招かれざる客:バイデンのアフリカ首脳外交に影を落とす中国
By Guy Taylor – The Washington Times – Friday, December 9, 2022
ホワイトハウスは今週、アフリカ各国の首脳と3日間のサミットを主催する。バイデン政権は触れたがらないが、アフリカでの中国の軍事・経済的影響は拡大するばかりだ。
国防総省や外交政策の有力アナリストは、アフリカにおける米国とその同盟諸国の利益に対抗する形の中国の活動について警告してきた。しかしアフリカ大陸から49人の首脳が到着するにあたって、あまり中国に言及したくないようだ。
今週火曜日から木曜日まで開かれる米国・アフリカ首脳会議についてホワイトハウスは、「アフリカの要望に耳を傾け、それらに応じる」機会にする一方、「民主主義を活性化し、自由で開かれた国際秩序の強化」に焦点を当てる、としている。
ある政権担当者は近年、中国がアフリカ諸国に熱く執心していることに話を向けられたが、バイデン大統領が公言したような、世界的舞台で北京の上前をはねるサミット効果には触れたがらないようだ。
「今回の首脳会議は、アフリカ大陸との関係を本音で話し合うためのものだ。第三国とアフリカ諸国との関わりに云々するものではない」、政府高官は首脳会議の背景説明で記者にそう語った。さらに、「このサミットの基本認識は、アフリカが真に重要な地政学的プレーヤーだという点だ」と強調した。
「アフリカは世界で最速の人口増加があり、最大規模の自由貿易地域で、最も多様な生態系を有し、国連では最大の投票ブロックだ。今日の重要課題に対処するのに、アフリカの寄与、パートナーシップ、リーダーシップは不可欠だ」、同高官は木曜日、記者団に語った。
注目されるのは、中国がアフリカとの様々な取引で過去10年以上、米国を凌駕している現実と、米国が望んでいるものとを如何に調和できるか。先週のブリーフィングの時間にも、中国の習近平国家主席はサウジアラビアで丁重かつ豪華な歓待を受け、二国間および湾岸アラブ諸国首脳との会談に備えていた。
国際問題のシンクタンク「チャタムハウス」の分析によると、「2009年に中国はアフリカ最大の貿易相手国として米国を上回り、2021年の中国・アフリカ間の貿易総額は2,450億ドルを越え、2020年比で35%も増加していた」。
トランプ政権も公然と非難していたように、中国の共産政権はアフリカその他の発展途上国に債務の罠をかけるような、略奪狙いの融資に奔走し、政治的影響力を確保し、天然資源を浪費してきたという。
もちろん北京は、それらの非難を退けた。中国当局に言わせれば、これら融資はアフリカ諸国の主権を「無傷のまま」に残しており、政治的および物質的利益のためにアフリカに借金を背負いこませてきたのは中国ではなく、むしろ西側金融機関だ、と言い返した。
アナリストに言わせれば、中国がアフリカに執着しているために米国のイニシアチブが困難なものになったとしても、インフラ開発のテーマは米・アフリカ首脳会議で検討すべきだ。
合衆国議会が特認した「米中経済安全保障審査委員会」は2020年に警告を発し、北京によるアフリカのインフラ関連の資金供与には、借り入れ国が中国のインフラ供給者を選択するべき要件が往々にして含まれており、これが米国の参加をいっそう難しくしている、と指摘した。
同審査委員会のキャロリン・バーソロミュー副委員長は、北京が「アフリカ関与を活用し、国際舞台で支援を得られるよう画策してきた」との見解を表明した。
例えば、「中国はアフリカでの存在感を利用し、台湾を外交的に孤立させてきた」、同副委員長は言明した。
バーソロミュー女史の指摘によれば、大半のアフリカ諸国が台湾問題では中国を支持し、「南シナ海での北京の領有権支持を表明し、香港で起きた2019年の抗議活動でも北京支持の声明を発表していた」。
米国と中国の根深い競争はコンゴのような、サハラ砂漠以南に広大な国土を持ち、銅、コバルト、コルタン鉱石の世界トップ生産者の一か国で展開されている。これらの鉱物は高度な技術分野で不可欠なものが多く、中にはバイデン政権が気候変動と取り組むのに必要な多くの鉱物資源も含まれている。
米国・アフリカ首脳会議に先立って出版されたブルッキングス研究所の報告書では、「コンゴ民主共和国に豊富で貴重な資源がありながら、米国は同国や、これら鉱物の採掘分野に十分な投資をしておらず、この領域で影響力を中国に譲り渡してきた」と警告した。
「米国はコンゴとその鉱業分野に投資を加速すべきだ、その眼目は相互利益に基づくパートナーシップだが、具体的には平和と安全保障、経済の多様化、現地の利益最大化に焦点を当てることだ」、上述の報告書は主張した。「クリーンテクノロジー部門で、現地および大陸全般の価値連鎖を促すことも有益だ。」
市場と拠点
別の政府高官は木曜日、首脳会議の目標が「アフリカと米国の広範な基盤での経済的な機会」を促すことであり、気候変動の危機に対処しつつ、「新たな研究と技術を活用し、長期の可能性に投資することだ」と述べた。
国防総省は2007年に米国アフリカ司令部を設置して、変動する安全保障問題に対処し、いくつかのアフリカ諸国と、より整合性のある防衛関係を促進している。同司令部は、アフリカにおける中国の防衛動向にいっそう警戒を強めている。
スティーブン・タウンゼント陸軍将軍は2021年5月の時点で警告しているが、中国はアフリカ西海岸に主要な海軍港を設けるため暗躍していて、その港湾施設を大西洋に直接の支配力を行使できる中国の潜水艦や空母の拠点にしようとしている。
その警告を発した当時、タウンゼント将軍はアフリカ司令部を率いていたが、中国当局が海軍施設を配備できる拠点を探して、モーリタニアからナミビア南部に至る国々と接触していたことを指摘している。「彼らは軍艦を装備したり補修できる場所を探している」、同将軍はAP通信に語っている。
一方、アフリカ全体で民主的な政府を倒そうとした軍事クーデターが急増していることについて、多少なりとも中国がアフリカおよび世界で影響力を高めてきたことに関係している、とアナリストは読んでいる。また歴代の米政権を批判し、アフリカ諸国の民主主義の発展に投資するなど、もっと一貫した戦略を展開できなかったと指摘している。
多くのアフリカの国々にとって、中国は取引に当たって、政治や人権にからんだ条件を付けないので、都合のいいパートナーなのだ。
アフリカでは過去2年間、未遂も含めて七回のクーデターがあり、これは過去40年以上の期間で最も頻繁に起きたことになる。そして権力に飢えたような軍事派閥がチャド、マリ、スーダン、ブルキナファソ、ギニアなど資源の豊富な国々を支配している。ギニアビサウとニジェールではクーデターの試みが失敗した。
アナリストによると、それらの根本には人種や宗派による亀裂、文民政府の汚職や行政の不始末、民主主義が未熟で、民間の諸機関も脆弱または腐敗していることなどの原因があるという。
中国の責任を看過すべきではない、米国平和研究所のアフリカセンターを率いるジョセフ・サニー氏は強調した。
「中国はアフリカでクーデターを首謀する連中への、いわば救済システムを作りあげた。国連安全保障理事会がクーデター実行グループに懲罰・制裁を課そうとすると、ロシアと中国が一緒になって阻止してくれることを、クーデター予備軍の連中は知っている」、サニー氏は6月にワシントンタイムズに語っている。
「中国とロシアは国連安全保障理事会で拒否権を持っており、クーデターについて免罪の状況を作り出し、これらアフリカ諸国でクーデターを画策する連中の逃げ道を作り出している」、サニー氏は指摘した。
バイデン大統領のひと月にわたるアジア外交が話題を呼んだ後、米・アフリカ首脳のサミットは、同大統領の今年最後の重要な外交イニシアチブになると見られる。このサミットの狙いについて大統領は、平和と安全保障を促進し、気候変動に対処し、食料安全保障を固め、経済の関係強化を図り、民主主義と人権に対する共同責任を強化していきたい、と述べている。