紛争の世界が迫る三年目のバイデン政権
By Guy Taylor and Ben Wolfgang – The Washington Times – Thursday, December 29, 2022
2023年、バイデン大統領は任期後半を迎える。ウクライナで終わりの見えない戦争を続けるロシア、北朝鮮から増大する核の脅威、そして中国の軍拡が周辺に位置するアメリカの同盟国にもたらす威嚇など、錯綜する世界の課題に直面していくわけだ。
米政府の当局者は、ロシアのウクライナ侵攻に対応して西側を結束させたバイデン大統領の功労を賞賛したがる。しかし多くのアナリストは大統領の任期前半の二年間で、外交・国家安全保障上の成果と同程度か、それ以上の失敗もあったと見ている。
失敗の長いリストには、オバマ政権の対イラン核合意を蘇生させようとして頓挫していることや、トランプ政権がアラブ諸国とイスラエルの間に促進した、歴史的と言える「アブラハム合意」を発展させようとしなかったことが入るだろう。
しかし最悪の失態は2021年のアフガニスタン撤退と、その後のタリバン勢力による首都カブールの実効支配だ。撤退の残響は2022年も鳴り響き、バイデン批判派は出口戦略の不手際のおかげで、世界の米国への信頼が下がり、ロシアなど反米勢力を勇気づけたと厳しい。
とは言っても外交政策アナリストの多くは、ロシアによる二月の対ウクライナ侵攻に際して、バイデン大統領が北大西洋条約機構(NATO)をふくむ米国の同盟国を団結させ、ロシアに集団的な制裁を課す一方、ウクライナを軍事支援したことを評価している。
ただウクライナ戦略についてアナリストの一部には、ワシントンの外交政策担当者が2023年にウクライナでの戦況悪化リスクを過小評価していると警告する向きもある。
「我々はウクライナで挫折するリスクを過小評価しているのではないか」、ハーバード大学のスティーブン・M・ウォルト教授(国際関係)は最近、「外交政策」誌に掲載されたインタビューで次のように指摘した。
「ウクライナへの支援が最良の結果をもたらすと期待するあまり、一年後にウラジミール・プーチンが依然、ロシア大統領として権力を握り続け、ロシア軍も実は善戦していて、その反面でウクライナ軍が力の限界に近づき、ある日突然、別な戦況が立ち現れてくる事態を無視していないか」、同誌にコラムを掲載するウォルト教授は吐露した。
「来年の最良シナリオは膠着だ。双方とも相手方から決定的な戦果を挙げられず、その過程でウクライナ側がさらに深刻な被害と破壊を受けていることを見逃してはならない」(同教授)。そして最も可能性があるのは、「両者とも妥協の意思がなく、だらだらと傷つけあう膠着状態なのではないか」、ウォルト教授は述べた。
中国問題
バイデン政権の中国政策に関しては、重要な疑問が投げかけられている。議会保守派は、バイデン氏が北京に迎合し続けている、最近のG20首脳会議もその例だと懸念している。この首脳会議は非常に大きな意味を持ったが、批判派はバイデン大統領が譲歩し過ぎて、中国の習近平・国家主席が公式の場で対等に振舞えるようにした、と非難した。
北京絡みの文脈で「バイデンは軟弱だ」という見方は、2022年の最後に一気に強まった。12月上旬にホワイトハウスが主催した米・アフリカ指導者サミットで、米政府関係者は、中国がアフリカで強引な資源開発や軍事基地計画を策動していることに全く触れなかったからだ。
米国防総省や高名な外交政策アナリストたちはアフリカにおいて中国が、米国の国益やアフリカでの同盟諸国に挑むような活動をしていることを長年警告してきた。中国は2009年、アフリカ諸国の最大貿易相手国として米国を上回り、最近ではアフリカ西海岸に重要な海軍用の港湾を築くため暗躍している。
こうした要件があるにもかかわらず、穏健派やリベラル派の多くはバイデン氏について、中国共産党が軍事的な影響力を高め、国際システムの中で外交・経済力を発揮していることに対して、米国の同盟国を結集し、大国間競争の枠組みを構築していることに、一応の合格点を与えてきた。
中国の習主席が、民主・台湾を中国共産党の支配下に置くため、必要なら力を行使する、との決意を明らかにして米・中間の緊張が突然エスカレートした。
米国の有力なシンクタンク「外交問題評議会」は2023年の注目すべき外交問題として、「台湾をめぐる緊張」を上位にランクした。その理由として、米軍当局が「中国は2024年の前に台湾侵攻する可能性がある、と警告した」ことを挙げた。
同評議会は侵略が実際にありそうでない、と断りながら、「バイデン大統領は、条約で義務を負うわけではないが、攻撃が発生した場合に米国は台湾を守る、と言明した」ことに注目している。
それとは別に、外交問題評議会のジェームズ・M・リンゼイ上級副議長が書いた見解で、中国が台湾を軍事侵攻する代わり、ナンシー・ペロシ米国議会下院議長が今年8月に台湾訪問をした直後に中国が採った報復措置のように、中国は「台湾の防衛能力を見定め、台北に圧力をかけるような『灰色領域の行動』を加速させる」可能性があるとした。
少な過ぎで、遅過ぎなのか?
バイデン外交について評論家たちは、ホワイトハウスが中国、正式名称で中華人民共和国との潜在的対決に備えるに必要なことを充分実行していない、と主張している。
長く待たれて、ホワイトハウスが2年近くかけて制作した「国家安全保障戦略」が10月に公表されたが、一部のアナリストは同戦略文書が、中国やロシアにあまり注意を払っていない、と疑念を表明した。
「安保戦略は47ページに及ぶが、ロシアや中国を扱ったのは4ページだけだ」、ハドソン研究所の国家安全保障・防衛部門のルーク・コフィー上級研究員は、「アラブニュース」に発表した評論で次のように指摘した。
「これら(ロシア・中国から)の脅威に対応する米軍の役割に割かれたのは1ページのみだ」とコフィー氏は訴え、さらに「この文書の多くは、気候変動や『社会正義』など、左派の連中が好みそうな政治テーマに宛てられている」と注意している。
コフィー氏はさらに次のように指摘した、「国家安全保障戦略が大統領任期の今頃になって発表されたのでは、米国外交の実際のロードマップとして機能することはないだろう。それには遅すぎる。」
バイデン大統領に近い顧問らは、そうした見方に同調しない。国家安全保障担当のジェイク・サリバン顧問は十月の時点で声を挙げ、アメリカが現実の世界で広範かつ流動的な脅威や課題に対処しているのだから、「国家安保戦略は優先事項を明示していない、と批判されるのは仕方がない」と弁明した。
「世界では実に様々なことが起きていて、我々はその全てに対処しなければならない。一度に複数のボールに目を光らせなければならない」、サリバン氏はそう釈明しつつ、北朝鮮とイランの脅威を強調した上で、中国との競合は米政権にとっての「核心的な優先課題だ」と特定した。
「北朝鮮は前に進むのを止めようとしない。イランも依然として核計画を進め、米国民に危害を加える策動を続けている。テロリストの脅威は今まで以上、地理的に拡散している。世界は穏やかでないのだ」。そしてサリバン顧問は「中華人民共和国が米国にとって宿命的な地政学上の課題になっている」として、「中国との競争はインド太平洋地域で最も顕著だが、同時にますますグローバルなものになっている」と付け加えた。
サリバン顧問はさらに、政府の戦略が三点のファンダメンタルズを軸にしていると付け加えた。「我々の強さの基盤を国内に投資する。我々の努力を同盟国や友好国のネットワークと連携させる。そして我々の国益、および志を同じくする国々の利益を擁護し、前進させる責任を持ちつつ競争していく」ことだと説明した。