電気自動車への移行には石炭が不可欠―専門家

(2021年7月15日)

Chargers for electric cars are displayed at an opening ceremony for a Revel electric vehicle charging hub in the Brooklyn borough of New York, Tuesday, June 29, 2021. (AP Photo/Seth Wenig)

By Haris Alic – The Washington Times – Thursday, July 8, 2021

 環境保護運動の長年の宿敵である石炭は、ハイテク電池に必要なレアアース(希土類)を供給することで、米国のガソリン車から電気自動車への移行に重要な役割を果たすことになる。

 しかし、バイデン大統領や環境保護団体がこれを受け入れるかどうかが大きな問題となる。

 石炭とその副産物には、電気自動車のバッテリーに必要な鉱物が多く含まれている。例えば、石炭の下にある最上層の岩石や堆積物には、ネオジム、ユーロピウム、テルビウムなどのレアアースが含まれている。

 これらの鉱物は、電気自動車のバッテリーをはじめ、アイフォーンやタブレットPCなどの家電製品の製造に欠かせない。これらの鉱物は技術的に重要であるにもかかわらず、石炭を採掘した後、その鉱物を含む堆積物はゴミとして処理されることが多い。

 さらに、石炭を燃やしたときに発生する年間1億4000万トンの灰には、コバルトやニッケルなどのレアアースが豊富に含まれている。この2つの物質は、電気自動車などのバッテリーに欠かせない。

 エネルギー業界の専門家によると、石炭を燃やしたり掘削したりする際に発生する副産物は再利用可能だ。

 テキサス・ミネラル・リソース・コーポレーションのアンソニー・マーチェス会長は、「今後3、4年の間に、石炭からの重要鉱物の開発が大幅に進むと思う」と述べている。

 石炭がレアアース供給につながることについてホワイトハウスに問い合わせたが、回答は得られなかった。

 バイデン氏の気候顧問であるジーナ・マッカーシー氏は、二酸化炭素を排出せずに電力を作り出す基準を定めることが目標であることを明確にしている。

 マッカーシー氏は最近「大胆に行動しなければならない」と述べた。

 石炭を嫌っているのは、ホワイトハウスや環境保護団体だけではない。

 今週、米国の大手企業約80社が、電力網から石炭などの化石燃料を取り除くことを要求する書簡を連邦議会議員に送った。

 ゼネラル・モーターズ、アップル、グーグル、ペイパル、イーベイなどの企業は、「多くの米国人が、すでに気候変動の影響を感じている。クリーンな電力網は、米国が経済全体でよりクリーンなエネルギーへと移行するために不可欠だ」と指摘している。

 しかし、石炭を重要な鉱物の長期的な供給源とするには困難が伴う。

 現在の問題点の一つは、石炭灰には微量のレアアースしか含まれていないことだ。つまり、企業が利益を得るためには、大量の石炭灰と、それをまとめて処理する確かな方法が必要となる。

 テキサス州のグリーンフィールドでレアアースの国内供給の強化に取り組んでいるマーチェス氏は、こうした問題が民間投資の誘致を難しくしていると指摘する。

 「石炭灰が十分にあるかどうか、ビジネスとして成立するだけの重要な鉱物が得られるかどうかが分からないプロジェクトに、誰が3000万ドルから4000万ドルを投じるだろう。これまで、石炭灰に誰も目を付けなかったのには理由がある」

 石炭くずから重要鉱物を抽出するプロセスは分かっているが、そこに手広く投資している企業は少ない。これは、石炭の上の堆積物の中にミネラルが均一に集まっているわけではないためだ。

 連邦政府や民間企業からの研究費が不足していることもあり、石炭からレアアースを抽出するプロセスを完成させるための研究はまだ初期段階にある。

 エネルギー省は最近、このテーマの研究に1900万ドルの助成金を発表したが、専門家によると、これは必要な額をはるかに下回っているという。

 このような状況下では、石炭と電気自動車の関係は、これまで通りという結果になってしまいかねない。

 20世紀のほとんどの期間、アパラチア地方や中西部の工業地帯で採掘された無煙炭が、米経済に必要な電力の供給源だった。しかし、2000年代初頭以降、石炭は天然ガスをはじめとする他のエネルギーに着実に取って代わられている。

 それでも、エネルギー情報局によると、米国の年間発電量の約20%を石炭が占めている。電気自動車への移行で電力需要が増えれば、この数字は増える。

 エネルギーの専門家によると、電気自動車がガソリン車に取って代わるには、安定した豊富な電力供給が必要となる。すべてが電気自動車に移行した場合、年間の電力消費量は2倍以上になるという試算もある。

 しかし、ホワイトハウスは、その不足分を補うために石炭に目を向けようとはしない。その代わりに、バイデン氏は、太陽光発電や風力発電を中心とした電力セクターの脱炭素化を支持した。

 トランプ大統領の大統領移行チームで環境保護庁(EPA)を担当したスティーブ・ミロイ氏は、「全体的に大失敗だ。電力網は、電気自動車が要求するような24時間365日の需要に対応するようには作られておらず、石炭を排除して、風力や太陽光への依存を強めることで達成できるものではない」と述べた。

 評論家は、ホワイトハウスが石炭を嫌うことは、中国を利するだけだと主張している。共産主義国家である中国は、アフリカや南米での採掘事業や貿易パートナーシップを通じて、重要な鉱物の世界市場を支配している。

 ロンドンのベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社は2019年、電気自動車の高度なバッテリーに使われる原材料の80%を中国が生産していることを明らかにした。

 昨年だけでも、米国はレアアースの鉱物や化合物の約80%を中国から輸入している。

 石炭の産地であるウェストバージニア州のデビッド・マッキンリー下院議員(共和)は、「米国は重要な鉱物の加工をほぼ100%中国に依存している。これは受け入れがたいことであり、われわれの国家安全保障に悪影響を及ぼす。中国に頼るのではなく、国内の重要鉱物のサプライチェーンの発展に力を注ぐべきだ」と述べている。

 共和党は、石炭の研究を拡大するだけで、それは可能になると主張している。

 マッキンリー氏は、「わが国の豊富な石炭資源を考えれば、重要鉱物の国内市場を開拓する上で、石炭が重要な役割を果たすことは間違いない」と述べた。

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