ロシアの北朝鮮兵、予想を裏切る高い士気・規律、高度な装備

(2025年2月5日)

2022年4月25日、北朝鮮の平壌にある金日成広場で行われた北朝鮮軍創設90周年を記念する軍事パレード。独立ジャーナリストは、北朝鮮政府によって配信されたこの画像に描かれたイベントを取材するアクセス権を与えられておらず、内容を独自に検証することはできない。画像には韓国語の透かしがある: 「KCNA」とは朝鮮中央通信の略称である。(朝鮮中央通信/韓国通信社 via AP, File)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Sunday, February 2, 2025

 【ソウル(韓国)】ロシア・ウクライナ紛争に派遣された北朝鮮軍は、装備が整わず、火砲の餌食になるだけだろうとみられていたが、戦場からの報告によると、モチベーションは高く、質の高い訓練を受け、高度な装備を備えていることが明らかになっている。

 ウクライナを支援する米国と同盟国にとって懸念されるのは、推定1万1000人規模の北朝鮮軍部隊が、多くの犠牲をものともせず、高強度の現代戦において戦闘経験を積んでいることだ。これは、現在の西側諸国の兵士たちにはできないことだ。

 ロシアへの派兵により、高度に軍国主義化されたアジアの要塞国家、北朝鮮は、米国の敵対国である中国、ロシア、イランとの緩やかな同盟関係の最先端に立つことになる。これら4カ国を合わせて「CRINK」と呼ばれている。

 だが不明な点もある。朝鮮人民軍(KPA)は、ウクライナ軍が夏の奇襲作戦で奪ったロシアのクルスク地方に配置されたが、戦線の一部から撤退したと伝えられている。また、増援が来ることを示唆する情報もある。

 キーウ・インディペンデント紙は先週、北朝鮮軍がクルスクの「ゼロライン(最前線)」から撤退したと報じた。同紙の情報源であるウクライナの特殊部隊関係者は、KPA部隊の質の高さにも言及している。

 彼は、「撤退は長くはないだろう」と予測し、北朝鮮兵は「高いモチベーション」と「大きな損失にもかかわらず攻勢を続ける…能力」を持っていると強調した。

 韓国とウクライナからの報道によると、北朝鮮軍がクルスクの前線から撤退したのは、部隊の再編成、回復、強化のための可能性がある。

 韓国の合同参謀本部は24日、「ロシアとウクライナの戦争に部隊を派遣してから約4カ月が経過し、(北朝鮮は)多数の死傷者や捕虜が発生する中、追加措置や派兵の準備を加速させていると推測される」と報告している。

 北朝鮮には110万人以上の兵士がおり、派兵を維持するためには十分な数だ。ソウルの牙山研究所の安全保障専門家ヤン・ウク氏は、破壊工作員、特殊部隊、空挺部隊、海兵隊、レンジャーなど、平壌の最上位部隊の兵力は約20万人で、フランスの全軍(11万8000人)やイギリスの全軍(7万5000人)より多いと述べた。

 物資の増援が来る可能性もある。

 1月22日、未確認だが公開された情報では、ウクライナの152ミリ/155ミリの火砲よりも射程が長いコクサン170ミリ自走砲がクルスクに輸送されていると報じられた。同日、ウクライナの国防情報機関を率いるキリーロ・ブダノフ氏は、専門メディア「ウォーゾーン」に対し、北朝鮮が弾道ミサイルをさらに送ってきていると語った。

 兵士は戦いに強い意欲を燃やしているようだ。ウクライナがネット上で公開した映像には、負傷して動けなくなった北朝鮮人が手榴弾で自殺する様子が映っていた。

 北朝鮮人はウクライナの最強部隊と闘っているが、捕まったのは戦闘で負傷した2人だけだ。

 シンガポールを拠点とするパシフィック・フォーラムの安全保障専門家、アレックス・ニール氏は、「米国防総省の観点から見れば、ウクライナの戦場に北朝鮮の好戦的な勢力がいることは、彼らを激しく攻撃し、その能力を否定することで抑止力を高める好機だ。誰に聞いても、彼らは特に北朝鮮軍を標的にしている」と述べた。

 一部の報道では、KPAは冷戦時代の「ソ連型」軍隊であり、ブダノフ氏は彼らを「生物学的ロボット」と呼んでいる。北朝鮮兵らは新たな技術を取り入れている。

 ウクライナ人によれば、北朝鮮は自爆ドローンや爆弾投下ドローンから逃げようとしないという。その代わりに、一人の兵士が開けた場所に立ち、その間に仲間が飛来するドローンを撃墜しようとする。

 貧弱な装備しか備えていないのではないかという主張がうそであることが証明されつつある。戦場で死亡した北朝鮮軍兵士は、光学照準器を装備した新型のAK12アサルトライフル(カラシニコフ・シリーズの第5世代最新兵器)を装備しているのが分かっている。

 1月28日に投稿された動画で、ウクライナの戦争特派員ユーリー・ブトゥゾフ氏は、北朝鮮の大佐が持っていた半自動12ゲージ対ドローン散弾銃「ヴェープル」を見せた。ブトゥゾフ氏によると、この大佐はヘルメット、タクティカルゴーグル、防弾チョッキを着用し、中国製デジタルラジオ、バッテリー、照明弾、手榴弾2個、新品のAK12を携行していたという。

 ブトゥゾフ氏は、ロシア兵の4、5発の弾倉ではなく、9発の弾倉を持つ「贅沢な」装備を持ち、これだけの装備を携行できたのは、「北朝鮮人の身体訓練のレベルが非常に高いからだ」と特派員は語った。足りないのはナビゲーション装置だけだった。この大佐が使っていたのは、2枚の小さな紙の地図だった。

 ブトゥゾフ氏は遺体の前で、「(北朝鮮の将校らは)自ら兵士、突撃隊を率いて攻撃に向かった」と語った。彼はKPAの迅速な攻撃と効果的な射撃技術を称賛したが、密集した野戦陣形を批判した。

 他のKPA部隊と同様、この死亡した北朝鮮人は、書類、日記、韓国のハングル文字で書かれた手紙を携行していたという。

経験を積む

 西側の軍事アナリストは北朝鮮の損害に注目している。ウクライナが公表した数字に疑問を呈する者もいるが、部隊の4分の1もの死傷者が出ていると指摘している。

 ここ数十年の西側諸国の軍隊は、ロシアやウクライナのような高強度、高度な技術、高死傷率の戦争とはまったく異なり、低強度、対反乱作戦に重点を置いてきた。

 北朝鮮軍は急襲部隊であり、伝統的に危険度の高い作戦で使用される米海兵隊のような精鋭部隊である。

 ヤン氏は「北朝鮮が派遣した部隊は、敵陣を突破するための突撃部隊だ。必然的に、多くの死傷者を出すことになる」と述べた。

 北朝鮮のような権威主義体制は、国民の反対を受けることなく、損失よりも目的を重視することができる。

 韓国の退役将官、チョン・インボム氏は「犠牲者ゼロで戦いに勝てる者はいない。仕事を成し遂げるためなら、50%以上の犠牲もいとわないということは重要な意味を持つ。すべての指揮官は任務を達成し、犠牲を減らす必要がある。彼らにとっては、任務を遂行することこそが重要なのだ」と述べた。

 このようなことから、北朝鮮はロシアと並んで、グローバルな舞台で米国と西側同盟国に挑戦する敵対軸の急先鋒となっている。

 ニール氏は、「他国の戦争で外国に派兵するということは、決意と勇気を示すものだ。CRINKの中で北朝鮮の威信を高め、(中国人民解放軍を)出し抜く機会を与えることになる」と述べた。

 ウクライナでの戦闘は、最初の2年間の火砲から無人攻撃機へと移行し、ハイテクで低コストの非対称戦でKPAの強みが生かされている。

 退役した米陸軍中佐のスティーブ・サープ氏は、「北朝鮮はこの戦闘で新たな能力を身につける。自国に戻った兵士らはそれを部隊に取り入れることになる。ドローンのコストはF35とは違う。彼らがウクライナで学んでいることは、信じられないほど役に立つだろう」と指摘した。

 ヤン氏は、「韓国の優秀な兵士らはベトナム戦争の経験を持っていたが、その世代はもういない。北朝鮮の若い兵士らは戻って将官になる。その実体験は、彼らに多くのインスピレーションを与えるはずだ」と強調した。

トランプ氏の「常識の革命」、欧州にも-元ポーランド首相

(2025年01月28日)

トランプ政権発足、世界は反中国で結束を 中立という幻想

(2025年01月25日)

北朝鮮、日本のNATO代表部設置に反発

(2025年01月22日)

保守メローニ伊首相、トランプ政権との関係強化へ

(2025年01月20日)

トランプ氏発言にデンマーク、パナマ、カナダが警戒

(2025年01月13日)

揺れ動く米韓の限界を試した北朝鮮ミサイル

(2025年01月12日)

ナイジェリア、キリスト教徒にとって最も危険な国-人道支援機関報告

(2025年01月10日)

中国の「運命共同体」論にだまされるな ハドソン研究所中国センター所長 マイルズ・ユー

(2025年01月08日)

ニューオーリンズでテロ、イスラム国復活の兆候 中東・アフリカで支配拡大

(2025年01月07日)

韓国の弾劾劇揺るがす謎の疑惑と隠蔽工作

(2025年01月04日)
→その他のニュース