荒れる国際秩序 露朝が世界を主導へ-専門家

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)は、2025年5月9日(金)、ロシア・モスクワで開催された「勝利の日」軍事パレード後、北朝鮮の将校たちと会談しました。これは、第二次世界大戦中のソビエト連邦がナチス・ドイツに勝利した80周年を記念する式典の一環として行われたものです。(ガブリール・グリゴロフ、スプートニク、クレムリン・プール写真 via AP)
By Andrew Salmon – The Washington Times – Friday, July 18, 2025
【ソウル(韓国)】侵略的なロシアと超軍国主義的な北朝鮮の同盟が強化される一方で、弱体化した西側は今後、荒れた世界秩序に対処できなくなり、露朝が世界を主導するようになる――一人の著名専門家がこう指摘した。
アンドレイ・ランコフ氏は「北朝鮮はロシア向けに弾薬を生産できる唯一の国であり、実質的に兵士を前線に派遣できる唯一の国だ。北朝鮮の兵士が優秀であることは証明された。私はこれが始まりに過ぎないと考える。彼らが現代戦の技術を深く理解すれば、さらに優秀になるだろう」
ランコフ氏はロシアで生まれ、ソ連時代には平壌の金日成総合大学で学んだ。現在はソウル国立大学の教授として、北朝鮮の動向をウオッチし、英語とロシア語を話す人々に情報を発信している。
ランコフ氏は、2024年にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記が締結した二国間提携は「純粋に取引的なもの」だが、北朝鮮にとって「莫大な利益」をもたらすものだと述べた。
韓国の情報機関は、北朝鮮がロシアに最大1200万発の砲弾を供給したと報告している。展開した兵力は1万2000~1万3000人程度とみられている。
その数は持続可能だ。ワールド・ポピュレーション・レビューの「2025年国別軍事規模報告書」によると、北朝鮮は中国、インド、米国に次ぐ世界第4位の軍隊を保有している。128万人の兵力を擁し、110万人のロシアを上回っている。
北朝鮮の軍隊の大部分の質は低いが、約20万人は精鋭部隊とされている。
中国、ロシア、イラン、北朝鮮の独裁国家群CRINKが一体性があるのかどうかを巡る議論がある中、ランコフ氏は、イデオロギーを過大評価すべきではないと主張する。
「現在現れつつある世界は、1700年代と非常に似ている。この時代のほぼすべての同盟は利害関係を巡る連帯だった。イデオロギーは全く無関係だった」
正恩氏の北朝鮮軍のロシア派兵は、中世欧州の恐るべきスイス傭兵部隊のような冷酷な新ビジネスの先駆けとなる可能性がある。
ランコフ氏は「北朝鮮は、世界中の友好国に部隊を派遣することで利益を得られるようになる」と述べた。
大規模で激しい紛争が再燃する中、ロシアと北朝鮮は戦闘経験を積んでいる。両国は、戦闘能力で西側よりも優れていると考えている。
ランコフ氏は「先進国は、過去半世紀、開発途上国への懲罰的な遠征を行い、紛争を起こしてきたが、今、私たちが過去のものだと信じ込んでいた実際の戦争を戦う必要に迫られているのかもしれない」と述べた。
銃とバター
ランコフ氏はワシントン・タイムズに、「60年から70年間、北朝鮮はロシア人にとって狂った場所と見なされてきたが、その評判は変わっていない。しかし、不快な同盟国であっても、彼らに対して同情を抱くことがある。そして北朝鮮は、この戦争でのロシアの唯一の同盟国だ」と述べた。
新千年紀を迎えたロシアは孤立に直面し、数十年間にわたり孤立に耐えてきた北朝鮮に新たな展望が開けている。
ランコフ氏は「ロシア政府は徴兵兵士を戦場に送ることを避ける傾向にあるため、北朝鮮は極めて重要だ。ロシア政府は現在、極めて高い支持を得ているが、徴兵兵士を戦場に送ることで支持が失われることを理解している」と述べた。
クルスクで戦った北朝鮮兵士は、損害は大きかったが、ウクライナによって、ロシア兵士よりも体力があり、団結力が強く、攻撃的で、射撃技術が優れていると評価されている。
ロシア政府は契約兵士への支払いを増額しており、北朝鮮兵士を派遣することは経済的にも合理的な選択だ。
ランコフ氏は「北朝鮮が兵士に対してどれだけの報酬を受け取っているかは不明だが、ロシアの志願兵よりも安価であることは確実だ」と述べた。
北朝鮮兵士の活動はロシア領内に限定され、ウクライナ本土での戦闘には参加していない。モスクワの匿名の情報筋は、この状況が継続する可能性が高いと述べた。
「プーチンがウクライナで北朝鮮兵士を使用しないのは、それが北大西洋条約機構(NATO)の派兵を招く可能性があるためだ」と同氏は述べた。
それでも、北朝鮮の部隊は国境や施設を守り、ロシア兵を作戦に専念させることができると同筋は付け加えた。
しかし、ランコフ氏は戦争が長期化すれば北朝鮮兵がウクライナ国内で戦闘に参加する可能性があると推測している。
ロシアからの北朝鮮への見返りの兆候が表れている。
ウクライナの情報筋は、北朝鮮の弾道ミサイルの精度が向上していると指摘、ロシアからの誘導技術の移転を示唆した。ロシアはドローン製造技術も提供していると考えられている。
北朝鮮でロシアの防空システムが確認されており、艦艇の推進システムや指揮管制システムの供与も疑われている。
農業に適さない地理的条件を持つ北朝鮮は、食料も受け取っている。
ランコフ氏は、「ロシアのブログでは、平壌の店でロシアのチョコレート、缶詰、ソーセージが販売されているとの指摘が見られる。さらに、北朝鮮のメディアは小麦粉とパン製品の健康効果を強調しており、ロシアの供給を示唆している」と述べた。
7.4マイル(約11.9キロ)の北朝鮮とロシアの国境を越える輸送が増加している。
ランコフ氏は「両国を結ぶ国境を越える鉄道橋に加え、道路橋の建設が進められている」と述べたが、国境の両側の道路は未整備の状態だ。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が今月、元山を訪問した後、モスクワと平壌を結ぶ週2便の航空便の開通が発表された。
北朝鮮の電力網は天然ガスを使用しておらず、ランコフ氏はロシアは十分な石油を供給していないと考えている。
ラブロフ氏は「一部は輸送されている可能性があるが、高コストな燃料パイプラインの建設は議論されていない」と述べた。
そのため北朝鮮は、鴨緑江の下を走る専用パイプライン経由で中国から燃料を調達する状況が続いている。
労働力も関心事の一つだ。
ロシアは北朝鮮のエンジニアリングと労働人材の導入計画を発表した。ロシア極東では人口が少なく、民間労働力の輸出は可能だ。
ランコフ氏は「北朝鮮は30万から40万人の市民を派遣できるだろう」と指摘、フィリピンが労働力輸出で多額の外貨を獲得している点を指摘した。
次は何か。「当面、ロシアは北朝鮮を必要としている」とランコフ氏は述べた。
同氏は、ウクライナやロシアが現在の作戦強度をいつまでも維持することは難しいと考えており、ウクライナの抵抗が1918年のドイツのように突然崩壊する可能性があると指摘した。ただ、低強度の長期的な膠着状態が定着する可能性もあるという。
いずれにせよランコフ氏は、北朝鮮とロシアが驚くべき繁栄を享受しており、両政権は安定していると指摘、どちらの政権も崩壊する可能性は低いとの見方を示した。
「私たちは希望的観測ではなく、世界の現実を見なければならない」
また同氏は西側は「動員する能力と深刻な経済的犠牲に耐える能力」を再学習する必要があり、一部の自由主義的な思想を再調整する必要があると述べた。
ランコフ氏は冷戦後、「西側は世界が安全だったため、古い『力と栄光』型の愛国心を捨て去る余裕があった」と述べた。
同氏によると、現在、西側はイスラエルやトルコのようなモデルに沿った強い共有されたアイデンティティーを再構築する必要があるという。
「歴史は、国家の誇りを育むために、多少の排他主義を交えて教えられてきた。自分の息子たちが兵士になるかもしれない場合、それは非常に有用だった。それは歴史よりもプロパガンダだったが、残念ながら必要悪であり、今また必要悪になりつつある」