制裁下の北朝鮮に高級リゾートがオープン 専門家も疑問の声

(2025年7月1日)

2025年6月24日(火)、北朝鮮の元山・カルマ海岸観光地区を視察する金正恩委員長(中央)と李雪主夫人(後方)、娘。北朝鮮政府が配信したこの画像に描かれたイベントを取材するため、独立ジャーナリストはアクセス権を与えられなかった。この画像の内容は提供されたものであり、独自に検証することはできない。情報源から提供された画像には韓国語の透かしがある: 「KCNA」とは朝鮮中央通信の略称である。(朝鮮中央通信/韓国通信社 via AP)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Friday, June 27, 2025

 【ソウル(韓国)】北朝鮮で高級ビーチリゾートがオープンしたことに、専門家らは困惑している。

 新しいリゾートは大規模で、質も高いとみられ、厳しい制裁を受け、貧困に苦しむとされる北朝鮮でこのようなリゾートが建設されたことに疑念の目が向けられる。北朝鮮は、新型コロナウイルス大流行後に国境を閉鎖し、最近、国境を再開したばかりであり、なぜこのような大規模リゾートを建設する必要があったのかに関心が集まっている。

 また、そのターゲット層についても疑問が浮上している。外貨を携えた外国人観光客が訪問者の一部を占める可能性はあるが、専門家は大多数が国内からだろうと指摘する。

正恩氏が視察

 北朝鮮の金正恩総書記は24日、娘の主愛さんと妻の李雪主さんを伴い、「元山葛麻ビーチリゾート」の開業を視察した。韓国の聯合ニュースによると、国営メディアが28日に報じた。

 葛麻は、同国東海岸の景勝地、元山湾に位置する約4キロのビーチで、非武装地帯(DMZ)から北へ約93キロの地点にある。

 北朝鮮国営メディアは、正恩氏らがプール脇に座り、仲間がウォータースライダーを滑り降りるのを見守る様子が写った写真を公開した。。

 別の写真では、正恩氏が、ビーチには不似合いな黒のスーツ姿で、バルコニー付きのリゾート施設のテラスでリボンを切る姿が写っている。

 全体像を見ると、高層ビルと地中海スタイルの赤屋根の低層ビラが、パラソルが点在する真っ白なビーチ沿いに並んでいる。

 空港と2つの鉄道駅が隣接し、7月1日にオープン予定。報道によると正恩氏は「北朝鮮の観光文化の確立において主導的な役割を果たす」と述べた。

 元山は観光地としての長い歴史があり、20世紀初頭に定住した最初の外国人居住者らから愛されてきた。

 正恩氏の父、故金正日氏が、湾に豪華なヨットを停泊させていたことはよく知られている。

 元米プロバスケットボール選手のデニス・ロッドマン氏の随行団がこの船を訪れたことがあり、ロッドマン氏は、正恩氏一家に娘がいることを最初に明らかにした。

 韓国メディアは解説記事で、正恩氏の妻が1年半ぶりに公の場に再登場した点に焦点を当てていた。正恩氏が10代の娘を後継者とするために前面に出しているとの見方もあり、実現すれば、同国初の女性指導者ということになる。

 また、李氏が持っていたグッチのハンドバッグにも注目が集まった。高級品の輸入は制裁されているため、外交ルートを通じて持ち込まれた可能性が指摘されている。

 式典の注目すべき来賓にはロシアの外交官が含まれており、ロシア人観光客の誘致を狙っているのではないかとみられている。

 両国は国境を接しており、2024年の二国間同盟締結後、関係は急速に改善された。この同盟により、北朝鮮の兵士がウクライナとの戦争でロシア側として戦闘に参加している。

観光関連の問題

 正恩氏は、葛麻に加え、平壌の水族館、馬息嶺スキー場、神聖な場所とされる白頭山の山岳リゾート建設を監督してきた。平壌には高級アパートが次々と建設されている。

 これらの壮大なプロジェクトの資金と資材の出所は謎に包まれている。

 北朝鮮との首脳会談を行った3つの韓国政府を補佐してきた学者、文正仁氏は「北朝鮮の経済は完全な謎だ。私も理解できない。新型コロナウイルスの大流行の中、北朝鮮は驚くべきペースでさまざまなアパート複合施設を建設していたが、これらの建設資材をどう調達したのかは分からない」と述べた。

 文氏は、すべての韓国大統領北朝鮮訪問団に参加した経験から、一部は中国から輸入された可能性があると推測したが、新型コロナによる国境封鎖を考慮すると、その点も疑問が残るという。

 「未知の要素が多すぎる」と彼は述べた。

 もう一つの疑問は、これらのプロジェクトが誰を対象としているかだ。ムン氏は、中国、ロシア、東南アジアの観光客が主な対象だと推測している。

 中国メディアは2018年に約20万人の中国国民が北朝鮮を訪問したと報じたが、バスでの日帰りツアーで訪れた人数は把握できていない。また、葛麻は中国国境の検問所から遠く離れている。

 韓国からの観光客が大量に訪れる可能性はあるが、1998年から2016年までDMZの北側の特別観光・投資区域への訪問客は急増したものの、現在両国関係は冷え切っている。

 ソウル国立大学の北朝鮮専門家、アンドレイ・ランコフ氏は、北朝鮮の国際観光のポテンシャルは、冒険好きな西洋人や、最近ではウクライナでの負傷から回復中のロシア兵など、ニッチ市場に限定されるのではないかと考えている。

 ランコフ氏は「北朝鮮の当局者は、現代の国際観光(高級観光や大衆観光)がどのように機能するかを理解していない。彼らは、自国が観光資源に乏しいことを理解していない」と述べた。

 安定せず、不定期の交通手段も問題だ。さらに、旅程は柔軟性に欠け、厳重に監視され、インターネットやモバイル通信の問題もある。

 ランコフ氏は「さらに、彼らは自国の国際的な評判がどれほど悪いのか理解していないのだろう」と述べた。

 2008年に韓国人観光客が射殺され、2017年には拘束された後、昏睡状態で帰国し死亡した米国人観光客の事例がある。

 これらすべては、北朝鮮の観光政策の成功には国民が訪れることが不可欠であることを示している。

忠誠心を維持する

 正恩氏は2012年に最高指導者に就任したが、海外留学の経験がある。その経験が、正恩氏を高級レジャーへと向かわせ、エリート層の忠誠心の強化へとつながっている可能性がある。

 ランコフ氏は「スイスから戻ったばかりの彼は、臣民の生活が刺激に欠けていることを理解し、彼らに必要な施設を提供しようとした。あらゆる種類のレジャー活動に強い関心を払った」

 北朝鮮の「成分」によるヒエラルキーには、大まかに言って、核心階層・動揺階層・敵対階層の3つがある。

 2012年に成分に関する著書「Marked for Life(決められた人生)」を出版したロバート・コリンズ氏によると、核心階層は人口の約23%を占め、その上位1%は国を運営する超エリート層だ。

 コリンズ氏は「彼らは多くの特権を与えられているため、忠誠心が非常に強い」と指摘している。

 しかし正恩氏は、1990年代半ば、社会主義国家の分配システムの崩壊を受けて生き残りのために出現した、新しいタイプの北朝鮮国民、すなわち起業家「金主」の忠誠も確保する必要がある。

 金主は、それ自体が階級というわけではないが、中国と国境を越えた貿易を行い、基本的な「ジャンマダン(闇市)」を立ち上げた。これらの市場は、当初は闇市として始まったが、経済にとって非常に重要になったため、現在では標準的なものとなっている。

 この10年間で、多くの金主は、国内需要を満たすために、貿易から消費財製造への投資へと移行してきた。

 しかし、彼らは政権に要求したり、脅威となったりするような中産階級を形成しているわけではない。庇護がなければ、存続できない。

 コリンズ氏は「金主は、懸命に努力すれば成功するだけの資金力はあるが、通常、その成功には汚職が大きく関わっている」と述べている。

 「動揺階層の人でも、行動力があり、適切な役人や警察官を汚職に巻き込むことができるなら、成功することは可能だ」

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