中国軍トップ、急激な核増強は「適切」と主張
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, June 14, 2022
中国の魏鳳和国防相は今週、人民解放軍(PLA)が核兵器を増強していることを認めたが、米国の戦略軍司令官が1960年代のソ連に匹敵する「戦略的ブレイクアウト(爆発的増強)」と呼んだ点については否定的な見方を示した。
PLAの魏鳳和上将は、核兵器で長い間、米ロの後塵を拝していた中国が、西部に推定350基の多弾頭大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41(DF41)」を配備するなど、核の増強を急速に進めているという報道について、中国当局者として初めて言及した。米国は核兵器の増強に懸念を抱いているが、魏氏は核兵器の増強は正常だと主張した。
魏氏はシンガポールで記者団に、「中国は適度で適切なレベルで核戦力を開発している。つまり、戦争という大惨事、特に核戦争という大惨事を回避するために、国の安全を守ることができるということだ」と述べた。
米戦略軍チャールズ・リチャード司令官は、中国の核兵器増強について爆発的と指摘、警鐘を鳴らしている。2021年8月、リチャード氏は中国が「戦略的ブレイクアウト」、つまり核戦力の異常で、大規模で、急速な増強を目指していると述べた。
先月、リチャード氏は上院公聴会で、中国があまりにも急速に核戦力を増強しているため、米国の情報機関がついていけなくなっていると述べた。
「要するに、私は戦略軍のスタッフにこう指示した。…中国が何をしようとしているかについて、情報機関が何を伝えようと、時間を半分にして考えれば、おそらく事実に近づける」
2年前、米国の情報機関の間では、PLAが10年後までに核弾頭の保有量を2倍に増やすかどうかという議論が交わされていた。
リチャード氏は「それはすでに起こっている。私が戦略軍司令官を務めている今だ」と述べた。
リチャード氏は、中国の核戦力の「最大かつ最も目に見える」増強は、ここ数年の間に中国西部に少なくとも360基のICBMの格納施設を新たに建設したことだと述べた。
しかし、ミサイル部隊の元司令官である魏氏は、中国の核戦力は純粋に防衛目的だと主張、紛争時に核兵器を最初に使用しないという中国の長年の核政策を改めて強調した。新たな格納施設については触れなかった。
2019年の北京での軍事パレードでは、米全土に核弾頭を着弾させることが可能な新型ICBM、東風41が披露された。
魏氏は「中国は50年以上にわたって能力を発展させてきた。目覚ましい進歩があったと言ってもいい」とした上で、中国の核政策は「一貫している」と主張した。
「自衛のための核兵器だ。最初に使うことはない。…中国国民が苦労して築き上げたものを守り、核戦争の惨禍から国民を守るために核戦力を開発した」
中国は長い間、約200発の戦略核弾頭を維持してきたが、少なくとも1000発の核ICBMを製造し、配備しようとしている。リチャード氏の評価では、新しい格納施設には少なくとも360基の東風41があり、このICBMは1基あたり最大10個の弾頭を搭載できるとされ、格納施設にあるICBMだけで少なくとも3600発の戦略弾頭を備蓄していることになる。
PLAはまた、通常弾頭または核弾頭を搭載できる短距離、中距離、準中距離ミサイルを開発してきた。
リチャード氏は5月4日に上院軍事委員会で、新しいICBM格納施設に加え、中国軍は追跡が困難な道路移動式ミサイルの数を倍増させたと述べた。
また、リチャード氏によると、PLAは現在、独自の空中発射弾道ミサイルを発射できる核搭載爆撃機H6Nの「本物の航空部隊」を配備し、晋級弾道ミサイル潜水艦は、南シナ海の基地から継続的に海上パトロールを行うことができるようになった。
リチャード氏はミサイル潜水艦について、「これだけではない」と述べた。
警報即発射
リチャード氏は、シンガポールでの魏氏の核政策に関する発言とは違い、中国が早期警戒システムを構築しており、核戦力部隊は警報即発射(LOW)あるいは攻撃下発射(LUA)攻撃を実施することが可能になっていると述べた。
中国の核戦力は、過去にはミサイル用の弾頭を分離していたが、近年は核戦力の即応性を高めている。
リチャード氏は、2021年7月の「部分軌道爆撃システム」(FOBS)」の飛行実験に言及し、「彼らは指揮統制体制を変えつつあり、われわれですらこの新兵器システムをものにしていない」と述べた。
リチャード氏はFBOSについて、極軌道を周回する核攻撃兵器で、「無限の射程を持ち、どの方位からも攻撃でき、素晴らしい性能を持つ極超音速滑空機」と述べた。
リチャード氏は、「歴史上、その能力を示した国はない」と指摘、PLAの増強について中国史上最大の増強であり、わが国や60年代初頭のソ連を含む歴史上のどの国の最大の増強にも匹敵する」と述べた。
魏氏は、国防と軍の高官らが集まる「シャングリラ対話」と呼ばれる年次会議で、ロイド・オースティン米国防長官と初めて会談した。
魏国防相は、中国が自国領土と見なす民主国家・台湾を併合するという中国政府の決定について、過去の発言を繰り返した。これに対し、国防総省の発表によれば、オースティン氏は会談について融和的な姿勢を示した。
オースティン氏は、アジアでの中国の行動がますます攻撃的になっているとし、中国を「ペーシングチャレンジ(米国の安全保障政策を左右する主要な脅威)」と訴えてきたが、中国がもたらす脅威を軽視しているように見えた。
声明によると、「(オースティン氏は)責任を持って競争を管理し、オープンなコミュニケーションラインを維持する必要性について議論した。長官は、人民解放軍が危機管理の改善と戦略的リスクの軽減について実質的な対話に参加することの重要性を強調した」
国防総省は何十年もの間、中国共産党の支配下にある軍隊であるPLAとより緊密なコミュニケーションを図ろうとしてきた。
しかし、そのような努力は何度も失敗に終わっている。
例えば、2001年に中国の迎撃戦闘機が米国の偵察機EP3と衝突した後、中国軍の指導者は米国の国防・軍指導者の呼びかけを拒否した。
魏氏は12日、日本、オーストラリア、インドとの4カ国同盟を太平洋で展開しようとする米国の取り組みは、米中対立につながる可能性があると述べた。また、中国はウクライナでの戦争のためにロシアに武器を提供していないと述べた。
国務省の軍備管理担当顧問だったトマス・グラント氏は、中国の核増強は戦略的抑止力よりも地政学的な威圧に使われると指摘する。
グラント氏は、中国は地政学的な現状を覆すために核兵器を使用する計画だと述べた。
グラント氏はシンクタンク、国立公共政策研究所が発表した最新の報告書の中で、「米国とその同盟国は長い間、国際関係を安定させるために核兵器に依存しており、核戦争と通常兵器の侵略の両方を抑止するために保有兵器を調整してきた」と述べている。
「対照的に中国は、核をめぐる新たな状態を作り出そうとしているが、それは、世界の安定を守るためではなく、近隣諸国や遠く離れた国々に対して、ますます強引な政策を追求することができるようにするためだ」