アフガンのレアアース 中国食指、獲得優位に 米国苦境から対中依存懸念
By Jeff Mordock – The Washington Times – Tuesday, September 7, 2021
米国がアフガニスタンから撤収し、タリバンが支配を固める一方で、中国は、アフガンのレアアース(希土類)獲得で有利な立場に立っている。米バイデン政権は経済・気候変動対策で、発電、運輸の改革、半導体産業の再建を目指しているが、どれも膨大な量の鉱物資源を必要とし、資源をめぐる対中依存が高まるのではないかと専門家は指摘する。
タリバンは、政権獲得で国内の莫大(ばくだい)な量の鉱物資源の支配を手に入れた。電気自動車(EV)、携帯電話などに欠かせない資源だ。米レバノンバレー大学のクリス・ドーラン教授は、「ぐずぐずしていると(中国に先を越され)残りかすを奪い合うという事態になりかねない」と警鐘を鳴らす。
また「米国は、人権などをめぐって条件を付けたり、警告したりするが、中国は気にしない」と指摘、「次世代が、コンピューターや技術などに関して中国に依存するようになれば大惨事だ」と危機感をあらわにしている。
2010年の国防総省の報告によると、銅、鉄、金、リチウムなどアフガンの鉱物資源の価値は約1兆㌦。19年、アフガン政府は、3兆㌦との見積もりを公表した。
中国はアフガンと国境を接し、アフガンの資源開発で地理的に有利だ。しかし、米国はタリバンの人権侵害、テロへの関与などの恐れから、アフガン政府の資産の大部分を凍結、国際金融機関にも支援停止を求めている。
ワシントン大学の地政学者、スコット・モンゴメリー氏は、「中国は、鉱物資源支配を外交のツールとして積極的に使ってきた」と指摘、そのための取り組みは今後さらに強化されると予測する。
過去には、日本が中国漁船を拿捕(だほ)したことを受けて、ハイブリッドカー、風力発電に必要な鉱物の対日輸出を停止。今年2月には、最新鋭戦闘機F35の製造に欠かせない17種のレアアースの輸出制限を検討していることを明らかにするなど、資源をてこに西側に揺さぶりをかけている。
しかし、資源の開発には時間、技術、輸送などインフラへの投資が必要であり、時間がかかる。鉱物資源の生産の開始まで平均16年かかるという。
長年の紛争で、道路、発電所、鉄道は破壊され、洪水被害を受けやすい山岳部の道路の整備も必要になるという。
中国は、07年にアフガンの銅採掘計画に30億㌦を投じたが、インフラ整備の問題から失敗している。
だが、中国は13年に巨大経済圏構想「一帯一路」を開始し、70カ国以上で道路などインフラの整備に取り組んできた。アフガンの隣国パキスタンとの関係も良好で、ドーラン氏は、アフガン開発での中国の優位性を指摘する。