麻薬カルテルのフェンタニル密売は中国の対米非対称戦の一環-報告

(2025年7月3日)

2025年4月29日火曜日、バージニア州北部のDEA研究所で、フェンタニルの小瓶を手にする麻薬取締局の上級法化学者ジョナサン・ダムケ。(AP Photo/Mark Schiefelbein)

By Bill Gertz – The Washington Times – Updated: 5:36 p.m. on Tuesday,July 1, 2025

 中国は、合成麻薬フェンタニルの密売カルテルへの秘密裏の支援を通じて、米国に対して非対称戦争を展開している-公開情報に基づく報告書が指摘した。

 中国共産党とその軍事部門、中国人民解放軍(PLA)は、メキシコのカルテルによるフェンタニル密売を、世界資本主義のリーダーである米国に対する兵器として利用している。これは、元軍人と民間の諜報専門家で構成されるシンクタンク「中国共産党生物脅威イニシアチブ」が今年、発表した報告書の結論だ。

 報告書は、中国共産党とメキシコ麻薬カルテルのつながりを指摘し、フェンタニルの密輸を、中国で「殺手●(金偏に間)」「暗殺者の棍棒」と呼ばれる、劣勢を覆すための古代の武器の現代版だと説明している。

 弱い軍隊が強力な勢力(この場合、米軍)を破るための武器としてフェンタニルが使用されている。

 フェンタニルは中国にとって戦略的ツールであり、中国が進める「超限戦」の一部だ。超限戦では、より強力な米国、同盟国と対峙する際に、PLAが持つ弱点を補うため、非対称兵器や秘密計画を幅広く活用することを提唱している。

 報告書は「中国共産党は、米国を標的とし、弱体化させ、最終的に解体し、台湾を征服し、インド太平洋を支配し、中国の支配と絶対的なコントロールに基づく新たな『国際システム』を再構築するという戦略的意図を変えたり、撤回したりする兆候を示していない」と述べている。

 3人の報告書の共著者の一人、ライアン・クラーク氏は、報告書の作成中に収集した情報から、メキシコの麻薬カルテルの拠点が米国内の各地に存在し、暗殺者の棍棒のコンセプトに基づき、フェンタニルを生物化学兵器プラットフォームとして米国への直接攻撃手段として使用できることが明らかになったと指摘した。

 元工作員としてアジアで豊富な経験を持つクラーク氏は「非国家の違法活動と国家主導の敵対的戦略の境界を故意に曖昧にするこの手法は、中国共産党(CCP)とその情報機関、特に統一戦線工作部と国有中国企業の特徴だ」と述べた。

 報告書は、CCPが支援するメキシコのカルテルが西側諸国に対して生物化学戦争を展開しており、中でも米国は最大のリスクにさらされていると説明している。

 「大変な被害を受けているが、組織のネットワークに関してしっかりとした情報を集められれば、弱点を見つけ出し、形勢を逆転することは可能だ」

 「これらの米国のシンジケートが崩壊すれば、わが国の食料・農業部門に対する国家安全保障上の脅威は劇的に減少する。その逆もありうる」

 中国から収集した公開情報に基づいて作成された報告書は、CCPの世界的な覇権達成にとって米国が主要な阻害要因になっていると指摘している。

 PLAは軍事力が十分でなく、運動エネルギー兵器を用いた従来の戦い方では世界的戦略目標を達成できないことを認識している。この点は、最近実施されたイランの核施設に対するB2爆撃機とトマホーク巡航ミサイルの攻撃で浮き彫りになった。

 「そのため、彼らは戦略的目標を達成するための唯一の選択肢は、米国のシステムの主要な『制御点』である国内の食料供給網に対し、『ルール無用の』非伝統的戦争を仕掛けることだと判断している」と報告書は指摘している。

 連邦当局は最近、デトロイトで3人の中国人がミシガン大学の実験室で、米国への農業テロに利用可能な研究に従事していたとして起訴した。

 PLAにとって現代の暗殺者の棍棒とは、全体的に米国の戦闘力が優位にある中で、その重大な脆弱性を見つけ出すことだ。その後、こうして見つけ出した脆弱性を正確に標的とし、計画的な奇襲攻撃をかける。これらによって、米国が事態を処理し効果的に対応する能力を急速に麻痺させる。

 報告書は、「米国の指導者らと国家安全保障機関は、地理的に分散し、ネットワーク化され、高度に適応能力を持つメキシコを拠点とする脅威グループに直面しており、その数は指数関数的に増加している。これらのグループは、中国共産党の戦略的支援を受けて、米国に対する極秘生物化学兵器作戦に積極的に関与している」と指摘している。

 トランプ大統領は2月、開かれた国境と大量の不法移民を理由に国家非常事態を宣言した。開かれた国境と大量の不法移民は、フェンタニルの密輸を助長していた。

 大統領令により、フェンタニルの流入を阻止する取り組みの一環として、中国、メキシコ、カナダに関税が課せられた。

 2月に署名した大統領令には、「中国共産党(CCP)は、中華人民共和国(PRC)政府と企業に最終的な支配権を握っており、PRCの化学企業に対し、フェンタニル、関連する前駆体化学物質の輸出を補助金などの奨励策で支援してきた。この化学物質は、米国で違法に販売される医療用麻薬合成オピオイドの製造に用いられる」と明記されている。

 報告書は、カルテルが国境を越えてスムーズに活動していると指摘している。

 報告書によると、CCPはカルテルに、前駆体化学物質、医薬品グレードの錠剤製造施設、国際的な資金洗浄能力を提供している。

 秘密戦争とは、起源を明確せずに軍事的な効果を達成することを指す。

 報告書は、フェンタニル混入のヘロインが短期間で使用者を死亡させたり、重度の障害を負わせたりする可能性が極めて高いと指摘、この薬物の取引が純粋に商業的なものか、またはCCPの資金源からの隠れた補助金で市場を維持しているのかという疑問を提起している。

 また、合成オピオイドは、コカインやヘロインなどの「天然」麻薬が流通するドイツ、フランス、イタリアなどの西欧諸国では、公共の秩序の崩壊や人的被害を引き起こしていない。

 報告書は、米国と欧州の薬物問題の差は、米国では「CCPの国家支援、組織化、補助金、戦略的支配」がある点だと指摘している。

 フェンタニルの密売収益の資金洗浄からも、中国が米国民を標的とする薬物戦略に関与していることを示す手がかりが得られる。

 報告書によると、「CCPはメキシコを拠点とし、米全土に及ぶ脅威ネットワークを基本から設計し、稼働させ、戦略的に支配している。現在、このネットワークは、合成麻薬を運んだり、違法に入手した資金を洗浄したりするために利用されている」。

 「しかし、このネットワークは複合的で、全体または一部を短時間で変更し、米国の食料供給を直接脅かす他の種類の非伝統的兵器を移動・展開させる能力を持つことを認識することが重要だ」

 また報告書は、合成麻薬の輸送に利用される主要ルートがあり、さらにカルテルによって米農業部門で働かせるために数多くのメキシコ人などラテンアメリカ人が送り込まれ、米国の食料安全保障に「急激に拡大する直接的なリスク」を及ぼしていると指摘している。

 「中国共産党(CCP)が、秘密裏に展開可能な人工的に設計された人獣共通感染症病原体の開発において『世界的なリーダー』であることはよく知られている」

 中国ハルビン市に拠点を置くハルビン獣医研究所は、国家農業研究センターの一部門であり、人工的に開発された武器化可能な人獣共通感染症病原体の研究を実施している。

 報告書は、中国のフェンタニル密輸ネットワークにおける役割は複雑で、分散化・分割化されており、調査したり、対策を講じたりすることは困難だと指摘している。

 報告書は、フェンタニル密売に関与する中国とメキシコのネットワークを完全に解明し、情報収集を行うよう求めている。

 情報を基に明確な全体像が描ければ、米当局は「CCPが支援し、特にわが国の食料・農業部門を標的とする合成麻薬密売シンジケートとその脅威ネットワークを精密に攻撃できる」。

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