保守メローニ伊首相、トランプ政権との関係強化へ
By Eric J. Lyman – Special to The Washington Times – Thursday, January 16, 2025
【ローマ】イタリアのジョルジア・メローニ首相は、2年前にローマで権力を掌握し、欧州政界にパニックを巻き起こしたが、いまやトランプ新政権に受け入れられ、欧州の希望となる可能性がある。
今週48歳になったメローニ氏は、強い保守的な考え方と政治家としての血筋を誇り、長い間、国内外で偏向した人物とされてきた。しかし、ドナルド・トランプ次期大統領という熱狂的な支持者、ファンを見つけたようだ。
今月初め、メローニ氏がトランプ氏の邸宅マールアラーゴを5時間にわたって訪問した際、トランプ氏は「素晴らしい女性と一緒にいる。彼女は欧州で影響力を急速に拡大している」と熱く語った。
少なくとも一見したところでは、強硬な保守主義のメローニ氏は、かつて大統領を務め、これから大統領となるトランプ氏にとって当然、味方となりうる。
メローニ氏は特に大量の移民受け入れに反対していることで非難されてきた。この問題は、イタリアでも米国でも難しい政治的課題となっている。また、代理出産や中絶の権利に反対し、裁判所を使って政治的敵対者と対決してきた。トランプ氏と同様、億万長者の起業家でXのオーナーであるイーロン・マスク氏とも親交を深めており、マスク氏は昨年、メローニ氏を「本物で、正直で、思慮深い」と評した。
関係が深まる兆しはますます大きくなっている。トランプ氏とメローニ氏は、昨年12月にノートルダム大聖堂の公開再開のためにパリを訪れた際、長時間にわたって会話を交わす姿が目撃されており、メローニ氏は、20日にワシントンで行われるトランプ氏の就任式に出席する数少ない世界的指導者の一人となる見込みだ。
イタリアの国際問題専門誌「リーメス」の創刊者であるルシオ・カラッチョロ氏によれば、メローニ氏の保守主義と堅実な政治は、トランプ氏の目には、フランス、ドイツ、英国をはじめとする欧州の主要国の中道主義や政治的不安定さと好対照に映るという。
ハンガリーのビクトル・オルバン首相は、トランプ氏と同じく強硬な保守ナショナリストであり、以前からトランプ氏や有力アドバイザーの多くと個人的かつイデオロギー的なつながりを誇ってきた。しかし、イタリアはハンガリーに比べて国際的な地位が高く、地政学的な重みがあるため、メローニ氏は他の欧州の新進の保守政治家よりも、米欧間の主要な橋渡し役としては適任だ。
カラッチョロ氏は「メローニ氏はどの欧州の指導者より、EU(欧州連合)諸国が米帝国の属国になっていることを理解している。まず(バイデン)大統領と、そして、彼女にとってより自然な関係にあるトランプ大統領と、米国との結びつきを強化するのが良い考えだと理解している」と述べた。
トランプ氏が最近、グリーンランドの米国併合の可能性について発言したことを巡って、欧州各国政府は警戒を表明したが、メローニ氏は意に介していない。トランプ氏の発言は「敵対的な行動ではなく、他の大きなグローバルプレーヤーに力強いメッセージを送る」ためのものだと述べた。
相違点
しかし、イタリアと米国の関係強化には、いくつかの重要な政策の違いが立ちはだかっている。特にメローニ氏は、トランプ氏と異なり、ロシアのウクライナ侵攻でウクライナを強く支持している。
彼女はウクライナのゼレンスキー大統領の訪問を何度も受け、昨年は先進7カ国(G7)の議長として、凍結されたロシアの資産を担保にウクライナに500億ドルの融資を確保した。7月には、ローマで大規模な多国間ウクライナ復興会議が開催される。
イタリア初の女性元首であるメローニ氏は、EUの回復力強化にも努めており、イタリアがイスラエルと経済的・政治的に強い結びつきを維持しているにもかかわらず、トランプ氏の個人的・政治的盟友であるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相をたびたび批判している。
さらに、トランプ氏が輸入品に最大25%の関税をかけるという脅しを実行に移せば、イタリアは特に大きな打撃を受けるだろう。同国はEU第2の輸出国(ドイツに次ぐ)であり、米国は同国にとって欧州以外の最大の貿易相手国である。
しかし、最大の障害は国防費かもしれない。トランプ氏は、他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に貧弱な国防予算を増額するよう圧力をかけるキャンペーンを再開すると宣言しているからだ。
トランプ氏はホワイトハウスでの最初の任期中、同盟諸国の国防費が少なすぎると批判し、大西洋をはさんだ同盟関係に対する関与にさえ疑問を呈した。
NATOのガイドラインでは、加盟国は国内総生産(GDP)の少なくとも2%を国防費に充てるべきだとされている。トランプ氏が大統領に就任した2017年当時、2%の基準を超えていたのはわずか6カ国だった。イタリアは1.5%で、まだ足りない8カ国の一つだった。
イタリアは2028年までに2%の目標を達成するとしているが、トランプ氏は先週、NATO加盟国のどこも達成していないGDP比5%まで目標を引き上げたい意向を明らかにした。(バイデン政権下の昨年の米国の国防費はGDPの3.4%だった)。
明らかな親近感
退任するバイデン政権とも良好な関係を築いたメローニ氏は、次期米大統領には如才なく接してきた。彼女は記者団に対し、マールアラーゴの訪問は「期待以上」だったと語ったが、トランプ氏の指南役や大陸での主要連絡先になることを望んでいることを示唆することは避けた。
メローニ氏は、両首脳の保守性は「イタリアだけでなく、欧州全体にとって付加価値を生む」と語り、フロリダ訪問は「非常に強固なものになると約束された関係を確認する機会だった」と付け加えた。しかし、「『特権的』と言えるかどうかは分からない」と強調した。
それでも、少なくとも短期的には、イデオロギーが似ていることは政策の違いに勝るかもしれない。
欧州改革センターのルイジ・スカッツィエリ研究員はインタビューで、国防費については「メローニとトランプの親和性は明らかなので、それほど問題にはならないかもしれない」と述べた。「イタリアの指導者が左派なら、きつく当たるかもしれないが、メローニにそれほど厳しい態度をとることはないだろうという見方もある。しかし、それは確実ではない」
イタリアは今後4年間、代わりがいないという理由だけで、米国と特権的な立場になるかもしれない。
ローマのジョン・カボット大学学長で政治学教授のフランコ・パボンチェッロ氏は今週、AP通信に「トランプ大統領が欧州で困ったときに呼び出せる人物を探しているなら、メローニがその一人であることは明らかだ。欧州では、彼女の周りは砂漠だ」と語った。
メローニ氏が2022年後半に首相に就任したとき、欧州の体制に激震が走った。彼女の政党「イタリアの同胞」は、第2次世界大戦時のファシスト、ベニート・ムッソリーニの流れを汲む。メローニ氏は野党のリーダーとして、イタリアがユーロを放棄することを望み、難民がイタリアの海岸に上陸するのを防ぐために大規模な海上封鎖を呼びかけた。
メローニ氏は就任後、そうした主張の多くを緩和させた。彼女はまだ、欧州の各国に完全に受け入れられたわけではないようだが、欧州は彼女やそのトランプ氏とのつながりを当てにしている可能性はある。しかし、カラッチョロ氏によれば、それは以前ほど重要ではないかもしれないという。
トランプ氏の政権復帰は、EU加盟国間の伝統的な序列の乱れと時を同じくしている。ポピュリストの政権や政治運動がEUに反発し、フランスとドイツは国内政治の不確実性に直面している。
「欧州の連帯という概念は消えつつある。パリ・ベルリンという軸はもはや意味をなさず、誰もが自分のために生きるという現実に取って代わられている。そのような状況の中でメローニは、欧州がこれまで以上に米国を必要としているこの時期に、自分の立場を主張することになるだろう」