サッチャー生誕100年 元英首相が今も尊敬される理由

(2025年10月28日)

1985年2月20日、ワシントンD.C.のホワイトハウスで、英国のマーガレット・サッチャー首相が米国のロナルド・レーガン大統領と会談した。(AP通信/J.スコット・アップルホワイト、ファイル写真)

By Joseph Hammond – The Washington Times – Sunday, October 26, 2025

 マーガレット・サッチャー元英首相の生誕100周年を迎え、大きな足跡を残した英国初の女性首相を追悼する催しが英国をはじめ世界中で開催されている。

 政治家としてのサッチャーは、1982年のアルゼンチンとのフォークランド紛争での勝利や、冷戦の終結につながったロナルド・レーガン大統領との協力など、外交政策で大きな成果を挙げた首相として記憶されている。その激しい反共主義と妥協のない指導者としてのスタイルからソ連からは「鉄の女」と呼ばれた。

 1925年10月13日にグランサムで生まれ、父親は食料品とタバコの店を経営していた。在任期間は、過去150年以上にわたる英首相の中で最長。グランサムでは生誕100周年を記念して「サッチャー・フェスティバル」が開催された。出身校でツアーが行われ、古い通信簿が見られるほか、サッチャー時代を振り返るポストカードも展示された。

 一方、ロンドンに拠点を置くシンクタンク、マーガレット・サッチャー・センターは来月、その思想、政策に関する会議を開催する。12月にはカールトンクラブでガラディナーを実施する。ハンガリーのブダペストでは銅像が建てられ、香港で記念ディナーが行われた。

 サッチャーはオックスフォード大学で化学を学び、短期間専門家として働いた後、法律と政治に転向した。今なお、英国の政治家として大きな存在感を維持している。

 保守党で最も最近首相になったリシ・スナク氏は、2023年の演説でサッチャーの精神を引き合いに出し、保守党は今も「食品雑貨店の娘」の党だと訴えた。同じ年、野党労働党の党首だったキア・スターマー氏は、論説でサッチャーを賞賛した。

 サッチャーの最初の重要演説から41年後の今月初め、保守党党大会で、「マギー(サッチャー)の100周年」をテーマにしたパーティーが開催され、サッチャーを象徴する衣装が展示された。

 一方でサッチャーのレガシー(遺産)は依然、同党に重くのしかかっているとの主張もあり、世論調査によると、与党労働党と移民に焦点を当てた新興右派政党リフォームUKの両方に後れを取っている。

 ジョン・ウィッティングデール議員は「サッチャーへのノスタルジアは、同党が14年間政権を握っていた最近の時期を考えると、驚くべきことではない。デービッド・キャメロンからボリス・ジョンソンに至るまで、保守党の指導者たちは、さまざまな点で失敗して退陣してきた」と述べた。

 サッチャーの元政治秘書であるウィッティングデール氏は「サッチャーは3回の総選挙で勝利し、1度も敗れなかった。彼女は保守党と国全体の両方にとって変革的な存在と見なされている」と強調した。

 米国の保守政治はレーガンのレガシーの影響を何十年も受けてきた。サッチャーとレーガンの任期はほぼ一致している。

 ブダペストのレーガン像からそれほど遠くない場所で10月3日、新しいサッチャー像の除幕式が行われ、英国の保守派著名人らが参加、そのうちの一人がウィッティングデール氏だ。両首脳は冷戦終結に向けて緊密に連携していた。

 ウィッティングデール氏はよく引用されるテレビインタビューの一節に触れながら、「(ソ連最後の最高指導者)ミハイル・ゴルバチョフに最初に目をつけたのはサッチャーだった。ゴルバチョフを政界の期待の新人として『一緒に仕事ができる』相手と表現したことはよく知られている」と語った。

 サッチャーも元ハリウッド俳優のレーガンも、周りから見たイメージを外交に効果的に利用する方法を理解しており、カメラを嫌うことはなかった。

 トランプ大統領はさまざまな面で、優れた演出は優れた政治戦略でもあるというこの姿勢を本能的に受け継いでいる。メディアの注目は盾にもなり、剣にもなる。

 ウィッティングデール氏は「サッチャーの外交政策の中心にはレーガンとの強い絆があった。(トランプ氏とサッチャーの)2人ならうまくいっていたと思う。トランプ氏はサッチャーの強さに敬意を払い、サッチャーもトランプ氏を強い指導者として認めていたことだろう」と述べた。

 しかし、特に自由貿易に関しては、サッチャーとレーガンが対立したこともあったと専門家は指摘する。レーガンとは強い絆で結ばれていたが、衝突することもあった。1983年のグレナダ侵攻が最も顕著だった。グレナダは英連邦諸国で、イギリス国王を国家元首としていた。

 サッチャー政権でさまざまな役職を務めたジリアン・シェパード氏は「サッチャーなら米国で法の支配が脅かされている状況を深く憂慮したはずだ」と話した。

 サッチャーに関する著書のあるシェパード氏は、サッチャーは民主主義と立憲主義を固く信じていたと強調した。

 「彼女は根っからの民主主義者で、議会と立憲政治の力を信じていた」

 またシェパード氏は、サッチャー氏が自分が変革をもたらす人物であり、国を変えるだけでなく、未来の世代の女性たちに道を開く人物であることを理解していたと述べた。

 「彼女は今でも人々の記憶に残っているが、それは女性だったからだ。彼女はそれまで誰も行ったことのない場所に行った。今、人々がその足跡をたどろうとしている」

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