韓米同盟の将来に高まる不安 韓国に左派系大統領

2025年4月22日火曜日、韓国のソウルで、ドナルド・トランプ米大統領(中央)のマスクをかぶったデモ参加者が、トランプ大統領の関税政策に反対し、韓国の韓徳洙(ハン・ドクス)大統領代行と崔相穆(チェ・サンモク)財務相の辞任を要求する記者会見に出席した。(AP=共同)
By Andrew Salmon – The Washington Times – Friday, July 11, 2025
【ソウル(韓国)】外交専門家らは、韓国と米国の指導者が、75年間敵国が成し遂げようとして、できなかったことを実現してしまうのではないかと懸念している。それは、両民主主義国の同盟関係を破綻寸前まで悪化させることだ。
東南アジアで11日、韓日米の高官が会合を開いた。同じ日、北東アジアでは、3カ国の軍用機が戦略的に重要な島の上空で共同訓練を実施し、将官らが地域の抑止力について議論した。
友好的な雰囲気の中で写真撮影が行われ、軍事面でもいい兆候が見られるものの、より深い懸念を和らげるものではないかもしれない。
米国では、リベラルな新韓国大統領、李在明氏が二国間同盟を損なうのではないかと懸念がくすぶっている。
韓国では、トランプ米大統領が貿易と戦略の問題をリンクさせることで、両国関係に悪影響を及ぼすのではないかという懸念が生じている。特にトランプ氏は、韓国への関税措置と米軍駐留を結びつけようとしている。
外交官らが話し合い、首脳が協議し、戦闘機が轟音
米国、韓国、日本の外交トップは、マレーシアのクアラルンプールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の傍らで40分間の会談を行った。
3カ国はいずれもASEAN加盟国ではないが、会談には、米国のマルコ・ルビオ国務長官、日本の岩屋毅外相、韓国の朴潤柱外交部第一次官が出席した。朴氏は、6月に発足した李政権の外相候補であり、現在、公聴会が行われている。
韓国メディアによると、3カ国は、北朝鮮の非核化に対する断固たる決意を表明した。
また、11日、ソウルでは、3カ国の軍最高幹部が年次会合を開催した。
米統合参謀本部のダン・ケイン議長は、北朝鮮と中国が「自らのアジェンダを推進するという明確かつ明白な意図を持って、前例のない軍事力増強を進めている」と指摘し、同席した各国の軍幹部らに、「私たちは、能力構築から任務の真の意味での分担に至るまで、持続的かつ定期的な関与を通じてパートナーシップを発展させる将来への道筋を共に照らし出している」と述べた。
また、韓国と日本の戦闘機は、韓国の済州島に近い国際空域で米軍のB52戦略爆撃機と共同訓練を実施した。
リゾート地でもある済州島は、半島南部に位置し、上海の東北部にあり、黄海と東シナ海の間という戦略的に重要な位置にある。
中国の海軍基地、海軍造船所、3つの艦隊司令部のうちの1つは、黄海沿岸にある。さらに、朝鮮半島の東海と西海を往来する北朝鮮の艦艇は、必ずこの海域を通過する。
済州島の海軍基地は、韓国と駐留米軍にとって、第一列島線内での作戦を実施するには理想的な拠点だ。
11日に実施された会合は友好的なものだったが、専門家らは両国の関係に懸念を示している。
李在明氏は新しい現実主義者か、古い左派か
一部の専門家は、12月の戒厳令発令の試み後に保守派の尹錫悦大統領の弾劾で権力を掌握した李氏を、筋金入りの過激派と見なしている。
かつて日本を憎み、中国と北朝鮮との関係強化を支持していた李氏は、青瓦台(大統領府)が手の届く範囲に近づくと方針を転換した。
自身のリベラルな民主党の看板を「中道右派」へと掛け変え、「現実主義」的な政治を掲げた。韓米同盟を維持し、米国が長年望み、尹氏が築いた日本との新たな3国間関係を維持すると誓った。
今のところ、その約束は守られている。
李氏の最初の主要な外交活動は、6月のカナダでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)で日本の石破茂首相との会談だった。その会談は順調に進み、石破氏は数日後、東京の韓国大使館を訪問し、60年の外交関係を祝った。
また、李氏の国家安全保障顧問が最近、ワシントンを訪問し、ルビオ氏に李氏とトランプ氏の首脳会談を設定するよう求めた。
それでも、米国の保守派は強い警告を発し続けている。
保守派の評論家ゴードン・チャン氏は6月、米政治紙ヒルに掲載された論説で、李氏は「ほぼ確実に米軍を韓国から撤退させたいと考えている」と主張、キャリア初期に米軍を「占領軍」と呼んだことを強調した。
チャン氏は、李氏が「反米、親中、親北朝鮮の左派として統治する可能性がある」と警告した。
だが、韓国大統領が米韓同盟を終了させようとすれば、困難な道のりが待っている。ソウルにある牙山研究所の2025年の世論調査では、韓国人の96%が同盟の必要性を認め、80.1%が韓国駐留米軍を支持した。
ソウル在住で、「ザ・ニュー・コリアンズ」の著者マイケル・ブリーン氏は、「韓国の全体的な発展は、米国が提供した傘の下で可能になった。韓国が民主主義国家になって以来、政治の両陣営ともそれを変えることは望んでいない」と述べた。
2017年から2022年まで文在寅大統領が率いた政権は、日本との関係を史上最悪の状態にまで悪化させた。しかし、文氏は、これまでの韓国大統領よりも頻繁に北朝鮮の指導者と首脳会談を行ったものの、制裁を解除したり、米国との同盟関係を絶ったりすることはなかった。
ソウル延世大学の国際関係専門家、ジェフリー・ロバートソン氏は、「李氏の党には反米的な要素もあるが、それはごく一部であり、李氏は可能な限り現実的な対応を取るだろう。これまでの進歩的な大統領と同様、李氏も中道路線を堅持するだろう」と予測している
トランプ氏の韓国戦略に関する懸念
一部には、米国から伝えられる最新ニュースを懸念する声もある。
ロバートソン氏は、「それは、トランプ氏が米国で誰の意見に耳を傾けるかによる。李氏は反米という印象をトランプ氏が抱くとすれば、それは間違っている」と述べた。
在韓米軍の削減、あるいは朝鮮半島外での任務のための「柔軟な」軍隊の運用が検討される可能性がある。今週の閣議でトランプ氏は、韓国は在韓米軍の駐留費用をもっと負担すべきだと訴えた。
一部の人々にとってより不安なのは、トランプ氏が別々の課題を一緒に扱う習慣があることだ。
韓国の退役将軍、チョン・インボム氏は「トランプ氏は貿易と安全保障を結びつけているが、私はそれに同意できない。それらは別々に扱うべきだと思う。彼は在韓米軍を交渉の切り札として扱っており、それには強い不安を感じる」と述べた。
この方法では、韓国の過激な左派を刺激し、逆効果になる可能性があるためだ。
チョン氏は「韓国の一部のリベラル派は北朝鮮を安全保障上の脅威と見なしていないため、米軍削減と関税の交換条件を受け入れる可能性があり、それは愚かなことだ」と述べた。
トランプ氏は今週、両国間の貿易合意が8月1日までに成立しない場合、韓国に対し25%の関税を課すと述べた。
関税が、2008年の米国産牛肉輸入反対デモ以来、韓国で沈静化していた大規模な反米感情を再燃させる可能性を懸念する韓国人もいる。
李政権とつながりのあるソウル在住の知識人は「トランプ氏が韓国に対し関税戦争を仕掛け、米軍撤退を脅し、防衛費増額と負担増を要求すれば、韓国人の大多数はトランプ氏と米国を批判するだろう」と述べた。
外交面でも多くの難題が待ち構えている。
政府スポークスマンと見なされたくないため匿名を希望したこの知識人は「李氏は、同盟関係を維持し、3国間の関係を尊重したいとの意向を明確にしている。しかし、中国との協力的なパートナーシップと、ロシアとの外交関係の改善も望んでいる」と述べた。