国境の混乱、米中部にも波及
By Stephen Dinan – The Washington Times – Sunday, September 26, 2021
ユタ州アイアン郡は、国境とはほぼ無関係のところだ。
しかし、ケネス・カーペンター保安官によれば、米国とメキシコの境界線の混乱はここにまで及んでいるという。今月、幹線道路での交通取り締まりで、保安官代理が無謀運転の運転手を捕らえ、5ポンド(約2.3㌔)のメタンフェタミンと8000㌦の現金を発見した事件もそのうちの一つだ。
カーペンター氏によると、州政府は保安官に対し、ホンジュラスのギャングがワサッチ山脈沿いでの麻薬取引を強化していると警告しており、アイアン郡のSWATチームの出動件数も「かなり増えている」。
カーペンター氏はワシントン・タイムズに、「国境が大きく開かれているため、コントロールができない。水門が開いてしまったので、より頻繁に見られるようになった。(麻薬の)パイプラインが急増し、フェンタニルの密売が急増し、犯罪行為が急増している」と語った。
ワシントンでは、米国とメキシコの境界を越え、内陸部に入ってきているという指摘も出ている。つまり、すべての地域が国境地域のようになっているということだ。
アイアン郡の経験は、それが事実であることを示唆している。
国境を越えた移民が国境沿いの州から拡散していることから、アイアン郡の住民らは、移民とともに新型コロナウイルスが拡大するのではないかと懸念している。
しかし、最も重要な問題は、麻薬とそれに続くものだとカーペンター保安官は言う。
麻薬の需要が急増しており、それは感染拡大のせいだというアナリストもいる。麻薬は、中南米のカルテルからすぐにでも入ってくる。
国土安全保障省の税関・国境警備局(CBP)は、国境や港に人員を配置し、密輸品を摘発する役割を担っているが、今年度はこれまでに約18万ポンドのメタンフェタミンを押収した。これは、年度残り1カ月の時点としては記録的な数字だ。
フェンタニルの押収量は1万ポンドを超え、昨年の記録(約4800ポンド)を更新した。
主に南部国境を通過する麻薬のうち、マリフアナだけが大幅に減少している。
国境問題の専門家らは、押収量の変化はいい判断基準となる。捜査官や当局者が増加を報告した場合、それ以上のものが国境を通過していることを意味する。
下院国土安全保障委員会の共和党トップであるニューヨーク州選出のジョン・カートコ下院議員は、20日の公聴会で国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官にこの問題について質問した。
カートコ議員は、「今年押収されたフェンタニルは、米国のすべての男女と子供を6回以上殺すのに十分な量だ」と指摘した。
フェンタニルの主な供給源は従来、中国であったが、米国への輸出規制が強化されており、メキシコの密輸組織がその穴を埋めている。また、米国に流入するヘロインのほとんどは、メキシコのケシ栽培農家から来ている。
ヘロインの流入量が増加している理由はいくつかあるが、専門家らが繰り返し指摘するのは、捜査官や警官が本来の業務から離れなければならないということだ。彼らは通常の業務から離れ、アフガニスタンから飛行機で運ばれた避難者への対応、1月以降に国境を越えてきた記録的な数の不法移民の子供や記録的な数に近い家族の子守を任されている。
ある議員は、テキサス州のある地区の国境警備隊員の75%が通常のパトロール業務から外されていると指摘し、マヨルカス氏を非難した。
ロブ・ポートマン上院議員(共和、オハイオ州)は、先週行われたマヨルカス氏との別の公聴会で、この1年間で薬物の過剰摂取による死亡者が急増し、特にオハイオ州で多くの被害が出ていると訴えた。
「需要を減らすことが重要だと考えている。出回る量が増えると、価格が下がり、手に入りやすくなる。さらに大きな被害が出る」
バイデン政権は、米国に人や麻薬の違法に送り込んでいるカルテルへの圧力を強化する計画を発表している。
財務省は22日、セルジオ・バレンズエラバレンズエラと仲間7人をキングピン法に基づいて麻薬密売人に指定し、米国内の資産を事実上凍結したと発表した。
政府の発表によれば、バレンズエラバレンズエラはシナロア・カルテルの一員であり、アリゾナ州ノガレスから国境を越えたメキシコ・ソノラ州ノガレスでヘロイン、メタンフェタミン、フェンタニルを扱っているという。
検察は、バレンズエラバレンズエラに対する3年前の麻薬密売容疑も発表した。
カーペンター氏は、彼の地域では麻薬が銃と結びついていると指摘した。
中毒者が銃器を盗み、それを麻薬と交換することで、より多くの武器が売人の手に渡っているという。
カーペンター氏は、「数年前までは、麻薬捜査に銃が絡むことはほとんどなかったが、今では当たり前のように、盗まれた銃が麻薬と交換されたり、盗まれた麻薬がラスベガスに持ち込まれて銃と交換されたりしている。国境が大きく開かれて以来、これらのルートを取り締まることが増えたように思える」と述べた。
国境問題だけではありません。
カーペンター氏によると、ユタ州で問題となっているのは、州の「ジャスティス・リインベストメント・イニシアチブ」によって、一部の薬物犯罪の分類が引き下げられたことだという。
カーペンター氏によると、その目的は、州の刑務所から人々を出し、その分の経費を依存症治療に充てることにあるが、結果的には、アイアン郡での投獄が増えたという。州は治療費を負担できず、中毒患者は拘束されたままだ。
カーペンター氏は、「再犯率が大幅に上昇しており、この人々に何度も対処している」と語った。