尹大統領失脚なら左派政権復活も 日米との関係に深刻な影響-韓国
(2024年12月11日)
By Andrew Salmon – The Washington Times – Monday, December 9, 2024【ソウル】韓国政界に不満が満ち、凍てつくような寒さの冬をさらに冷え込ませている。アナリストらは韓国の左翼政権が復活すれば、外交政策にも影響を及ぼすと頭を悩ませている。
右派の尹錫悦大統領は名誉を失い、権力を失い、海外渡航を禁止され、国家反逆罪で国会の調査を受けている。12月3日の戒厳令布告が失敗したことで、左翼政権の復活は避けられそうにない。
そうなれば、韓国は米国、日本から離れ、中国や北朝鮮に軸足を移すことになるかもしれない。
米国のトランプ次期政権が、韓国と米国の同盟関係について、従来とはまったく異なる見方を持っているということはすでに懸念されていた。韓国による親北シフトはこの溝を広げ、71年の歴史を持つパートナーシップを危うくする可能性がある。
ソウルの延世大学で国際関係を教えるジェフェリー・ロバートストン氏は、「(尹)政権の外交政策はもはや水泡に帰した。次に誰が来ても、それはすぐに破棄されてしまうはずだ」と述べた。
尹氏の試みはすぐに失敗し、野党は週末、2027年の任期満了を前に尹大統領を弾劾・罷免しようとしたが、あと一歩のところで達成できなかった。結果的に、韓国政治は行き詰まってしまった。
尹氏の保守政党「国民の力」は、7日の弾劾訴追表決を乗り切ったものの、尹氏の権限を剥奪し、退陣させなければならないと明言している。しかし、退陣の時期や方法については明らかにしていない。
9日のブリーフィングで国防省は、尹大統領は信頼を失ったものの、依然として軍を掌握していると述べた。
この混乱により、国家の舵取りは当面、韓悳洙首相の手に委ねられることになった。韓首相は尹氏の「秩序ある早期辞任」を口にしている。
しかし野党は、尹氏がまだ大統領職に就いているこの政治状況は「異様」であり、「憲法秩序」を破壊するものだとしている。
11日にも改めて弾劾訴追が行われるとみられている。国民の力は、新たな戦略を必死に模索しながら時間稼ぎをしているようだ。
大統領選が実施されれば、野党「共に民主党」の勝利が確実視され、行政府と立法府の両方を掌握することになる。
半島に冬が訪れ、国民の力は、厳しい寒さがデモ参加者を思いとどまらせることを期待している。ただ、先週の3日と7日の夜に議会前で目撃されたように、野党の動員力を考えると、その可能性は低そうだ。
さらに、韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)は今後数日間、独自の集会を開催すると宣言している。KCTUは2016年、保守派の朴槿恵大統領に対する抗議行動を開始した。この抗議行動は雪だるま式に広がり、1年後には朴大統領の失脚と投獄という結末を迎えた。
国民の力は、野党党首の李在明氏が、法的問題(地方政治家時代の汚職疑惑に関するものが多い)で、尹氏が退陣する前に失脚することを期待しているとの見方もある。しかし、李氏が尹氏の戒厳令を失敗させた中心人物であることは間違いなく、過去に何度も法的な難題を乗り越えてきた。
もう一つのシナリオは、国民の力が尹大統領の退陣後、残された政治的影響力を温存し、政権党としての妥当性を維持しようとしているというもの。
尹氏が世論を読み違えたのであれば、共に民主党と連携する少数政党が弾劾訴追に外交問題を持ち込んだのは間違いだったのかもしれない。
尹氏の罷免が前面に出ている一方で、法案では「いわゆる『価値観外交』を口実に、政権は地政学的バランスを無視し、北朝鮮、中国、ロシアと敵対し、日本中心の特異な外交政策に固執してきた。これには、日本寄りの人物を政府の要職に任命することも含まれる」と非難している。
「このような政策は、…戦争のリスクを高め、国家安全保障を確保する国家の義務を無視するものだ」と弾劾文は警告した。
この文言により、弾劾採決は保守派にとって厳しいものとなり、7日には、国民の力の108人の議員のうち105人が弾劾採決をボイコットし、弾劾採決は事実上失敗に終わった。
文在寅大統領が率いた前左派政権は、他のどの政権よりも北朝鮮と近かった。また、失敗したとはいえ、前例のないトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談の土台を築いた。
しかし、前左派政権は、「慰安婦」や係争中の資金処理に関する2015年の二国間合意を覆し、第2次世界大戦関連の賠償やその他の問題で日本と衝突するなど、険悪だった韓日関係をどん底に突き落とした。
だが尹氏の下で状況は変わった。対北朝鮮強硬派の尹氏は、米国との関係を改善し、核協議グループを実現し、日本との二国間関係も大幅に改善した。
米政府は喜んだが、日本の反応は慎重だった。ワシントン・タイムズの取材に応じた情報筋によれば、日本政府が慎重なのは、韓国が現在の親日政策を維持できるかどうかという不信感に根ざしているという。9日、韓国の外務副大臣は日本大使と会談し、確証を得ようとしたが、李氏の政治的台頭が会談を複雑なものにしたようだ。
文氏以上に率直な李氏は、ソウルでの反日集会で演説し、2023年の韓日首脳会談を「外交史上最も恥ずかしく、破滅的な瞬間」と呼んだ。李氏は2023年には、駐韓中国大使に会い、韓米同盟関係の緊密さを批判した。
先週、尹氏が米国との協調を欠いたこと、特に米韓連合軍司令部に派兵を通告しなかったことは、同盟に対する米国の批判に弾みをつけた。
米国のカーネギー財団は、「尹大統領は、韓国への関与縮小を主張する人々に、韓国をならず者で信頼できないパートナーとして描くことを許し、意図せずして大きな恩恵を与えてしまったかもしれない」と論評した。