饒舌なウクライナの北朝鮮兵捕虜 体制のもろさ露呈

(2025年2月25日)

2025年1月11日、ウクライナ大統領報道局が提供したビデオからの画像。ロシアのクルスク国境地帯でロシア軍と共に戦っていた2人の北朝鮮兵士を捕らえたウクライナ軍。(ウクライナ大統領報道局 via AP)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Thursday, February 20, 2025

 【ソウル】1月にウクライナ軍に捕らえられた北朝鮮兵2人が、初の公開インタビューで驚くほど率直に語ったことで、北朝鮮政権のイデオロギー的なもろさが露呈した。

 2人は、ロシアの戦争を支援するために金正恩政権によってクルスク地方に送られた。生きて捕らえられたことが知られているのはこの2人だけだ。これまで写真や映像は公表されていたが、ほとんど発言していなかった。

 韓国の保守系日刊紙「朝鮮日報」はこの2日間、捕虜のインタビューを2回にわたって掲載した。

 アナリストらは、この2人の兵士は北朝鮮のエリート部隊、第11暴風軍団の所属と推測しているが、2人は、北朝鮮の偵察総局に配属されていたと語っている。その発言から、北朝鮮の省庁横断的な破壊工作・諜報機関であり、実態がよく分かっていない総局の最新の内部事情が見えてくる。

 ウクライナ軍によれば、クルスクに派遣された北朝鮮兵らは捕虜になるのを避けるために死ぬまで戦うか、自決しているという。捕虜の2人がこれほど自由に話したことは、捕虜になった際の対応、尋問への対応の訓練がなされていないことを示唆している。

 2人が過酷な扱いを受けた形跡はなく、新聞に掲載された写真によれば、2人とも質の高い医療と食事を受けていた。2人とも北朝鮮に家族がいるため、記事ではフルネームは明かされていない。「リ」は偵察総局の26歳の前哨狙撃兵で、「ペク」氏は21歳の小銃兵だ。

 2人が語った内容の多くは、北朝鮮兵の体力、射撃技術、モチベーション(ロシア軍より高いと評価された)と一致し、大きな損失を出していることのウクライナ側の説明とも合致する。リ氏は、偵察総局の過酷な山岳行軍、持久力訓練、射撃訓練、イデオロギー教育について言及した。

 偵察総局はエリート部隊であるにもかかわらず、他の部隊と同様、国家のための労働も行っている。男たちのタフさの表れの一つが、真冬に行われた三池淵観光の目玉プロジェクトだった。

 リ氏は「尿が地面に落ちた瞬間に凍ってしまうほど寒かった」と言い、ロシアの冬の寒さなど「何でもない」と言い捨てた。

 2人とも、ロシアへの派遣は戦闘ではなく訓練だと聞かされていたという。リ氏によると、補給は十分だったが、ロシア人とのコミュニケーションにはスマートフォンのアプリを使わなければならなかった。朝鮮通信の記者は、握手をしたとき、2人の手のひらが硬く、角質化していたことに驚いたという。

 ロシア軍との調整は時に困難を極めた。リ氏は、ロシア軍の砲兵援護射撃が効果的でなかったため、北朝鮮の地上攻撃部隊は無防備になったと語っている。

 ペク氏は、10人編成の部隊の約半数が戦死したとしながらも、平然としていた。「戦争だから死傷者は避けられない」

 また、ドローンが戦場の至る所を飛んでいることについても、それほど大したことではないという様子だった。

 「ロシア軍はよくドローンの脅威について語り、隠れるか逃げるようにと忠告してきた。しかし、わが軍の射撃技術は高い。われわれはドローンを撃ち落とした。…簡単だった」

 当局者らによるとリ氏は偵察総局に、韓国人がドローンを操作していると伝えており、この点についてリ氏は、厳しい見方を示した。

 「われわれの訓練では、走る、隠れる、あるいは地上から無人機を撃つなど、スピードを重視していた。ドローンの効果的な倒し方は学んでいない」

 リ氏の6人の潜入チームは待ち伏せされ、5人が死亡、負傷したリ氏は仲間に応急処置を受けた。しかし日没後、「悪魔のような」ドローンによって再び負傷した。

 どこにいるのかも分からなくなり、武器はなく、リ氏は生け捕りにされた。「もし手榴弾を持っていたら、自ら命を絶とうとしただろう」と述べ、仲間が自害するのを目撃したと付け加えた。「われわれの軍隊では、捕虜になることは裏切り行為とみなされる」

 最初、両腕に包帯を巻いた状態で撮影されたペク氏は、両手にけがはなかったことを明らかにしている。包帯は自殺を防ぐためにウクライナ兵が巻いたものだった。捕虜となった際の対応について訓練を受けているかどうかについては答えなかった。

 リ氏の両親は平壌に住んでいる。「もし北朝鮮政府が私の逮捕を知ったら、両親は平壌を去らざるを得なくなるだろう」

 ペク氏の父親は他界しているが、母親は存命している。2人とも、軍に入ってからは家族に会っていないという。

 ペク氏は帰国の希望を表明したが、韓国への亡命を考えていることを認めた。リ氏は亡命の決意を固めたと語っている。

 2人の捕虜は北朝鮮の内情について話したが、そのような例がこれまでにないわけではない。韓国やミャンマーでは、捕虜となった北朝鮮の兵士やスパイが苦い経験を打ち明けている。記者に話したり、本を書いたりしている者もいる。

 韓国人は、キーウにいる若い捕虜の純朴さに感動している。どちらもロシアに派遣される前は、海外での経験や外国人との付き合いの経験はなかった。

 ペク氏は、ウクライナに住みたいかどうか最初に質問されたとき、カメラに向かって 「ウクライナ人はみんな親切ですか」と聞き返した。

 朝鮮日報の報道を読んだ韓国の退役中将、全仁●(金へんに凡)氏は、「とても悲しい」と語った。「彼らも私たちと同じ人間だ」

 全氏は、北朝鮮兵は「キャッチ‐22(八方ふさがりの状態)」に直面していると付け加えた。

 「彼らの指針は『降伏するな!』という非常にシンプルなものだ。自殺するように訓練されているのだから、尋問に対処するための訓練は必要ない」

 彼らの饒舌さは、国民を外界から遮断する難攻不落のファイアウォールを築こうとする体制のもろさを示している。

 「20年にわたる洗脳を解くには、優しい言葉をかけるだけでいい。笑顔と熱いお茶だけで、自殺を覚悟していた連中が屈服した。北朝鮮は本当に、本当にもろい」

 捕虜の2人を通じて北朝鮮人の人間性を垣間見ることができるが、あるベテランの北朝鮮ウオッチャーは、金正恩総書記の支配下の大部分は、第2次世界大戦の日本兵のようにタフで、死と隣り合わせの戦いをしていると警告した。

 元米陸軍の尋問官で、偵察総局に関する著書を出版したばかりのボブ・コリンズ氏は「みな違う。イデオロギー的な訓練を受けると、人それぞれ違った反応を示すものだ。しかし、彼らの大半は、捕虜になりそうになると手榴弾を取り出し、頭を吹き飛ばす」と述べた。

 「北朝鮮の訓練は、ほぼ成功している」

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