大学の女性学・ジェンダー研究が縮小 政権のDEI排除受け

2024年2月25日(日)、アイオワ州アイオワシティにあるアイオワ大学キャンパスで、学生が日差しを浴びながら宿題に取り組んでいる。ウィチタ州立大学、アイオワ大学、カリフォルニア大学サンタクルーズ校は昨年、女性学プログラムを廃止した。これは教育省が人種に基づく教育やトランスジェンダー教育を提供する学校への連邦資金提供を打ち切る可能性を示唆した後の動きである。
By Sean Salai – The Washington Times – Tuesday, February 17, 2026
トランプ政権が多様性・公平性・包括性(DEI)教育の排除を進める中、全米の大学で女性学・ジェンダー研究プログラムの廃止や縮小が加速している。
昨年はウィチタ州立大、アイオワ大、カリフォルニア大サンタクルーズ校が女性学プログラムを終了した。教育省が人種に基づく授業やトランスジェンダー関連の授業を行う大学に対し、連邦資金の打ち切りを示唆したことがその背景にある。
先月にはテキサスA&M大が、政府方針と学生の関心低下を理由に段階的廃止計画を発表した。
メリーランド州のタウソン大も今秋、履修者減少を受け、ジェンダー研究を学部組織から学際的学位プログラムへ格下げする。
イーストカロライナ大でミュージカルを教えるフェミニスト作家ジェシカ・ドイルメケス教授は「反DEIや反ジェンダーイデオロギーの動きに伴う政治的圧力により、一部州や大学制度ではプログラムの縮小、名称変更、閉鎖が進んでいる」と語った。
大学関係者によると、トランプ大統領の政策は、テキサス州、フロリダ州、カンザス州、アイオワ州、ノースカロライナ州など保守系州が近年導入したジェンダーアイデンティティー関連科目の抑制策を後押ししている。
フロリダ州のニューカレッジやトレド大など複数の大学が2023年以降、女性学・ジェンダー研究を削減した。数十校が政治的報復を避けるため、科目再編やトランスジェンダー関連内容の削除を行っている。
南フロリダ大教授で、フェミニズムに批判的なマーク・デファント氏は「全面的な後退というより、様子見の姿勢を保ち、目立たない形や別の名称のプログラムへ移行する動きが多い」と指摘した。
ペンシルベニア州スワースモア大でジェンダーセクシュアリティー研究を統括するパトリシア・ホワイト氏は、トランプ政権の政策によりトランスジェンダー学生の置かれる環境が厳しくなったと述べた。
「特にトランスジェンダーやジェンダー非適合の学生の不安が強まっており、ジェンダー・セクシュアリティーセンターのような課外プログラムの必要性が高まっている」と語った。
リベラル色の強いカリフォルニア州やメリーランド州では、大学側はジェンダー研究削減の主因を履修者減少に求めている。
タウソン大では昨秋、専攻学生は過去最低の11人となり、2018年の最多38人から大幅に減少した。
メリーランド州アナポリスのセントジョンズ大のノラ・デムライトナー前学長は、就職を重視する学部生が専攻や副専攻よりも資格証明や他分野との併設科目を選ぶ傾向が強まっていると語った。
「女性学・ジェンダー研究は雇用に直結する印象が薄く、それが低迷の一因だ」と述べた。
教育省によると、この分野の専攻者数は10年以上にわたり着実に減少している。
女性学の学士号取得者は2014~15年度の2131人から2022~23年度は1665人へと22%減少した。
一方、米芸術科学アカデミーの推計では、2023年に女性学の授業を履修した学生は7万4000人超に上る。
元大学幹部で大学財務の健全性を評価する「カレッジバイアビリティー」を設立したゲーリー・ストッカー氏は「私見だが、市場縮小により、これらの専攻を廃止する大学が増えている」と述べた。
ホワイトハウスは14日、大学が税金を政治色の強い科目に使うのを止める取り組みを歓迎した。
報道官のリズ・ハストン氏は「トランプ政権は、高等教育機関が、財政に責任を持ち、急進的なDEI政策を排除するよう取り組みを進めている」と述べた。
◆フェミニズムの起源
米大学の女性学・ジェンダー研究は女性解放運動にさかのぼる。
1969年に名門大学で初めて正式科目が開設され、翌年にはサンディエゴ大が最初の女性学部を設置した。2023年時点で276校が同様の学部を持つ。
保守系団体インディペンデント・ウィメンの政策アナリスト、ニーラジャ・デシュパンデ氏は「女性学・ジェンダー研究専攻には経済的価値も知的価値も生み出さないという問題がある。英語や歴史のように誠実に女性問題に向き合う人文学なら別だが、そうでもない」と批判した。
近年、女性学は男女平等の提唱を超え、LGBTQ関連の授業を含むことが一般的になった。「ジェンダー流動性」や出生時の性別を変えられるとの考え方を教える内容も多い。
ヒューストンのセントトマス大でカトリック女性・ジェンダー研究の修士課程を統括するリア・ジェイコブソン氏は、こうした内容が、政治ではなく純粋に研究を志向する伝統的フェミニストを遠ざけていると語った。
「この分野が学問なのか、運動なのかを巡って緊張関係が続いている」と電子メールで述べた。
一方、ジョージア大のティム・ケイン教授は、ジェンダー研究を政治問題化しているのはトランプ政権と共和党主導州の議員だと指摘した。
「現在の政治環境では、保守派が政権を握る州でこうした動きは続くだろう」と語った。
全米女性学協会は先月の声明で、政権の締め付けにもかかわらずこの分野は拡大していると主張した。
「現状に悲しみや怒りを覚えるのは当然だが、絶望してはならない。抵抗しなければならない」
◆不透明な将来
トランプ政権後の女性学・ジェンダー研究の行方については見方が分かれる。
カリフォルニア大ロサンゼルス校の教育学教授で、人種的公平性を専門とするタイロン・ハワード氏は「トランプ政権が終われば、状況は以前のように戻ると期待する人は多い。その一方で、もし共和党の候補がホワイトハウスでトランプ氏の後任となれば、これらの制限が常態化し、DEI関連プログラムの悪魔化が進むだろう」と語った。
一方で、履修者数の低迷や大学財政の悪化、さらに今後予想される大学出願者数の減少を踏まえると、いったん休止されたプログラムが再開される可能性は低いとの見方もある。
コーネル大法科大学院のウィリアム・ジェイコブソン教授は、「次の政権が民主党になれば、特に人種関連のDEIプログラムの多くはすぐに復活するだろう。しかし、ジェンダー研究が再び盛り上がるとは思わない。トランプ政権であっても、なくても、ジェンダー研究の時代は終わっている」と語った。
保守系団体、全米学識者協会(NAS)のピーター・ウッド会長は、今後、ジェンダー・女性学研究プログラムはリベラル州に集中すると予想する。
「民主党優勢の州では大きな支障なく継続するが、他地域では衰退し、やがて消えるだろう」と語った。
