フェンタニル密売で2000億円 中国が原料供給-米財務省報告

アリゾナ州ノガレスで、税関国境警備局の職員がノガレス入国管理局で押収したフェンタニルとメスの展示品(Mamta Popat/Arizona Daily Star via AP, File)。
By Bill Gertz – The Washington Times – Friday, April 11, 2025
財務省の報告書によると、致死性の合成麻薬フェンタニルの違法生産と流通により、密売人は2024年に14億ドルの利益を得たと推定され、そのほとんどが米国の銀行を通じて流出したという。
金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)によるこの報告書は、フェンタニル関連とみられる活動に関する1246件の銀行機密報告に基づいているという。
報告書は9日に公開され、「分析された(銀行機密法=BSA)報告に記載された対象住所欄で特定された外国のうち、最も多かった2カ国であるメキシコと中華人民共和国(PRC)は、フェンタニルの製造およびその後のマネーロンダリング活動において重要な役割を果たしている」と指摘している。
1970年に制定された銀行機密法は、金融機関に疑わしい活動や1万ドル以上の取引を報告することを義務づけている。
麻薬取締局は、2023年の薬物過剰摂取による死亡者数10万7000人のうち、70%がフェンタニルなどの合成麻薬の乱用によるものであると発表した。
中国が、フェンタニルの取引に関与するメキシコの麻薬カルテルに前駆体化学物質を提供し続けていることは、トランプ大統領が中国に重い関税を課し、本格的な貿易戦争に突入した大きな理由となっている。
報告書は、フェンタニルの取引に関与している主なカルテルを、シナロア・カルテルとカルテル・ハリスコ・ヌエバ・ジェネラシオンと特定した。
この2つのカルテルはメキシコでのフェンタニルのサプライチェーン(供給網)をほぼ支配しており、中国から調達した前駆体化学物質と製造装置を使用している。この麻薬は秘密実験室で製造されていると報告書は述べている。
フェンタニルの取引には、フロント企業を使った化学製品ブローカー、マネーミュール(カネの運び屋)、米国を拠点とし、中国のサプライヤーからフェンタニルの前駆体化学物質を購入する仲介者が関与している。
スコット・ベッセント財務長官は声明で、「(FinCENの分析が)金融機関から得た情報は、この前例のない拡大から利益を得ている悪質な行為者をより効果的に捜査し、崩壊させる上で極めて重要な要素である」ことを示していると述べた。
ベッセント氏は、このデータは「最終的には米国人の命を救う努力に役立つ」と述べた。
FinCENの報告書によると、フェンタニルに関連する活動は、前駆体化学物質の購入、フェンタニルの密売、フェンタニルに関連したマネーロンダリングなど、麻薬のサプライチェーン全体に関連している。
同報告書によれば、フェンタニルの密売に関する疑わしい銀行報告の57%は、米国の銀行、貯蓄貸付組合、信用組合から発信されたものだった。残りの32%は小切手現金化、郵便為替などによるものだった。
カルテルによる活動は主にシナロアとハリスコで行われている。ここは、主にシナロア・カルテルとハリスコ・ヌエバ・ジェネラシオン・カルテルが活動する地域だ。
報告書によると、中国の化学薬品サプライヤーは、フェンタニル前駆体物質を販売するために電子商取引プラットフォームを利用している。
支払いは銀行振り込みとオンライン電子送金で行われている。
フェンタニルの取引に関与している国は、メキシコと中国に加えて、カナダ、ドミニカ共和国、インドがある。これらの国々は、前駆体化学物質とフェンタニルの別の供給源に、違法なオンライン薬局を通じてつながっている。
中国は依然として「フェンタニル前駆体化学物質と錠剤プレス機械の主要な供給源」であり、フェンタニル取引につながる化学物質の50%近くが中国東部の広東省、浙江省、河北省にあると報告書は述べている。
武漢市と石家荘市は、フェンタニルの前駆体販売に関する最も多くの銀行報告に関連していた。
米国でフェンタニルの取引で重要な役割を果たしている州には、カリフォルニア、フロリダ、ニューヨークがある。この3州には、最も疑わしい銀行報告が多く、確立された麻薬流通ネットワークを持つ大都市圏と関連していた。
「FinCENの分析では、カリフォルニア州とアリゾナ州の南西部の国境郡に相当数の疑わしい銀行があることも指摘されている」
密売人は主に現金やピアツーピア送金(個人間送金)で取引している。他の麻薬取引では、ダークネット市場での麻薬販売を含め、ビットコインによる支払いも使われている。
フェンタニルの収益のマネーロンダリングの一部は、中国のプロのマネーロンダリング組織を通じて行われた。報告書は、これらの組織が「カルテルに代わって違法なフェンタニルの収益の移動」を促進した可能性があると指摘している。
中国人グループは、地下銀行を使って、米国でドルを調達しており、こうして、外国からの資金調達に対する公式の規制を回避している。
これに関連して、財務省は今週、フェンタニルの大規模な押収に関連するメキシコの麻薬密売組織のリーダーを公に特定した。
外国資産管理局は、フェンタニル、コカイン、ヘロイン、メタンフェタミンを米国に密輸したとして、ベルトラン・レイバ・オーガニゼーション(BLO)のリーダーで、メキシコ人のジーザス・アルフレド・ベルトラン・グスマンに制裁を科した。
BLOは、米国へのフェンタニルの移動と流通に大きく関与しているグループであり、過去20年間、コカインの最大の供給者であった。
ベッセント氏は「ベルトラン・グスマンとBLOは、暴力的な活動を平然と続け、人を死に至らせる薬物を密売し、地域社会を脅かし、重要な地位にある当局者を標的にしてきた。その一方で、犯罪から利益を得てきた」と述べた。
BLOは暴力的な麻薬組織の一つであり、当局によると、銃撃戦、殺人、誘拐、拷問、暴力的な借金の取り立てなどに関係している。
財務省が制裁発表の中で明らかにしたところによると、たとえば、軍の襲撃によって2009年12月にBLOのリーダー、アルトゥーロ・ベルトラン・レイバが殺害されると、武装集団がメキシコの海兵隊員の家族を殺害した。
昨年12月、メキシコ警察はシナロア州で史上最多の1000キロ以上のフェンタニルを押収押収した。これは2000万回分のフェンタニルに相当する。
ジーザス・ベルトラン・グスマンは
「エル・モチョミート」として知られ、エル・チャポとして知られるシナロア・カルテルのリーダーで米国に収監されているホアキン・グスマン・ロエラの甥である。
ベルトラン・グスマンに対する制裁は、象徴的なものであり、彼の米国内のすべての財産と権益を凍結する。この措置は主に、ベルトラン・グスマンの活動の詳細を公開するためにとられた。