バイデン政権、アブラハム合意拡大に消極的
By Guy Taylor – The Washington Times – Wednesday, September 14, 2022
バイデン政権は、トランプ政権の「アブラハム合意」を慎重ながらも受け入れ、イスラエルと主要アラブ国の間の外交関係樹立に取り組んできたが、イランの脅威に対して強まっていた連帯を生かして、この歴史的合意を強化するまたとないチャンスを逃した。
トランプ大統領の特に重要な外交実績であるアブラハム合意から今週で2年を迎え、バイデン氏は、イランとの核合意の再建をめぐる厳しい交渉に注力する一方で、トランプ氏と補佐官らによるこの画期的な正常化合意の拡大には失敗したと指摘されている。
専門家らは、核合意再建に成功してもしなくても、中東のイスラム教スンニ派が主流派のアラブ諸国とイスラエルとの関係強化の機は熟していると指摘する。イスラエルは、シーア派の中心的国家イランと対立してきた。
合意が拡大されれば、情勢は大きく変わり、イスラエルの中東地域内での長期にわたる孤立は終わり、イランに対する統一戦線を構築できる。
民主主義防衛財団の中東専門家、ジョナサン・シャンザー氏は、「イランは双方にとって脅威であり、イスラエルとスンニ派国家の間の新たな連合にとっては明確なチャンスだ」と述べた。
トランプ氏の義理の息子、ジャレド・クシュナー氏は、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンなどアラブ諸国との合意の立役者で、バイデン政権がアブラハム合意を進展させないことに公の場で失望を表明した。これを受けて、シャンザー氏はコメントを発表した。
クシュナー氏は12日、アブラハム合意平和研究所と親トランプの「アメリカ・ファースト政策研究所」が主催し、合意2周年を控えて8日に開催した祝賀イベントで、「これまでの最大の失望は、もっと多くの国を参加させなかったことだと思っている」と述べた。
トランプ政権の補佐官として中東を担当していたクシュナー氏は、合意の交渉で大きな役割を果たした。アラブとイスラエルの指導者らに働き掛け、イスラエル・パレスチナ紛争をめぐる長い戦いを脇に置いて、直接的な経済、外交、安全保障をめぐる関係構築に取り組ませた。
トランプ、クシュナー両氏は米政界の長年の常識を破って、イスラエルとパレスチナが紛争状態にあっても、合意を進めることはできると主張していた。さらに、長期的には、イスラエルと近隣諸国とのつながりを強化すれば、パレスチナ人にとっての永続的な和解につながり得ると訴えていた。
交渉は2020年9月ワシントンで最高潮に達し、イスラエル、UAE、バーレーンの高官らが、国交正常化合意に調印した。アラブ諸国がイスラエルを公式に承認するのは、エジプトとヨルダンが中東の他の諸国と決別し、1979年と1994年にイスラエルとの外交関係を樹立して以来、初めてのことだ。
合意の呼び名は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の預言者にちなんで付けられたもので、最終的にはモロッコ、スーダンも加わった。