次世代の過激武装集団が2023年にカムバックする:ペンタゴンが警告
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Thursday, January 5, 2023
懸念されていた「イスラム国」復活が今年起きるかもしれない。軍や国家安保の関係者の間では、「ISIS」の名で知られた同組織が、テロの主体勢力として世界の安定秩序を揺さぶる脅威に再登場する条件が、中東とアフリカで醸し出されているという。
ISISは一時期、イラクとシリアの広大な土地を「カリフ国」として支配した。米国主導の対テロ軍事作戦によって敗走したが、その再現とはどういうわけか。
専門家の説明によれば、米国は昨年シリアで実行した多くの襲撃作戦で、ISISの最高幹部たちを殺害したので、それに対する報復キャンペーンを米国および同盟国に狙うのは間違いないという。
現在のISISに10年前の勢力はないが、今でも数千人規模の戦闘員が組織され、依然として深刻なテロ攻撃を完遂する能力がある。米国の識者の中には、米国と同盟国がISIS再現の脅威について「戦略的無視」をしていると忠告してきた。
例えば過去1週間にISISは、エジプトのイスマイリア市で4人を殺害したことを認め、アフガニスタンの首都カブール付近の爆撃で数人が死亡・負傷した事件について、同国政府はISISが犯行声明をしたと主張した。カブール爆撃事件は、タリバンが同国の支配権を奪還して以来、ISISと関連グループが起こしてきた一連の攻撃の最新のものだ。
それらの中で一番よく知られているのは2021年8月、バイデン政権が混乱状態で米軍を撤退させていた際に、カブール空港でISISが起こした自爆テロで、米海兵隊員13人が殺害された。
同事件と、その後の中東・アフリカで起きた攻撃は、ISISによる差し迫った危険性を示した。しかし国防総省は、米国と同盟諸国はもっと深刻かつ長期的な問題と取り組まなければならない、と述べてきた。
2010年代の後半、ISISからイラクとシリアの領土を奪還して以来、米国と、現場のパートナーだったイラク治安部隊と、クルド人主導のシリア民主軍は、数万人ものISIS戦闘員を拘束した。彼らは現在、両国の捕虜収容所に拘留され、今後については不明で、現場の安全確保にも疑問が募っている。
シリア当局者に言わせると、同国で10年におよんだ内戦で発生した避難民が数千人規模で住んでいるアルホール・キャンプの状況悪化により、同施設は潜在的なテロ増殖地に変わってしまったという。
「イラクとシリアには、文字通り『ISIS軍』が拘留されている」、米国中央軍の司令官マイケル・クリラ将軍は、先週出した声明の中で指摘している。同声明はイラクとシリアでISISを壊滅させるため米国主導で進めてきた作戦を詳述した「中央軍(CENTCOM)報告書」の一部だ。
「今現在、拘束されているISIS幹部・戦闘員は、シリア各地の拘留施設に1万人以上、イラクには2万人以上がいる」、クリラ将軍は言明した。
「結局はISIS次世代が潜在しているようなものだ」、同将軍は指摘した。「危険に晒されるのはアルホール・キャンプに住む25,000人以上の子供たちで、彼らはISIS過激路線の主な標的なのだ。彼らをそうした状況から抜け出させるために国際社会は共同して、それぞれの本国や出身地域に送還したり、キャンプの環境を改善するために協力するべきだ。」
シリアのアルホール・キャンプと、イラクのISIS拘置所は、米国と同盟国にとって短期および長期の課題を投げかけている。差し迫った懸念は、拘置所内での蜂起だ。2022年1月にシリアのアル・ハサカ収容所の蜂起ではISIS戦闘員400人以上と、シリア軍の兵員ら100人以上が死亡した。
だから、この地域全体で大規模な蜂起と刑務所からの脱獄が発生すば、数千人もの訓練を受けたISIS戦闘員を直ちに戦いの場に戻すことになろう。
終わりなき闘い
ISISを粉砕するための米国主導の激闘を受けて、トランプ政権は2019年にISISは「領土的には敗北した」と宣言した。国防総省は、同グループは未だに戦闘員が残っていて、小規模作戦を実行できると認知していたが、彼らがイラクとシリアで支配していた領土を事実上すべて失った。
こうしてISISは新聞見出しから姿を消したが、同グループと米国の戦争は決して終わっていなかった。2022年だけでも米国とその同盟国は対ISIS作戦行動を、シリアでは120回以上、イラクでは191回も実施した、と国防総省は報告した。
米国中央軍(CENTCOM)公表の数字によると、これら作戦によってISIS戦闘員の約700人が死亡し、374人が拘留された。作戦は空からの攻撃と、地上軍による襲撃が含まれていた。米当局者はこうした作戦行動を継続すると主張している。
2022年に殺害されたISIS要員の中には、最高指導者2人が含まれていた。昨年2月にシリア国内の米特殊部隊は大胆な襲撃を展開し、ISISの指導者アブ・イブラヒム・アル・ハシミ・アル・クレイシを殺害した。同10月には、その後任候補だったアブ・アル・ハッサン・アル・ハシミ・アル・クレイシが、シリアの反乱軍との衝突のさ中に死亡した。
これら有力幹部の死はISIS再建を遅らせたが、アナリストによるとISISは代償を狙っていると言う。
「お定まりのごとく、世界を舞台のISISによる報復キャンペーンは不可避だ。それが如何に実行されるかを見れば、聖戦主義の連中が一番強力なのはどこかが分かるはずだ」、中東研究所のテロ・過激主義対策プログラムのディレクター・チャールズ・リスター上級研究員は、先月発表した分析に書いた。
「海外のISIS支部から集まっている忠誠の誓約書を見れば、アフリカ、特に北アフリカ・サヘル地域でISISの存在感を示している」(リスター研究員)。
サヘル全域でのISISの存在は、マリ、ニジェール、チャド、スーダンを含んでおり、打撃を受けながら再編成できる同組織の強靭さを示す最も明白な例だろう。
しかしISISの影響力はサヘル地域を越えて広がっている。
アナリストによると、ISISがモザンビークのカボデルガド州に盤石の足場を得ていて、そこからISIS戦闘員がアフリカ大陸の沿岸を海路として、武器、装備、その他の資材を輸送できるようになると警告している。識者の中には、ISISの反乱が山火事のように広がる前に、米軍は戦場で積極的な役割を果たすべきだと主張している。アフリカ各国の政府と治安部隊は、ISIS拡大を封じ込める設備が整っていないからだ。
「モザンビーク政府は…軍事的にも行政サービスの面でも空白を埋められなかった。」、元国防総省の高官で、現在は「アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート」のマイケル・ルービン上級研究員は、9月に公表した詳細分析に書いている。
「米国と国際社会が空白を埋める財政その他の計画を実施しない場合、ISISはすぐ回復するだろう」、ルービン研究員は軍事・安保関連のウェブサイト「19FortyFive」に掲載した分析で、さらに次のように語った。
「時間がどんどん失われている。戦略的無視が時代の流れのように見える。しかし究極的に米国その他の国々が、再登場したイスラム国に向き合わざるを得なくなるだろう」。「積極的に対応することは、反応しているだけより安くついて効果がある。問題は世界の他の国々が、然るべき政策の選択をしてくれるかどうかだ。」