私立高にAI導入、教師も教科書も不要に

写真は2023年2月2日、ニューヨークで撮影されたOpenAIウェブサイトのChatGPTページのテキスト。アメリカの成人の大多数は、人工知能ツールが2024年の大統領選挙で虚偽や誤解を招く情報の拡散を増やすと考えている。これは、AP通信NORCセンターとシカゴ大学ハリス公共政策大学院による新しい世論調査の結果のひとつである。(AP Photo/Richard Drew, File)
By Sean Salai – The Washington Times – Tuesday, August 5, 2025
私立のアルファスクールでは、人工知能(AI)プログラムが毎朝2時間、生徒一人ひとりに合わせた数学、科学、語学、読解の授業を行い、人間の「ガイド」が彼らを励ましながら見守っている。
1日のうち4時間は、フロリダ州とテキサス州にあるアルファの八つのK12(幼稚園~高校)キャンパスで、ガイドが生徒を率い、ケータリングメニューを企画したり、8キロのサイクリングを行ったりといった実践的な「生活スキル」プロジェクトに取り組ませる。
2014年に夫とともにアルファを創設したマッケンジー・プライス氏は、「ガイドは、子供たちが自発的な学習者として成長できるよう、動機付けや感情面でのつながりに重点を置いている。AIがそれを奪うことはない」と語る。彼女は自らを「フラストレーションを抱えた母親」と呼び、子供たちがデジタル技術を学習に取り入れる手助けをするために学校を立ち上げた。
現在、約600人が在籍するアルファは、年間授業料が最大で7万5000ドル(約1100万円)に上る。2022年にチャットGPTが世界的ブームとなって以来、こうしたAI主導の学校や学習プログラムは急増している。
プライス氏によると、この秋にはカリフォルニア州、ノースカロライナ州、バージニア州、ニューヨーク州、アリゾナ州、フロリダ州、テキサス州にさらに12のアルファ校が新たに開校する予定だ。
拡大を続けるほかのAI学習プログラムには、アンバウンドアカデミー、スクールAI、リトルリット、プレンダ、アクトンアカデミー、そしてカーンアカデミーのAIソフト「カーンミゴ」などがある。
ワシントン・タイムズが取材した複数の関係者は、こうしたプログラムは生徒それぞれの学習速度やニーズに合った指導が可能だと評価しており、中には、アルファの生徒が同世代の上位1~2%の成績を収めていると指摘する声もあった。
メリーランド大学グローバルキャンパスでコンピューター科学を教えるサイバーセキュリティー専門家のキャンディス・スカーボロー氏は、「AIが運営する学校は、学習のためのGPS(全地球測位システム)のようなものだ。生徒の現在地、つまずきやすいポイント、学び方の好みに応じて常に進路を調整する。教師はダッシュボードで進捗(しんちょく)を監視し、AIでは解けない壁にぶつかった時に介入する」と語った。
一方で、一部のAI学習プログラムでは、ゲーム的なアルゴリズムが監督なしでは若者のスクリーン依存を助長する危険があるとの警告もある。
行動心理学者でAIリテラシー企業ヒューマン・ボイス・メディアのCEO、ボブ・ハッチンズ氏は、「これが子供の創造力や、人と衝突した時の対処、話し合い、単に他人と一緒にいる力にどんな影響を与えるかはまだ分かっていない。柔軟性を評価する親もいるが、子供が一日中画面を見つめ、実際の友達がいないことを心配する声もある。グループ課題やライブチャットを取り入れるプラットフォームもあるが、多くのAI主導学校は本質的に孤立を生みやすい」と述べた。
生成AIチャットボットは、膨大な情報データベースを使ってテキスト、画像、音楽などを生成するための質問づくりを支援するツールとして、過去3年間で爆発的に普及した。
複数の報告によれば、AIの利用は学校の方針整備を追い越し、数百万人の生徒が監督を受けずに使い始めている。
今年3月に米国の高校生3682人を対象に行った学習アプリ「ブレインリー」の調査では、期末試験対策にAIを使う予定と答えた生徒は67%で、前年の59%から増加した。
ダラス独立学区の元理事で、北テキサスの恵まれない子供たちのメンター団体CHOICE財団を創設したジェシカ・バートニック氏は、「AIは近道、怠惰、そして期待値の低下という文化を招いた。生徒はもはや概念や言語に取り組もうとせず、思考を機械に外注して先へ進んでしまうのだ」と語った。