのプーチン大統領によってこれまで以上に強固なものとなっている。北朝鮮は経済、安全保障、外交での支援と引き換えに、ロシアのウクライナ侵攻を支援するために軍隊と武器を送ってきた。
韓国の安全保障の専門家らは、トランプ氏が金氏を新たな会談に誘い出すためにはもっと大きなニンジンをぶら下げなければならないとみている。そのニンジンによって、韓国は自国の安全保障政策や、長期的に米国の核の傘に依存するかどうかについて、自らを見つめ直すことになるかもしれない。
韓氏は「活発な議論に火をつけるには、トランプ大統領は(正恩氏に)会い、北朝鮮を核保有国として承認しなければならない。そうなれば、韓国国民は自国の核兵器システム保有を受け入れるだろう」と述べた。
近年の世論調査では、韓国国民の間で核兵器への支持が根強いことが判明している。保守派の尹錫悦大統領は核武装に言及しているが、バイデン政権が米国の「核の傘」を拡大し、二国間核共有グループを設立したことで緩和されている。
型破りなトランプ氏が、韓国がNPTを脱退し、世界の次の核保有国となることに同意するかどうかは重大な課題だ。