下院、中国視野にスパイ対策の大改革要求 改革法案を可決

(2025年9月19日)

2025年9月3日水曜日、北京の天安門前で行われた日本の第二次世界大戦降伏80周年を記念する軍事パレードに先立って掲げられた中国国旗。(AP Photo/Ng Han Guan)

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, September 17, 2025

 下院情報特別委員会のトップは、外国のスパイ活動を無力化する任務を負う複数の米防諜機関の活動の目的が曖昧であり、制度の大幅な改革が必要だと述べた。

 同委のリック・クロフォード(共和党、アーカンソー州)委員長は、2017年以降の公聴会と監視活動を通じて法律の改正が必要であることが浮き彫りになったと語った。

 クロフォード氏はワシントン・タイムズとのインタビューで「われわれの防諜機関は分断され、連携が取れていない。脅威に対して予防的措置を取ることができず、決定的な証拠を探すことしかできない」と述べた。

 改革の主眼は中国による米国での積極的な情報収集活動にあるとし、ロシア、イラン、北朝鮮、キューバによるスパイ活動も対象となると述べた。

 同委員会は先週、2026会計年度情報権限法案の主要な改革案を可決した。法案は下院本会議での採決待ちだ。

 この法案は「戦略的防諜強化・改革統一法(SECURE法)」と呼ばれる。

 法案の主眼は、国家情報長官室内に国家防諜センターを設置することにある。

 このセンターは、現在の国家防諜・安全保障センターに取って代わる。現在のセンターには、中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、国防情報局(DIA)、国家安全保障局(NSA)、軍、その他の治安機関内の防諜部門の活動を統合する調整能力がない。

 提案されている新センターの任務は、防諜活動の調整、指揮、実施だ。法案は「攻撃的防諜活動の実施」に関する指針と要件の確立を重点課題と明記している。

 専門家らは、米国の防諜活動には攻撃的、先制的な部分がなく、防御的アプローチに依存してきたと指摘する。

 同センターは外国スパイ事件による損害評価を担当する。従来、こうした評価は失敗を隠蔽しようとする情報機関によって歪められることが多かった。

 極秘の対スパイ作戦には、潜伏中の外国スパイを亡命者として勧誘する活動、二重スパイ(ダングル)を用いた外国スパイの摘発、あるいは「モール」(外国の潜入工作員)の積極的な捜索などが含まれる。

 法案は、防諜活動の定義を「外国スパイの脅威からの防御」から「外国情報活動の抑止、妨害、調査、利用」を義務付けるものへと格上げする。

 ここでは、欺瞞を用いて外国のスパイを無力化し、外国の情報機関の影響工作に対抗することが提案されている。所長の権限は強化され、トランプ大統領の主要な顧問として防諜活動を行う。一方でトゥルシー・ギャバード国家情報長官のもとでも働くことになる。

 クロフォード氏は、防諜活動改革の計画立案でギャバード氏と緊密に協力したと述べた。外国の諜報活動の脅威は増大しているが、それに対する米国の防諜活動は進化していない。

 クロフォード氏は「だから私たちは、方針を立て直し、とりわけ敵対する大国に対する防諜活動について、より積極的に取り組む必要があると感じている」と述べた。

 この改革により、さまざまな政府機関のセキュリティー担当者で構成される省庁間国家防諜タスクフォースが法制化される。クロフォード氏は、中国のスパイ活動が大きな懸念事項だと述べた。

 同氏は中国のスパイ活動について「危険信号は危機的なレベルで点滅している」と述べた。

 また、ロシア情報機関はもはやKGBのような秘密警察ではないが、依然として重大な懸念材料だという。

 クロフォード氏によれば、上院版の権限法案には改革案は含まれていない。しかし上院議員らは改革法案について議論しており、下院・上院合同委員会での最終法案採択に期待を寄せている。

 「上院議員らがわれわれの立場に賛同してくれることを願っている」とクロフォード氏は語った。

 FBIは国内防諜活動を担当している。だが、失敗が続いており、最近ではニューヨークのFBIのチャールズ・マクゴニガル元防諜部長が汚職容疑で有罪判決を受けたほか、2018年にはトランプ氏とロシアの共謀疑惑に関する捜査(現在は信憑性を失っている)を指揮したピーター・ストローク捜査官が解任されている。

 1960~70年代のCIAの防諜機関は独立して活動しており、1987年に死去したジェームズ・ジーザス・アングルトン長官の下で、CIA、政府全体で強力な役割を果たした。アングルトン氏は、国内でのスパイ活動を暴露し、「CIA内のソ連のスパイに対する異常なほどの執念」が批判され、それが原因で追放された。

 アングルトン氏退任後、情報機関の多くは彼のスパイ狩りを「病的な思考」と呼び、防諜活動は格下げされた。

 その後、極めて深刻なスパイ浸透事件が途切れることなく続いた。ロシアにCIA工作員全員の名簿を渡したCIAの裏切り者オルドリッチ・エイムズや、同じくロシアのためにスパイ活動を行ったFBIの反逆者ロバート・ハンセンなどがその例だ。

 アングルトン氏退任後、連邦政府のほぼ全ての機関が外国スパイによる情報漏洩被害を受け、主にロシア、中国、キューバへの機密流出が発生した。

 近年の情報機関の大惨事の1つは、2010年以降中国でCIAが採用した工作員のほぼ全員を失った事件だ。CIA内部の裏切り者と技術的欠陥が重なり、中国国家安全省がCIAのスパイ網を解体した。

 2023年、ウィリアム・バーンズCIA長官は壊滅的な損失の後、中国における工作員ネットワークの再構築で進展が見られると述べた。

 元CIA職員チャールズ・「サム」・ファディス氏は、改革法案が米情報機関の防諜活動をより強力に推進する助けとなると指摘した。

 「しかし根本的には疑問が残る。誰がそれを実行するのか。誰が作戦を指揮するのか。FBIはこの分野で何をすべきか全く分かっていない。CIAは優位性を失った。これを変えなければ、単に『もっとうまくやれたら』という願望で終わってしまう」

 元国家防諜局長のミシェル・バンクリーブ氏は、「政府効率化省(DOGE)」による無駄や不正の削減の取り組みが防諜上のリスクを生み、ロシアや中国などの諜報機関による情報窃取の危険を高めていると警告した。

 バンクリーブ氏はヒル紙への寄稿で、「防諜機関の長を務めた者として、敵対的な諜報機関がこの絶好の機会を利用しようと必死になっていることに疑いの余地はない」と主張した。

 「DOGEが敵対勢力に敷いたレッドカーペットは、最良の状況下であっても防諜上の難題となるだろう。だが現在、わが国の防諜体制は綻びだらけで崩壊しかけている」

 バンクリーブ氏によれば、米防諜機関がカバーできるのは、米国内に常駐または一時的滞在の最重要外国情報要員の10%未満だという。

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